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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-35 失態

 「あなたですわよ、ライモンさま」


 シラフジの声が、ライモンに応えた。皆の視線が一斉に彼女に向かう。ライモンは目をしばたたいて彼女を見やった。


 「俺?」


 「ええ、次期さまであるあなたさまですわ」


 シラフジはしたり顔でうなずく。だが、ライモンは腑に落ちないような表情をしている。


 「あれは、クロトビは取り返しのつかない失態を犯しました」


 アイネズがため息をついて、つぶやくように言った。


 「次期さまが誰であれ、あのような態度を取ってはならなかった。たとえ納得いかずとも、です。我らがあれほど待ち望んだ次代さまが現れた、ということに他ならないのですから。そのことは、あれも重々知っているはずです。学び舎を出て、成人して領主の世子であるならば、あのような態度を取ってはならなかったのです」


 アイネズは再びため息をつき、あきらめにも似た笑みを見せた。


 「あまつさえ、あれは次期さまに向かって剣を抜き放とうとしました。次期さまが失われれば、次代さまもまた失われる。そのことを知らぬはずはない。はずはないのに、そのような行為に及ぼうとした。それは大勢のものが目撃した、紛れもない事実。それをなかったことにはできません。言い訳はできません。それに、あの場にいたものたちも問題でしてね」


 アイネズの苦笑はずっと顔に張り付いたままだった。ライモンはなんだか気の毒に思えた。


 「あの場にいた人たち? 確か、大勢貴族の人がいたけれど」


 ライモンは思い返しながら尋ねた。


 「はい。彼らは陛下の行幸についてきた者たちですが、彼らの旅費は自費となります。ゆえに、財政的に余裕がないと同行できません。つまり、彼らはこの国でも有数の貴族たちになります」


 へえ、とライモンはうなずいた。ということは、アイネズも王都では裕福なのだろうか。


 ライモンの想いに気づいたのか、アイネズは困ったように笑んでライモンを見やった。


 「私は今回、宰相補佐という文官としてきておりましたから。それに、私の生まれ故郷が今回の道程に含まれていましたので、案内役も兼ねております。それゆえ、幾分は自費で出しておりますが、大半は国庫から出ておりますので。まあ、それなりに報酬はいただいておりますので、生活する分には不自由はありませんが」


 「そうなんだ」


 ライモンにはまだ、王宮の暮らしや貴族のことなどわからない。ゆえに、アイネズが言うことをそのまま受け取るしかなかった。シラフジが小さく笑いを堪えているのも、眼に入っていない。


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