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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-18 領主の交代

 トビにしても、昔から言い伝えられている薬草を煎じたものをごくたまに飲むことはあっても、処方された薬など飲んだこともない。


 だが、シラフジはこともなげに、薬を取りに来いと言った。つまり、トビに薬をくれるということだろう。


 「でも、俺は金なんか持ってません、治療師さま」


 さすがにシラフジのことを治療師と認めて、トビは多少丁寧な口調になっていた。シラフジはその言葉に軽く目を見開いて、それから小さく笑った。


 「そこまで阿漕ではなくてよ。お金はいらないわ。こちらがやりすぎたというのもありますからね。ここの薬草では、痛み止めはできないの。だから、あとで取りに来なさい。まあ、放っておいても、一日二日で治るとは思いますけどね」


 よろしくて、とシラフジは念押しするように微笑んだ。その笑みに、トビはこくこくとうなずくだけだった。


 「それよりも、さっき、変なこと言ってたよな」


 ライモンが小首をかしげながら、つぶやくように言った。皆の視線が彼に集中する。


 「変なこと?」


 誰ともなく口についた言葉に、ライモンはうなずいた。


 「ご領主さまがこの土地を使う許可を出したって。あのアイネズさまがそんな許可を出すかなあ。領主になってまだ日も浅いのに」


 「そうですわね」と、シラフジが応じる。「アイネズさまはかなり厳しい方との評判を聞いています。おそらく、前のご領主では」


「あ、そうか」


 ライモンは得心がいったようにポンと手を叩いた。


 はじめは、ライモンたちが何を言っているのかわからず、きょとんとしていたトビが、急に思いついたように慌てて言った。


 「なに言ってんだよ。おまえのほうが変なことを言ってるぞ、ライモン。俺はご領主さまの名前はよく知らないけど、おまえが言ったような名前じゃなかったはずだ。それに、前のご領主さまってなんだよ」


 焦ったせいか、早口で少しろれつが回っていなかったが、トビはまくし立てた。ライモンがゆっくりと彼を見やった。


 「なんだ、おまえ、知らないのか。ご領主さまは交代されたんだぞ」


 「はあ?」


 ライモンの言葉が理解できなかったように、トビは叫んだ。カチはふたりの間でただおろおろとうろたえるばかりだった。


 「なんだそれ? 領主さまが替わった? そんなのきいたことないぞ。いつのことだよ」


 「いつ?」


 ライモンは少し考え込むように上を見やった。それから再びトビを見やる。


 「少し前だよ。えっと、この間、街に王様がいらっしゃったじゃないか。知らないか」


 「王様?」


 一瞬、虚を突かれたようにトビは固まったが、すぐに威張るように胸を張った。


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