第13章-36 変われない
「その有力な貴族の前で、あのような失態を犯したのです。処罰は必然、仮に反省して処罰を終えたとしても、二度と貴族のなかに立ち戻れはできないでしょう。そうするには、彼らが許しはしないでしょう。あれが貴族として生きるすべは、あの時に失われてしまったのです」
ふうっと大きく息をついて、アイネズは軽く手を広げてみせた。
「まあ、あれのことです。おそらく変わることはないでしょう。今の処遇が誰かのせいだと思っている限り。あなたさまのせいだったり、陛下のせいだったり、私のせいだったり。自分で選んで自分がなしたことであることを自覚し、責任が持てないのであれば、そこに反省や悔いはありませんから、変われません。生涯を労役の中で過ごすことになるでしょうね」
「つまり、クロトビは変わりたいと思っていないってことですか」
「そうとも言えますね」
アイネズは肩をすくめてみせた。
「変わりたい、と口で言っているだけでは、人は変われません。自分の行いを顧みて、どれだけの人に支えられてきたのか自覚して、自分の行いを反省して、変わろうと決意するからこそ、そこから変わる努力が始まるのです。クロトビは、その入り口にすら立ってはいませんから。誰かのせいにすることは簡単ですが、それは自分の人生を人の手にゆだねていると言っているも同然です。自分で選んで、自分でなしたことなのですから、その責任は取らねばなりませんね」
ライモンは黙り込んで、少しうつむいた。もし、あの時、領主館に行かなければ、クロトビはあのままだったのだろうか。
ライモンの想いに気づいたかのように、アイネズが口を開く。
「ライモンさまがお気に病むことはありませんよ。あれは自業自得です。自分の感情もぎょせないようであれば、領主になったところで、領地を運営していくことは不可能です。まあ、領民にとってはよかったのではないですか」
それからアイネズはちょっと困ったように、首を傾げた。心なしか、情けなさそうな表情をしている。
「とはいっても、代わりが私ですからね。領民が不安に思っても仕方ないかもしれませんね。やるべきことはやりますが」
「あ、いえ、アイネズさまが頼りないとか、そんなふうには……」
「街では噂になっているそうですよ」
苦笑めいた笑みを浮かべて、わたわたしているライモンにアイネズは言った。
「ここ数日、街の者たちと会いましてね。そのせいか、街の中では新しい領主は少し頼りなさそうだと」
「まあ、それはそれは」
くすくすと笑いながら、シラフジがつぶやく。ライモンは思わず彼女を見やった。つられるように、ほかのものも彼女を見つめた。




