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黄昏のガンダルヴァ  作者: 猫弾正
第3章 Z_275年 牛を買い付ける話

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03_60M 善き市民兵

 街道を見下ろす高所に陣地を設営し、その陣営を挟んで街道とは裏手側に出入り口を設けた。柵や逆茂木、土嚢に大盾、盛り土、落とし穴と、時代はまちまちだが、簡素かつ効果的な防護を即応で陣営に展開させる。鉄条網や地雷、塹壕、見張り塔、堡塁構築に大規模土塁などは予算や時間、資材も足りずに断念せざるを得ないが、遊牧民の敗残兵相手であれば、高所陣地を守るには充分とキャシディは判断する。


 現状、時間はポレシャ軍の味方のようだ。陣地は時間と共に増強され、また、双子の丘の戦いの迅速な勝利の一報は、周辺の集落から、街道を通じて一帯の旅籠や農村にまで駆け回ったようで、近隣の民間勢力――武装農民衆や廃墟生活者の代表、浮浪者ホーボーの頭目に至るまでもが態々、ポレシャ市民軍の本営にまで赴いてきては参戦や物資供用、労力の提供など、なにかしらの協力を申し出てくれた。どれもこれもが有難い。しかし、やはり遊牧民は定住民とは揉め事が多く、浮浪傭兵は基本的にどこの町でも忌み嫌われる身とみえる。


 有力者からの挨拶は、副保安官や民兵隊の下士官らに対応を任せつつ、キャシディ・エヴァンス保安官は、手に入った物資と労力を効率よく、かつ迅速に陣地と周辺の強化に用いていたが、陣借りしようと馳せ参じてきた浮浪傭兵や無宿人ノークォーターの類には頭を悩ませた。言わば、【ムーテ】の兵団に雇われた傭兵どもと同種の無頼どもであるから「顔見知りを助けるつもりではないか?」と冷淡に問いかけてみれば、とんでもないと首を横に振るう。


 到底、信用して本陣の防衛に組み込める兵力ではないが、かと言って放置するのも危ういと思える武装集団であるから、「それなら……」と妥協案で金と食料を後払いで約束し、街道の西部丘陵地帯側を守る散兵線へと加えておいた。


 【ムーテ】の兵団がポレシャ勢による高所から射線を潜り抜け、さらには農民兵と土嚢の防衛線を抜けたとしても、無頼の傭兵どもの散兵が立ちはだかることとなる。かなりの後方だが、背後にはさらにポレシャ勢と近隣馬借や牧者、牧童らの友軍騎兵隊を遊弋させており、最終防衛ラインとして突破してきた者たちを狩りたてる。


 無頼どもを前衛に配置した挙句がタリウスと合流されても厄介と想定し、農民兵と騎兵で挟み撃ちできる上、本陣からの射撃も届く場所に配置した。悪辣かもしれないが最悪、浮浪傭兵どもに裏切られようとも、損害を受けるのはまず外様の農民兵団であり、サボタージュされようが、裏切られても、騎兵で対応できる位置関係に留めておいた。


 幸いと言うべきか、自由都市方面に配置した騎兵斥候からも、一時間ごとに交替させつつも、異常なしの報告が届いている。実は今回、一番に神経を尖らせたのがタリウスが自由都市に使嗾されてるのではないかと言う疑念であって、公使が拘束されてなければいいと怯えていたが、狩人や行商、旅人に扮した健脚の密偵たちが確認してポレシャ市に戻ってくるのはどうしても48時間後以降となる。


 さて打てる手は全部、打ったところで、街道の彼方から、残存の遊牧民――【ムーテ】タリウスの兵団が姿を見せるも丘に陣取ったポレシャ勢が陣容に怯んだか。立ち止って暫しの時を浪費してくれた。立ち往生してくれるなら、好きなだけ立ち往生してくれて構わない、とキャシディは肩を竦めつつ、懐中時計を開き、地図に矢印を書き込んだ。【ムーテ】の兵団、そのすぐ背後には武装農民隊が迫りつつあるはずだ。


