表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

610/612

第13章-32 従兄妹

 扉が閉まると、アイネズがため息をついた。


 「さて」


 そう言って、アイネズは一堂に向き直った。


 「本題に入りましょうか」


 一気に緊張が走る。だが。


 「お待ちください、アイネズさま」


 片手を軽く上げて、シラフジが口をはさんだ。また一気に緊張がほぐれる。


 「お話の前に、先にアカネさまを座らせてくださいまし」


 片手でアカネの手を支えながら、シラフジがそう言うと、皆の視線がアカネに集まる。それに気付いて、アカネがかすかに頬を赤くする。大勢の人の視線にさらされることに、アカネは慣れていなかった。


 「これは、私としたことが」


 シラフジの指摘に、アイネズは慌ててアカネのもとに行く。ロウゼンが引き寄せてきた椅子に、アカネを座らせる。それを見やって満足げに微笑むと、シラフジは勝手にそばにあった椅子に腰かけた。


 「失礼しました、アカネ殿。先日倒れられたと聞き及んでおります。今は床を離れても大丈夫なのですか」


 「ええ」


 恥ずかし気に、アカネはうなずいた。従兄とはいっても、アイネズとほとんど会ったことがない。アイネズが長くこの地を離れていたことも相まって、初対面のようなものだ。


 「陛下にシラフジさまを呼んでいただきましたから。今はかなり落ち着きましたわ。よもや治療師の長に診ていただけるなど。光栄の至りですわ」


 そう言いながら、アカネはシラフジを見つめて微笑んだ。シラフジはまさかそんな言葉が聞けるとは思っていなかったのか、ふいと顔をそむける。いつもは自信満々な彼女だが、耳のあたりがほのかに赤いのは、気のせいだろうか。


 それからシラフジはコホンとひとつ咳払いして、いつもの余裕のある表情を取り戻した。


 「治療師の塔を統べるものとして、当然のことですわ。アカネさま。私もここの暮らしを楽しませていただいてますしね」


 軽く片目をつむって、シラフジは微笑んだ。一同は少し困ったような、呆れたような表情を浮かべて苦笑した。


 「お元気になられたのならばよかった。次期さまがいずれ、王都に行かれるときには、一緒に行かれるのでしょう。その時は、王都の我が家においでください。妻も喜びますでしょう」


 「奥様がいらっしゃるのですか」


 「ええ。子供たちもおります。私は学び舎を出た後は、こちらに戻らず、王宮勤めをしていますので。あちらで妻を娶りました。王都に屋敷も構えていますので、どうぞご遠慮なく、滞在なさってください」


 「ありがとうございます」


 アカネは笑顔でそう答えてから、少し困ったような笑みに変えた。


 「でも、まだ王都に行くか、ここに留まるか、迷っておりますの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