第13章-31 親の心配
「あ……」
ハギノはなにも言えずにいた。夫の処遇の話を聞いたばかりで、自分のことまで考えが及ばないのだろう。
アイネズはじつと彼女を見ていたが、すぐに小さく吐息をついた。
それにアカネがハギノの横から彼女をかばうように前に出た。
「アイネズさま、キブシさん、いえ、ハギノさんもすぐには答えが出せないでしょう。少し考える時間を上げてください」
「アカネ殿」
アイネズも少し困っているかのようだった。再び吐息をついて、うなずいた。
「確かに。私に配慮が足りませんでした。ハギノ」
アカネからハギノに視線を移して、アイネズは言葉をかけた。ハギノはびくりとする。
「自分のことだ、よく考えなさい。アカガネのこともあるだろうからな」
ハギノはうなずいてから、思い切ったように顔を上げた。
「あの」
ライモンのほうに向きなおろうとしていたアイネズは、その声に再びハギノを見やった。
「お聞きしたいことがございます。よろしいでしょうか」
「ああ、なんだ」
アイネズの許可に、ハギノはつばを飲み込んで、少し身を乗り出した。
「夫や私のことはお話しいただきました。子等は、子等はどうなりますでしょうか」
切実な問いだった。手を胸の前で組み、必死な表情でアイネズを見つめる。
だが、アイネズはただ冷静なまなざしを彼女に向けただけだった。
「そなた同様、咎めはない。確か、息子はアカガネと同じ守護隊の見習い、娘はすでに嫁いでいたな。こたびは実行したもののみが罪を受ける。連座はない故、安心するがよい」
ほっとしたように、ハギノは吐息をついた。だが、アイネズの言葉にもかかわらず、まだ不安は晴れないようだった。
「子供たちのことは子供たちに任せなさい。すでに成人しているのだろう」
「成人していても……」
つぶやくように、そっとハギノは言った。その声音に、アイネズは彼女を見やる。
「子供は子供です。いくつになろうとも。心配するのが親というものでしょう」
そう言って、ハギノはゆっくりと顔を上げ、それからまっすぐにアイネズを見つめた。
アイネズは刹那軽く目を見開いて、それからふっと苦笑する。
「違いない」
その言葉に、ハギノは少し驚いたようだった。咎められると思っていたのだろう。だが、言わずにはいられなかったようだった。
「下がってよいぞ。話は終わりだ」
アイネズの言葉に、一瞬躊躇を見せたが、ハギノは深く一礼して踵を返した。不安を押し隠して、背筋をまっすぐに伸ばして母屋を出ていった。その背を皆は黙ったまま見送った。