 やがて覚悟を決めたのか。逡巡していたと思しき【ムーテ】の兵団が前進を開始し、そして藁のように死んでいった。まずは、高所からの一方的な射撃で多少の打撃を与えつつ、牽制し、農民兵らの防衛ラインで足止め。

 それを突破しても――おや、浮浪傭兵どもが案外、真面目に奮戦している。此方の傭兵を突破しても、騎兵に追い立てられて捕捉される。【ムーテ】の兵団にとって、一キロにも満たない、しかし、越えられない死の街道だった。

 「これは、もしかして、全滅させちゃうかも」キャシディ・エヴァンスは、抑えきれずにほくそ笑んだ。領域国家の一線級であっても、同等の戦力で百人からの兵団を殲滅できる将校など、そう多くはおるまい。


 周囲で、保安官補やポレシャ民兵隊の下士官たちが感嘆の呻きを洩らす中、ただ一人。護送犯ヘレンは、顔見知りの遊牧民たちが銃弾に晒され、血の海に沈んでいくのを蒼白の強張った表情で見つめていた。ヘレンの頬を流れた涙が地面へと零れ落ちる。膝から崩れ落ちる囚人に気づいた親切なキャメロン保安官補は、歩み寄って慰めようと声を掛けたが、軽い手錠を付けられていた筈のヘレンは、よろめきかかりながら、保安官補の胸へと倒れ込んだ。

 キャシディ・エヴァンスには、周囲に注意を払うだけの神経の余裕があったので、些か、わざとらしい動きだとは怪しんだが、ヘレンの手が、保安官補のホルスターからリボルバーを引き抜くや、持ち主の米神に押し付けてくるとは予想できず、人質に取られた間抜けでお人好しなキャメロンと囚人を眺めながら苦々しい溜息を洩らした。




 ※※※※




 突破口を開こうと試みて、突撃を繰り返す【ムーテ】の兵団であったが、送り込んだ兵士たちは隘路の中、血と泥濘にのたうち回っていた。丘を迂回しようにも防衛線が構築されており、さらには武装農民の伏兵や待ち伏せ、ガラクタに土嚢、盛り土と柵を積み上げての街道封鎖までが行われている。勿論、【ムーテ】の兵団には、農民兵を突破する程度の戦力は充分に残されているが、突破した先になにがあるか。騎馬斥候を走らせねば分からない上、再合流も難しい状況に陥りつつあった。最悪、突破した先にまた封鎖線が展開されており、さらには動き出したポレシャ軍との間で挟撃を受ける恐れもあったからだ。


 ポレシャ軍騎兵が、こちらの斥候を遮断している。そう気づかされるも、既に銃弾が残り少なく、数も減らされた騎馬隊に打てる手がなく、巧みに連携しての武装農民たちの街道封鎖といい、空間の距離と広がりを用いて徹底した情報の遮断と時間の浪費の選択肢を強要してくる嫌らしい戦術は、間違いなくキャシディ・エヴァンスの手によるものに違いないと【ムーテ】タリウスは決めつけながら舌打ちしていた。情報と時間への攻撃からキャシディと気づくタリウスも、おそらくは非凡な指揮官なのだろう。少なくとも他の人間――【族長ニウヴ】ルキウスには敵の戦術も、指揮官も、見当もつかない。


 土嚢や丸太を積んだ荷車――自由都市から持ち込んだ代物は、双子の丘の戦場に幾つかを遺棄したが、途中で徴発した代物を盾にして、少しずつ進むもポレシャ軍の攻撃は見事に統制が取れており、反撃しようにも防御が堅くて揺るぎもしない。ポレシャ市民軍の火点は多段、かつ複層的に構築されており、反撃しようにも他の味方からの援護を受けやすい場所に設置されている。市民兵一人、二人を倒すのに、五人以上を死傷させる必要がある。無論、いざとなれば、タリウスは出血を躊躇う指揮官ではないが、それで得られるのは精々が一時的な火力の減退に、時間と弾薬の浪費に過ぎない。


