第13章-32 従兄妹
扉が閉まると、アイネズがため息をついた。
「さて」
そう言って、アイネズは一堂に向き直った。
「本題に入りましょうか」
一気に緊張が走る。だが。
「お待ちください、アイネズさま」
片手を軽く上げて、シラフジが口をはさんだ。また一気に緊張がほぐれる。
「お話の前に、先にアカネさまを座らせてくださいまし」
片手でアカネの手を支えながら、シラフジがそう言うと、皆の視線がアカネに集まる。それに気付いて、アカネがかすかに頬を赤くする。大勢の人の視線にさらされることに、アカネは慣れていなかった。
「これは、私としたことが」
シラフジの指摘に、アイネズは慌ててアカネのもとに行く。ロウゼンが引き寄せてきた椅子に、アカネを座らせる。それを見やって満足げに微笑むと、シラフジは勝手にそばにあった椅子に腰かけた。
「失礼しました、アカネ殿。先日倒れられたと聞き及んでおります。今は床を離れても大丈夫なのですか」
「ええ」
恥ずかし気に、アカネはうなずいた。従兄とはいっても、アイネズとほとんど会ったことがない。アイネズが長くこの地を離れていたことも相まって、初対面のようなものだ。
「陛下にシラフジさまを呼んでいただきましたから。今はかなり落ち着きましたわ。よもや治療師の長に診ていただけるなど。光栄の至りですわ」
そう言いながら、アカネはシラフジを見つめて微笑んだ。シラフジはまさかそんな言葉が聞けるとは思っていなかったのか、ふいと顔をそむける。いつもは自信満々な彼女だが、耳のあたりがほのかに赤いのは、気のせいだろうか。
それからシラフジはコホンとひとつ咳払いして、いつもの余裕のある表情を取り戻した。
「治療師の塔を統べるものとして、当然のことですわ。アカネさま。私もここの暮らしを楽しませていただいてますしね」
軽く片目をつむって、シラフジは微笑んだ。一同は少し困ったような、呆れたような表情を浮かべて苦笑した。
「お元気になられたのならばよかった。次期さまがいずれ、王都に行かれるときには、一緒に行かれるのでしょう。その時は、王都の我が家においでください。妻も喜びますでしょう」
「奥様がいらっしゃるのですか」
「ええ。子供たちもおります。私は学び舎を出た後は、こちらに戻らず、王宮勤めをしていますので。あちらで妻を娶りました。王都に屋敷も構えていますので、どうぞご遠慮なく、滞在なさってください」
「ありがとうございます」
アカネは笑顔でそう答えてから、少し困ったような笑みに変えた。
「でも、まだ王都に行くか、ここに留まるか、迷っておりますの」




