第13章-11 次の為に
「でも、俺たちも同じことをしたら……」
ライモンの言葉を、シラフジは指を立てて、ゆっくりと左右に振った。その仕草に、ライモンはごくりとつばを飲み込んだ。
「ええ、ここでも全滅しますわね。ですから、膝から下のヒャクヤクは摘み取らず、残しておいてください」
「え?」
ライモンは虚を突かれたように、眼を見開いた。
「それはどういう……」
「次の世代を残すためですわ」
にっこりと笑ってシラフジは続ける。
「ヒャクヤクは元来、とても丈夫な草です。気づけばそこら中に生えている、雑草と見間違われるほどの生命力を持っていますが、それでも根ごと全てを持ち去られては、さすがに生き残れません。種ができる前ならなおさらのこと。わずかに地中に残った根だけでは再生できませんから。ですから、私たちはひざより高く伸びたものだけを採集します。それより小さなものは残しておいて、次につなげるのです。そうすれば、根は地中を伸びて、次の芽を出すことができます。次の季節を待たずに、また新たな芽を伸ばしてまた一面のヒャクヤクになるのです」
そして再び、シラフジはため息をつく。
「ですが、それがわからぬものが少なからずいるのですよ。目先のことのみを見て、次のことを考えないものが。残しておけば次につながりますものを」
「金目当てに文字どおり、根こそぎ採ってしまうのか」
「ええ。ヒャクヤクは貴重なものとされていますから。見るものが見ればここは宝の山でしょう。なくなったとしても、彼らには関係ないと思っているのです。次を探せばいいだけのことだと。そういうことではないのですけどね」
困ったものです、と治療士の長は嘆いた。それから顔を上げて、再び手を叩いた。
「さあさあ、時が惜しいですわ。今のことを注意して、採集していただけますか、ライモンさま、次代さま。ああ、ついでにセイジュ、あなたもね」
最後につけたしのように名前を呼ばれて、セイジュは軽く舌打ちした。
「俺はおまけですか、長殿」
「当然でしょう。けれど、ちゃんと頭数に入れてますからね。人一倍働いてくださいね」
ぶつぶつと文句を口の中で言いながらも、セイジュはヒャクヤクを引き抜いた。それからシラフジを見やる。
「これ、とりあえずこのあたりにおいておけばいいですか」
「そうですわね。一応、種類別においていただければ助かりますわ。見分けがつかない場合は、こちらに。私が後程見分けます」
「このシロヒャクヤクモドキもですか、シラフジさま」
今度はライモンは問いかける。それにシラフジはうなずいた。