「……此の侭では全滅しますぜ」韋駄天ハリスの呻くような言葉に、【ムーテ】タリウスは額に噴きだした汗を拭きながら地図を食い入るように見つめ、地形を凝視しているも、有効な手立ては思い浮かばないと見えた。

 馬上のルキウスにも打つ手は思いつかない。

 隘路に誘い込まれれば、騎兵にも攪乱する力は失せる為、精々が本隊後背の平野を動き回っての牽制射撃に終始しているが、いかに駿馬とは言え、生き物である以上は限界がある。昨晩からの連戦と移動に何時までも動き続けるほどの持久力は持ちえない。

(……此処まで、か)女の顔を思い浮かべながら、族長ニウヴルキウスが覚悟を決めるも突然、唐突に敵の火力が衰え、統制が乱れた。

 驚き、戸惑いながら、ポレシャ勢本陣を眺めてみれば、遊牧民の視力がヘレンの姿をそこに捕らえていた。

「……レニ!」ルキウスが小さく名を叫んだ恋人は、拳銃を構えて、誰かテンガロンハットの女――或いは、キャシディ・エヴァンス保安官その人だろうか――へと向けて構えていた。なにかを喋っている。そして、相手の女が瞬時に銃を抜き打ちしてヘレンを撃ち抜いた。


 【族長ニウヴ】ルキウスは、愛馬の首を撫でた。

「すまんな、一緒に死んでくれ」囁くと、馬が短く嘶いた。ルキウスは、懐から小さな金属ケースを取り出し、蓋を開いた。小さなアンプルをセットして注射針を首に突き刺し、投げ捨てると【ムーテ】タリウスと部下たちに向き直った。

「今から、キャシディ・エヴァンスを討ち取る。少なくとも敵の本営を攪乱して時間を稼ぐ。その間にお前たちは脱出しろ」タリウスと残った部下たちの顔を見渡し、そう告げた。

 【ムーテ】タリウスが吐き捨てるように「なにを言っている?正気か。たった一人でその様な真似など、超人でもなければ、命を捨てようが……」言いかけて、ルキウスの相貌を目の当たりにし、一瞬、見間違えたか。

「……ティトゥス叔父上?」ルキウスの亡き父の名を呟いてから「いや、ルキウス。お主、その瞳」言い直したタリウスに対し「さらばだ」と告げて、馬首を返して、拍車を入れる。背後では我を取り戻した【ムーテ】タリウスが兵を呼び集める声が響いている。




 ※※※※




「馬鹿な真似は辞めろ、こんなことをしたら……」目の前では、人質になったキャメロン保安官補が喚いていた。

「……黙って」囚人ヘレンは据わった声で、銃口をキャメロンの即答に強く押し付けている。周囲の民兵や保安官補たちは、ライフルを向けているが発砲できない。ヘレンがキャメロンに密着しているからもあるし、手にした32口径パーカッション・リボルバーは全弾が装弾済み。最悪、複数名が撃たれかねない。

 油断なくヘレンを見据えながらも「……キャメロン君さぁ」呆れ半分に言う。

「すまん、姉さん」呻いてる保安官補は、キャシディ・エヴァンスにとっては遠縁の従兄弟。

「キャメロン、なにやってるんだ」天幕周辺へ集まってきた保安官補や民兵たちとて、人質と互いに顔見知りなだけに迂闊に動くのは躊躇われた。



「軍隊を引かせて。保安官。皆を逃がしなさい」ヘレンの要求に保安官は眉を顰めた。

「とんでもない要求だな。そもそも、こんなことをしたら、生きて帰れないぞ」と脅かすが「……元より、そのつもり。皆が逃げたら、好きにすればいい」ヘレンは腹を決めたように言い切った。

 キャシディは、少し考えこんだ。

「ここで一人でも連中を殺すことが、町の住人たちの安全を担保するのだが……従兄弟には代えられないな」辺土の居留地で互いに親戚と助け合っている手前、簡単に見捨てる訳にもいかない。肩を竦めてから、ヘレンに頷きかけた。

