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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-14 トビとカチ

 若い男の声が聞こえてきて、一同はぱっと振り返った。その視線の先に、若者がふたり、一頭の牛を連れて立っていた。にやにやと嫌な笑みをその顔に張り付けて。


 ライモンがすっと背筋を伸ばす。その表情が厳しくなった。モエギがその隣で彼の袖を引っ張り、セイジュが沈黙したまま、ふたりとシラフジを守る位置に移動する。


 「トビとカチ、か」


 苦い声音で、ライモンは言った。モエギがふと顔を上げて主を見やる。


 「ライモン、知り合いですか?」


 「ああ。フウケツの牧場のところのもんだ」


 「フウケツ? ああ、隣の、いつも嫌がらせをしてくるという牧場ですか?」


 モエギの素直な問いに、カチが口元をゆがめて笑んだ。


 「おいおい、言ってくれるじゃないか、そこの坊主。ええ。俺らは嫌がらせなんぞ、してないさ。そこのライモンの考えすぎだよ」


 ふん、と鼻息も荒く、上からものをいうような感じで、モエギは少し身構えた。それはセイジュも同様だった。


 「だが、見ない顔ばっかりだな。そっちのもだ」


 セイジュを見やりながら、カチは言った。年かさに見えるカチに、セイジュはきっとにらみつける。


 「そういや、おまえのところ、最近人が増えたっていうじゃないか。そいつらか」


 ライモンはなにも答えなかった。その背から、緊張感やら嫌悪やら、警戒心などが感じられる。それは薄い黒い靄となって彼を覆っているかのようだった。モエギが心配そうに主を見上げている。


 「はん、答えたくないってか」


 トビがカチに代わって言った。彼もまた、小ばかにしたような物言いだった。


 「おまえらには関係ないことだ」


 「関係あるだろう」


 その言葉に、ライモンが少しだけ表情を動かした。


 「うちの土地でなんかやっているんだから、関係あるだろう、なあ、ライモン」


 「うちの土地?」


 ライモンはなにを言っているんだと言わんばかりに、言葉を吐き出した。


 「ここはどこの土地でもないだろう。うちの土地じゃないが、フウケツのところの土地でもないはずだ」


 「おいおい」


 トビはあきれたように吐息をついて、馬鹿にしたようにライモンを見下ろした。彼のほうがライモンよりも背が高いため、どうしてもそうなってしまう。


 「うちのおやっさんを呼び捨てか? ライモン、おまえも偉くなったもんだな」


 その言葉に、カチがひゃっひゃっと声を上げて笑う。耳障りな笑い声だった。


 「そのお偉いさんも知らないようだから、教えてやるよ。ここいらあたりはうちのおやっさんがご領主さまに自由に使ってよいと許可を得てるんだよ。だから、うちの土地みたいなもんだ。おまえがいていい場所じゃないんだよ」

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