第13章-19 来訪二日目のこと
「知ってるさ。うちのおやっさんはご領主さまに呼ばれて、領主館に行って国王さまを見てきたんだから。うちのおやっさん、ご領主さまと懇意だから、わざわざ招待されたんだぜ」
いや、それはお前が偉いんじゃないから、とライモンは言いかけてやめた。
「それは、いつのことだ?」
「え?」
きょとんとして、トビは目をしばたたいた。なにを言われているのか、一瞬、理解できなかったのだろう。
「それは、陛下が来られて、何日目のことだ?」
「陛下って誰だ?」
トビは本気でわかっていなかった。ライモンはちっと舌打ちをする。
「確か二日目のことですわ」
トビの代わりに、シラフジが答えた。ライモンの視線がシラフジに移る。
「シラフジさま?」
「陛下とは、国王さまの敬称でしてよ」
シラフジはふたりに言い聞かせるように、そう言った。それから思い返すかのように、少し小首をかしげた。
「陛下がこの地方の貴族、商人たちに挨拶を受けられたのは、二日目の午前中のことでしたわ。それが終わってから陛下は姿をくらませて、大変な騒ぎになりましたから、覚えております」
ライモンははっと思い出したように、ぽりぽりと指で頬をかいた。
おそらく、行方をくらませてライモンのところに来たときのことだ。
トビが意気込んでうなずく。
「そ、それです。おやっさんもそこで、陛下? 国王さまに会ったって言ってました。すごいことなんでしょう」
「そうね」
シラフジはなんとも言えない表情で、トビを見つめた。
「この周辺の貴族たちはひとりひとり紹介がありましたけど、商人たちはまとめて挨拶してましたから、あなたたちの雇い主もその一人でしょう。おそらく陛下の眼には止まっておりませんわ。あなたの期待をくじくようで、申し訳ないのですけどね」
「そ、そうなんですね」
がっかりしたように、トビは肩を落とした。カチはそんな彼を見て、うろたえている。
「なあ、商人たちもいたなら、アジロも行ってたのかなあ」
ライモンはモエギにそっと尋ねた。
アジロの家は、カルディアの中では一、二を誇る食料を扱う店だ。もちろん、領主館にもさまざまな食品を降ろしていると聞いている。フウケツが呼ばれたくらいだから、アジロのところが呼ばれていないはずがない。
モエギは小さく笑いながら、小声で答える。
「アジロはまだ商店の代表ではありませんから、お父上が行かれたのではないでしょうか。もしかしたら、供をしたかもしれませんが」
その言葉に、ライモンはああ、と思い出した。




