第13章-40 修道院
「陛下に領主を命じられてから、領地の経営状態をずっと確認していたのですが、かなりひどいものでした。かなりの額が彼女の浪費に使われておりましてね。兄も止めることができなかったようです。まあ、兄も見栄体裁が強いほうですから、羽振り良く見せたかったのでしょう。ですが、それでは領地は成り立ちません。そのようなわけで、修道院送りとなりました」
「修道院って、どんなところですか」
修道院送りになったと聞いても、ライモンにはピンとこない。話を聞いていると、本当に世間というか、もの知らずだというのがわかる。
「今回彼女が送られるのは、辺境にある大神の修道院です。清貧を旨として、女性のみで暮らしております。貴族出身のものがほとんどですが、身分の差なく、同じ修道服を着て、同じものを食べ、神に祈り、労働しなければなりません。神に仕える身となるわけですから、今までと同じ生活はできません。おそらく、彼女にとっては死よりも辛い罰かもしれませんね」
「若いころの奥方さまを存じておりますが」
アイネズの言葉に、ロウゼンがゆっくりと口を開いた。
「嫁いでこられたころから、派手なものがお好きで、高価なものばかりを買い求めておられました。見かねて、私も幾度かお館さまに苦言を呈しましたが、お聞き入れなさいませんでした。奥方さまはご自分の意のままにならないと騒ぎ立て、お館さまにつらく当たられておられましたので、お館さまも奥方さまの思うようにさせておられました故、いつかこのようなことになるのではないかと危惧しておりましが」
今度はロウゼンが深く息を落とした。
「ですが、私もすでに領主館を辞した身、関係ないと思おうとしましたが、結局このようなことになってしまいましたか」
領主のもとで騎士たちをまとめていたロウゼンではあったが、本来、主家の内情について物申す立場ではなかった。いや、思っていても口に出せる立場ではない。苦言を呈するならば、家令の立場でもあった侍従頭のヒイラギの役目だろう。
だが、それでも言わずにはいられなかったのだろう。それがゆえに、煙たがれようと。
だが、ライモンにはそのような事情は分からなかった。
それを聞いて、アイネズが苦笑する。
「私も王都でうわさは聞いていたのです。それで書状で何度か兄にやめさせるように申していたのですが、聞き入れてもらえるはずもなく。おかげで私は領地の立て直しに苦労させられそうです」
今度は情けなさそうに、アイネズが吐息をついた。その肩を落としたようすに、ライモンは思わず苦笑せざるを得なかった。




