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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-30 アカガネの処分

 「はい」


 小さな震える声で、ハギノは答えた。どこか覚悟の決まったかのような声音だった。


 「アカガネはその守護隊長の職をはく奪、解任する。今後、領都カルディア出入りを禁じる」


 ハギノは黙ったまま、アイネズの言葉を聞いていた。少し青ざめているのがわかる。


 そのようすを見やって、アイネズは小さく息を吐きだした。


 「そなたも分かっていようが、次期さまのお命を狙った犯行は決して軽いものではない。国が待ち望んだ次期さまを危うくしかけたのだ。どのような事情があったとはいえ、許されるものではない。本来であれば、死罪、軽くても生涯幽閉を免れぬところ」


 「はい……」


 青ざめた顔のまま、かすかにハギノは言った。


 「だが、この度は次期さまより、実際に害はなかった故、処罰を減じるようにと要請があった。陛下の御裁可も仰ぎ、こたび、アカガネはその役職をはく奪し、領都からの追放を命じる。今後カルディアで姿を見れば、その場で捕らえられ、投獄されるものと心得るがよい。よいな」


 ハギノは沈黙のまま、うなずいた。


 「命があるだけ、ましだと思いなさい。次期さまの嘆願がなければ、死罪でした。次期さまを襲うということは、それほど重い罪です。ですが、次期さまの嘆願と、事情を酌量して、この地から追放という軽い処分になりました。次期さまに感謝するように」


 「はい」


 震える小さな声で答えた後、ハギノはライモンに向き直り、静かに深く頭を下げた。


 「ありがとうございます。次期さま、次代さま。夫の命を助けてくださり、感謝いたします。このご恩は一生忘れません」


 「ああ、いや」


 ライモンは困ったように髪をかき上げた後、モエギを見やった。そのまなざしに気づいて、モエギはかすかに笑って、小さく首を振る。そのまま、受け取れということなのだろう。


 「感謝されるようなことじゃない。俺はこうやって怪我もせず無事なのだし、あなたや子供たちを盾に脅されていたんだろう。それに、俺も自分に関わることで人が死ぬようなことがあれば、あんまりいい気持じゃないしな」


 「それでも」


 顔を上げないまま、ハギノは言った。震える声は、どこかくぐもっている。もしかしたら、泣いているのかもしれない。


 「感謝申し上げます。あの人が生きていてくれるのは、あなたさまのおかげなのですから」


 その肩を、アカネがそつと抱きしめる。ハギノはゆっくりと体を回して彼女の肩に顔をうずめた。その背が小さく揺れている。やはり、泣いているのだろう。


 「ハギノ」


 「はい」


 アイネズに名を呼ばれて、ハギノは目のあたりを手の甲でぬぐって顔を上げ、新たな領主を見上げた。戸惑ったような色が、その瞳に浮かんでいる。


 「そなたに咎はない。そなたが望むのであれば、また領主館で働くことができる。どうする」


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