「しかし、引き金に指を掛けたまま、頭に押し付けるのはやめてくれ。なにかの拍子に力が入ったら、其の儘ズドンだ」キャシディがやや呑気な口調で交渉する。

 頷いたヘレンが、僅かに銃の角度をキャメロンの側頭部から逸らした瞬間。キャシディは銃を引き抜き、発砲した。


 キャシディの愛銃は、コルトのショートバレル32口径・シングルアクション。照準は削ってあり、引き金は軽い。ホルスターは浅く斜めで、全てが早打ちの為に特化している。著名な20世紀のガンマン、ボブ・マンデンが当時の最高記録として抜き打ちで0.02秒をマークしているが、キャシディ・エヴァンスの抜き打ちは、0.17秒。

 遅いように見えて、しかし、十分に瞬時の領域に至っている。人質を取った犯罪者や近距離の脅威に対しては圧倒的な優位をもたらす反応速度で、殆んどの人間には反応すらも叶わない。銃弾に掌を撃ち抜かれたヘレンの手から、拳銃が落下した。それを地面に落ちる前に、空中で掴み取ると、キャメロン保安官補は今度こそ、油断せずにヘレンに相対した。

「その反射神経があって、どうして人質になるの?」キャシディの質問にきまり悪そうに頭を掻いた。「ごめんよ。姉さん」


「こいつめ!」駆け寄ってきた民兵や味方の常備傭兵がライフルの銃床を棒立ちの囚人ヘレンに叩きつけ、地面へと引き倒した。

「やり過ぎないように。裁判に掛けるのだから……」告げるキャシディだが、陣地の側面から響いてくる発砲音が急に増えた。

 怪訝に思い、視点を転じると、陣地のある高台の側面を騎兵。たった一騎の騎兵が駆け抜けている。射撃はそれを追いかけているが、追いつけない。

「一騎駆け?無謀な……」呟いたキャシディの視線。騎兵の赤い瞳と視線があった気がし、何故か戦慄を覚えて、思わず後退りする。傍らでヘレンが小さく「……若さま」と呟きを洩らす。


 しかし、ポレシャ軍は、キャシディだけが有能な指揮官ではない。側面を守る小隊の銃口が騎兵に向けられ、十数発のライフルが統制された一斉射撃を行うと、白煙に包まれた後、馬からは乗り手の姿が消えていた。

「落馬したぞ!」歓声を上げる歩兵だが、一人が地上に視線を送って違和感に気づいた。

「待て、落ちた奴の姿が見当たらない!」

 馬の腹の反対側に体重移動し、手と足だけで乗りこなしながら、気づかれたと見るや、騎手は再び、馬の背へと戻ってみせる。

「次弾装填!急げ!」民兵隊軍曹が号令するも、右手――街道側から数頭の馬と二頭立ての馬車が、続いて駆け込んできた。

「伏せろ!」追撃よりも、遮蔽を優先して号令する下士官。馬車の荷台に乗ってるランツクネヒト共が、陣地向けて一斉にマスケット銃を発砲してきた。

 牽制射撃に歯噛みしながら、下士官が反撃しようとするも、さらに新しい二丁目の装填積みマスケットを拾い上げ、発砲してきた。



――――



 完全に反撃のタイミングを見失った陣地側面の火点を背後に見送りながら、馬上のヒルダがルキウスの隣に並び、話しかけた。

「女を取り戻すのだろう?付き合ってやる」

「生きては帰れんぞ」ルキウスの言は短い。

「どの道、長くは持たん」言いながらヒルダが革手袋を噛んで外して見せた。刻まれた歯形と、浮かび上がる漆黒の血管に頷いたルキウスが鋭い視点を高台の頂きの天幕へと向ける。



――――



「敵騎兵が裏手から陣地に乗り込んできました!ランツクネヒトたちが付き従ってます」

「数は僅か!」報告にマクロード副保安官が「英雄気取りか。馬鹿なやつらだ。すぐに片付くだろう」鼻で笑う。

「……どうかな」呟いたキャシディは、ヘレンを一瞥してから、念の為に騎兵を呼び戻し、街道沿いの火点に配した歩兵を一部、司令部前に集結させるように命じた。




 ※※※※




 ルキウスとヒルダの手勢は、馬防柵を越えてポレシャ勢陣地へと乗り込んだ。

 ポレシャ勢は、一人一人が手強かった。白兵においては、部族兵や浮浪傭兵らに劣るだろうが、裏口の陣地でさえ手抜きせずに丁寧に作られ、味方同士で連携できるように土嚢や盛り土、大盾の影に遮蔽を取って、巧みに精密射撃を行ってくる。


