第13章-38 守護精とは
「ともかく」
再びひとつ咳ばらして、アイネズは続けた。
「あれのことは、ライモンさまはお気になさることはございません。自業自得というものです。あの時、ほんの一瞬でも自制できていれば、このようなことになっておりません」
「あの時……」
アイネズの言葉を受けて、ぽつりとモエギがつぶやいた。小さな声だったが、皆の耳に届いた。ライモンは隣にいる彼を振り返った。
「あの時、あなたが毛一筋ほどの怪我をしていたならば、私は彼を許すつもりはありませんでした。主を害しようとするものを、どうして許さねばならぬのでしょう」
「モエギ……」
モエギの言葉には、抑えきれない怒りが感じられた。モエギがライモンの身を案じてくれるのはうれしいのだが。だが、少し大げさなような気がした。
「モエギ、少し怖いよ」
ライモンは思ったまま、それを口にしていた。モエギがはっとしたように彼を見上げる。それから苦笑するかのように、口元をゆがめた。
「仕方ありません。私たち守護精にとって、主は唯一無二です。代わりはありません。その主を、私から無理やり奪おうとするものを許してはおけません。もっとも」
モエギは大きく息を吐いた。落ち着こうとするかのように、胸に手を当てて、何度か息を繰り返す。
「それは私だけではありません。あのものの剣があなたに届く前に、私が守るつもりではありましたが、おそらくそれよりも前に当代さまが彼を切り刻んでいたことでしょう。届かなくて、幸いというべきでしょうね。当代さまは私よりも大きな波動を扱えますゆえ、彼は死んだほうがましだと思っていたことでしょう」
「当代さまも、大概だな……」
ライモンはこぼすように言った。ライモン自身は騒ぎの渦中にいたため、気付かなかったが、おそらくあの場はモエギと、そしてアリアケの波動で支配されていたのだろう。
「ええ」
と、アイネズがモエギに同調してうなずいた。彼は常日頃から当代のそばにいるからか、アリアケの波動が感じ取れたのだろう。
「守護精さまの、主に対する想いは尋常ならざるものです。それを安易に傷つけようとしたあれが悪い。それに、一応、改心すれば許されるのです。それを拒むのであれば、それはあれ自身が定めた自分の運命です。ライモンさまが口をさしはさむ余地はありません」
「そういうものなのかな」
「そういうものです」
アイネズはきっばりと言い切った。
「この先も似たようなことは起きるでしょう。今回は陛下が裁定を下されましたが、いつかはあなたさま自信が下さなければならなくなります。情は必要ですが、それにとらわれてはなりません。罪は罪、それに伴い処罰は多かれ少なかれ、されなくてはなりません。お分かりですか」




