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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-12 ちょうどいい

 「ええ。シロヒャクヤクモドキはヒャクヤクには薬効は劣りますけど、代用品として扱われます。ヒャクヤクとは別に使える処方もありますので、あれば助かりますわ」


 「へえ。じゃあ、たくさん使えばヒャクヤクと同じ効果が得られるんだ」


 ライモンが感心したようにつぶやくと、その声を拾ったシラフジが採集の手を止め、ライモンを見つめた。


 「ライモンさま、それは違いますわ」


 「え?」


 ライモンは不思議そうに治療師の長を見やった。その手にはシロヒャクヤクモドキが握られている。


 「さきほども申し上げましたが、多すぎればそれは害を及ぼします。シロヒャクヤクモドキを使うのは、ヒャクヤクがないからですが、多く使えばよいというものではございません。少なくても薬としては効かない、ですが、多すぎても害になる。ちょうどいい、という量があるのですよ」


 「ちょうどいい」


 「はい」


 シラフジはうなずいた。セイジュも手を止めて、シラフジの話を聞いている。


 「それにとってちょうどいい、というものが、なんであれ、ありますのよ。多くもなく、少なくもなく。ちょうどいい、ということ。良いか悪いかではなく、善か悪か、ということでもありません。こういうと、真ん中であるかのように思われるかもしれませんが、そういうことではありません。なんとお伝えすれば、わかっていただけますかしら」


 少し考え込むようにして、シラフジは指で頬をつついた。


 ライモンとセイジュは一瞬顔を見合わせた。ライモンは最初、シラフジの話を聞いたとき、真ん中のことかと思った。だが、違うという。


 ライモンが首をひねってみせると、セイジュはお手上げというように軽く手を広げて、肩をすくめてみせた。


 「そうですわね。たとえば、この草、植物には太陽の光と水が必要だと、ご存知ですわね」


 それについてはわかりきったことなので、ライモンはうなずいた。セイジュもまたうんうんと首を振っている。


 「太陽の光と水がなければ、植物は枯れてしまいます。それはこのような草であれ、大樹であれ、同じことです。ですが、太陽の光が必要とはいえ、日照りが続けば葉は灼け、やがて枯れてしまいます。大樹のほうが長く耐えられるでしょうが、日照りが続けばやがて枯れてしまうのは、同じことです。それと同じように、水も多ければいい、というものではありません。水が多ければ、根腐れを起こしてやがて枯れてしまいます。これは、薬草の処方と同様ですね」


 ライモンは神妙な顔つきで話を聞いている。


 「では、大樹と草とでは、必要な量は同じでしょうか。水にしろ、太陽の光にしろ、ですよ」


 突然の問いに、ライモンは戸惑いながらも考え込む。それから顔を上げて答えた。


 「同じではないですね。それぞれに必要な量が違うと思います。樹が大きければ、それだけ光の量も水の量もたくさん必要になります。草はもっと少なくてもいいと思います」


 そうですわね、とシラフジはうなずく。


 「たとえば、ここに杯一杯の水があったとしましょう。この水は草には十分かもしれませんが、樹にとってはまったく足りないものとなります。それぞれに必要な量は異なるわけです。そして、多すぎても少なすぎてもいけないわけですから、それぞれに必要な、ちょうどいい量、ということになりますわね」


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