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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-17 シラフジの治療

 そう言って、シラフジは優雅に、そして丁重に一礼してみせた。そんなことをする人を、彼らは今まで見たことがなかった。


 シラフジは微笑んだまま、トビに近づくとすっとひざを落とした。不意に目の前にシラフジの白い顔が迫り、トビは驚いて後ろに下がろうと手を地面についた。


 そのとたん、激痛が肩に走る。さきほどモエギに腕を取られた時に痛めたのだろう。


 トビはうっと思わずうめいた。


 「自業自得、ですわね」


 シラフジは笑みを深めてそう言うと、真顔になってすっとトビに向かって手を伸ばした。


 「ですが、私の役目とは関係ありませんわね」


 シラフジの手がトビの肩に当てられる。その時に至って、トビは治療士が波動を扱えるものだと思いだす。なにをされるのかと、怯えたような表情がトビの顔に浮かぶ。


 それにシラフジが頓着することはない。慣れているのだろう。肩に当てた手をゆっくりと動かす。


 当てられた掌から、なにかあたたかいものが流れ込んでくるような気がした。それが痛めたあたりを中心として緩やかにめぐっていくような感じだ。


 はじめて感じる感覚に、トビはなにも言えなかった。最初は怖れが先に立っていたが、それは嫌な感覚ではなかった。肩から始まったそのあたたかさは次第に身体中をめぐっていった。


 それが突然、断たれるようになくなった。ふと気づくと、シラフジは立ち上がっていた。


 「波動が乱れていましたので、それを軽く整えました。どうですか、痛みは多少、ましになっているのではありませんか」


 その言葉に、トビは一瞬ぽかんと口を開けた。それから恐る恐るといった態で、肩を少しだけ動かす。


 その表情が、あれ、というような、不思議そうな表情に変わる。それから肩を軽く回し、次いでぐるぐると勢いよく回しはじめた。


 「え、なんでだ。痛くない。さっき、ものすごく痛かったのに」


 「申しましたでしょう、波動を整えたと。痛みは波動の乱れです。それを少し整えれば、おのずとなくなるものですわ。とはいえ、それもしばらくの間しか効きません。あとで貼り薬をしておいたほうがよいのですけどね。後程、ライモンさまの牧場に取りにおいでなさい。私はそこにいますから」


 「えっ」


 トビは驚いたように眼を見開いた。それから、信じられないというかのように、何度か瞬いた。


 「俺に、薬を、くれるんですか?」


 彼が驚くのも無理はない。薬は貴重なものとされて、なかなか手に入るものではない。特にこのような田舎と言っていいような土地では、治療師や薬師は少ない。街には何人かいるが、彼らに頼れる人は裕福なものが多い。


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