第13章-13 ちょうどいい2
ああ、とライモンはなんとなく納得した。真ん中ではない、と言ったシラフジの言葉が腑に落ちた気がする。だが、その隣でセイジュはまだ気難しい顔をしていた。
シラフジはくすっと笑って続けた。
「では、もう少しわかりやすい例をあげましょうかね。では、ここに赤ん坊と成人した大男がいたとしましょう。ふたりの食べる量は同じですか?」
まさか、とセイジュが首を振る。
「そうですわね、まだ食べられるようになったばかりの赤ん坊と、成人男子では食べる量は歴然とした違いがありますわね」
当然だろうと言わんばかりに、セイジュはうなずく。それを見届けてから、シラフジは続けた。
「そして、あなた自身でも、お腹がすいているときと、そうでもない時では食べられる量が違いますでしょう」
セイジュは再びうなずく。ようやく少しわかってきたような表情になっていた。
「それぞれに、ちょうどいい、というものがあるのです」
シラフジは満足そうにうなずいたが、すぐに表情を引き締めた。
「ですが、気をつけなければいけないのは、そのものにとってちょうどいいことでも、ほかのものにとってはそうではないかもしれない、ということです。同じものでさえ、時と場合によってはちょうどいい、というのが違うのですから、ほかのものと同じとはかぎりません。自分のちょうどいいを人に押し付けてはいけませんよ。それは傲慢というものです」
そう言われて、セイジュは少したじろいたようだった。ライモンもまた、まじめな表情でうなずいた。
シラフジは小さく笑った。本当に理解できているかどうか、それを確認することはなかった。
今はわからなくても、いつかわかる時が来るかもしれない。来ないかもしれない。だが、わかったその時に、今の話を思い出してくれればいいと、思っているようだった。
それから三人と守護精は薬草の採取にいそしんだ。
あたりがすっかり明るくなり、朝の澄んだ空気がゆっくりと温められていく。その頃になると、種類別に集めた薬草がこんもりと小山のようになっていた。
一番多いのは、アカヒャクヤクモドキだった。その次に多いのがシロヒャクヤクモドキ。ヒャクヤクはアカヒャクヤクモドキの半分にも満たなかった。
だが、シラフジはほくほく顔で満足そうだった。この野原のすべてを狩りつくしたわけではないが、彼女にとっては十分すぎる収穫なのだろう。
「ここでこれだけ取れるのならば、この近くに薬草園など作れるといいのですけどねえ」
シラフジは頬に手を当てて、ため息をついた。
「やはり、これはアイネズさまに進言して……」
ぶつぶつと自分の想いにシラフジが陥りかけたとき。
「おや、誰かと思えば、隣のライモンじゃないか」




