第13章-39 奥方の処罰
ライモンはアイネズの言葉を考えた。だが、今のライモンではわからないことが多すぎる。ライモンが首を振るのを見て、アイネズは口元に笑みをはいた。
「今はそれでよいかもしれません。王都に参られれば否応もなく学ばなくてはいけませんからね」
ライモンは思わず頭をかいた。前途多難だな、と思う。再び首を振ったとき、モエギの姿が目に入った。
モエギがライモンを傷つけるものがいたなら許さない、と言ったが、では逆はどうだろうか。もし、モエギを傷つけるものがいたならば? ライモンもまた許さないだろう。身のうちに沸く、ふつふつとした怒りに気づいて、ライモンはモエギの気持ちが少しだけわかるような気がした。
そして、前途多難に思えるこの先も、ずっとモエギはいてくれる。誰が来て、誰が立ち去ろうとも、彼だけは必ずそばにいてくれる。それはもう、必然のこととしてライモンの中にあった。
モエギを見つめるライモンの表情を見て、アイネズはかすかに微笑んだ。そこにわずかに満足げなものを感じ取ったのか、シラフジが誰にも知られないように小さく笑う。
「ああ、それと」
アイネズは何か思い出したように、突然話題を変えた。誰もが彼を見やる。
「義姉ですが、彼女はふたりとは離れた修道院に送られることになりました」
アイネズは感情を交えずに、淡々と報告した。ライモンはゆっくりと彼に向き直る。
「えっと、あの奥方さまが、ですか」
「はい」
「なんで」
「ライモンさまを襲わせたのは、義姉でしたので、処罰は受けねばなりません。本来ならば、未遂であっても次期さま暗殺を行おうとしたのです。これもまた死罪であってもおかしくありませんが、未遂であった故罪一等減じられました」
そうして、アイネズは大きくため息をついた。どこか疲れたようなため息だった。
「実は、義姉については実家に帰して、そこで監視してもらう案も出ていたのですが、そこから断られましてね。苦肉の案ですよ」
「断られた? なんで?」
「義姉は金遣いが荒くてですね、実家にたびたび無心していたようです。実家のほうもそう裕福ではありませんのでね、どうにも困り果てていたらしく、この上戻られては、ということのようです」
「無心、てなに?」
ライモンはこっそりモエギに訊く。だが、それはアイネズにも聞こえていたようで、彼は苦笑して答えた。
「金を送るようにと、何度も言っていたようです。ここ数年はかなり頻繁だったようで、応じていなかったようですが、しつこく手紙が届いたりして手に余っていたようです。私も彼女の金遣いの荒さは聞いておりましたが、これほどまでとは思いもしませんでした」
アイネズはさらに大きく息を吐いた。




