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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-20 新しい領主さま

「そういや、おれが服を借りたとき、妙に準備が良かったよな。前日に伝えたのに、ちゃんとそろってた。あれってもしかして」


「そうですね、自分が謁見の際に着たものがあったから、用意されていたのかもしれません」


 やっぱり、とライモンはうなった。


 たぶん、アジロも領主館に上がったのだろう。この前はその話は出なかったが、今度会ったときには聞かせてもらおうとライモンは思った。


「で、領主さまが交代したのが、その次の日ってことか」


 ライモンのつぶやきを耳に止めて、シラフジがうなずいた。


 「そうなりますわね。ならば、彼らの雇い主が知らずとも、致し方ないのやもしれませんわね」


 「本当に、領主さまは変わったのか……?」


 トビが不安そうに聞いてくる。それにライモンはうなずいた。


 「ああ。陛下の逆鱗に触れて、その場で領主の座を降ろされた。知らないのか。たぶん、街中はその話でもちきりらしいぞ」


 トビはぶんぶんと首を振る。


 「じゃあ、新しい領主さまって」


 「前の領主さまの弟にあたる方で、今までずっと王都にいらした方だ。陛下の行幸に供をして、こちらに帰っていらしたから、陛下が任命したんだ」


 「でも……」


 トビは明らかにおどおどしていた。


 「領主さまには、跡取り息子がいたはずだろう。弟じゃなくて、その息子が跡を継ぐはずじゃないのか」


 その言葉に、ライモンは一瞬空を仰いだ。シラフジは小さく吹いて、慌てて手を口元にやる。


 「その跡取り息子がやらかしたんだがな」


 ため息とともに、言葉が落とされた。トビが訳が分からないといった表情を浮かべる。


 「どういうことだ?」


 「領主さまの跡取り息子が、陛下の逆鱗に触れたんだよ。つまり、怒らせちまったってことだ」


 「そんなことがあったんだ……」


 呆然として、トビがつぶやく。ライモンはうんうんとうなずいた。


 「それで息子の不始末をとがめなかったご領主さまにまで罪が及んで、やめさせられたんだ。代わりに、領主さまの弟君が新しい領主さまになられたんだ」


 ライモンの話を聞いても、トビはただ呆然としたままだった。カチは話が分からないようで、ただトビの隣でおろおろしているだけだ。


 「でも、それ、本当のことなのか? 嘘じゃないのか」


 「まーだ、疑うのか? 俺がこんなことで嘘をついてどうするんだよ」


 トビの問いに、ライモンはあきれたようにつぶやいた。だが、トビは頑固に言い張る。


 「そりゃ、そうだろう。俺たちですら知らないのに、なんでおまえが知ってるんだよ。おかしいだろう。うちのおやっさんは領主さまと親しいのに、まったく知らないんだぞ。なんでおまえが知ってるんだよ」

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