 士気も高く、崩れない。仲間が一人殺されても、恐慌を起こさずに、淡々と次弾を撃ち込んでくる。恐れを知らず、一人一人が成すべき事を知って、忠実に行い、此方に少しでも出血と疲労を強いてくる。 灌木や岩、窪みや土嚢に遮蔽を取りながら、撃てば半歩引き、薬包を摘まんで次弾を込める。その間、倒れた仲間は衛生兵が運び出す。機械のように精密に、虫のように怯まず戦う。長年の善政が士気の高さを担保している。普段はよき父、良き夫であろう、善き市民兵の極致だった。


 それでも切り裂いた。最後の馬防柵を越えたところで力尽きたように崩れた愛馬から飛翔すると、発砲してきた市民兵たちへとサーベルを煌めかせて躍りかかる。

 「三人!……四人!」至近に突き出された銃剣、機敏な手斧、煌めく槍、向けられた銃口から放たれた弾頭さえ躱してみせる。空気の流れや砂塵の感覚でさえ、今のルキウスには微細に感じられる。跳んでくる弾頭さえも、軌跡が目に見える。流石に至近距離の発砲までは躱せないだろうが、向けられる銃口の向きを読み取って、射線から外れることで対処していた。


 十数名のランツクネヒト、それに幾人かの浮浪傭兵らが大剣を振りかざし、或いは小型の剣を揃えて、突破口から乗り込んでくる。

「此の侭じゃ、負け戦だからね」「乾坤一擲ィ!」「それに死に場所としては悪くない」口々に言いながら、市民兵たち相手に優勢に渡り合っているが、ポレシャ勢の反応がかなり素早い。殆んど瞬時に前方の火力が強化され、程なく、武装農民衆が背後から殺到してくるも、これで随分とタリウス側は手薄になった筈だ。


 銃弾を撃ち尽くし、銃を捨てて白兵にもつれ込めば、仲間と揉み合う【ムーテ】の兵士たちにポレシャ勢も発砲を躊躇ってくる。

 此の侭、押し込めるかと思いきや、馬蹄の地鳴り。飛んできたフレイルが近くにいたランツクネヒトの頭蓋を粉砕する音が響いた。

我が名は(マイ・ネーム・イズ)クリスティーネ・モーデュソン!ポレシャ随一の騎士なり!」鎧武者。フルプレートを纏った騎士が、変異した有角変異馬の上に血走った目で咆哮している。だが、なんとも時代錯誤に見えて、鎧はセラミック装甲に防弾繊維を編み込んだ工匠の手による、頭のおかしい高価な工芸品おもちゃ。痛覚を鈍らせる戦闘薬も決めているなら、生中な銃弾でも倒せまい。


「雑兵ばかりで退屈していたところ!さあ、名を名乗れ!」手にした剣を血や肉片に塗れて叫んでいる騎士は背丈が二メートル近くある。背後からは、古のヴァイキングや十字軍兵士を思わせる似たような甲冑や胸甲、鎖かたびらを着込んだ男女に槍や斧、剣を手にした連中がぞろぞろと湧いて出てくる。白兵専門の浮浪傭兵や放浪騎士の類。一見、馬鹿な武装に見えて、単発銃の多い辺土の合戦には、使いようによっては恐ろしい威力を発揮しうる兵種でもある。なんのことはない。緒戦に勝ったにも拘らず、ポレシャは次戦に備えて、白兵戦に備えた人員も雇い入れていたようだ。

「ルキウス。ただのルキウス」言いながら、【族長ニウヴ】ルキウスは、サーベルを水平に構え直した。




 ―――――――――――




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