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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-8 アカヒャクヤクモドキの効用

 「そうですわね。特に乾かしたものでは判別はなかなか難しいですわね。乾燥すると、この赤い色が消えてしまいますし」


 「じゃあ、間違ったら大変じゃないか。ヒャクヤクは薬草だけど、こっちの、なんて言ったかな、アカヒャクヤクモドキ、だったかな、は毒なんだろう」


 ええ、とシラフジはうなずいた。


 「はい。煎じたものを飲めば、お腹を下しますわね」


 「お腹を下す?」


 「ええ。飲んで少しすると、ひどい腹痛とともに下します。飲んだ量にもよりますが、かなり長い時間苦しみますわね」


 シラフジはさらっと言ったが、ライモンは少し青ざめた。その横で、セイジュがぶるりと震えるのを感じて、同じように感じているのだろうとライモンは推測した。


 それから、ライモンはふとおもいついたような表情を浮かべて、治療師の長を見やった。


 「でも、アカヒャクヤクモドキって、腹を下すだけなのか? それなのに、毒って言われるのか?」


 「そうですわね。確かに下すだけかもしれません。ですが、薬を必要とするのは誰だかお分かりですか」


 ライモンの問いに、シラフジは微笑んで問い返してくる。ライモンは少し考え込んで、答えた。


 「薬を必要とするのは、もちろん、体が弱った人や病気の人だよな」


 「ええ、そうですわね。何の病気もない、元気な人が飲んでも苦しんで、お腹を下して大変な目に合うのですよ。身体の弱ったものならば、どうなります。ただでさえ弱っているところにさらに苦痛が加わり、下すことで体の中の水もなくなってしまいます。容態の悪いものはそのまま亡くなることもあり得ます。毒と言われるゆえんですわ」


 「そうか、そうだよな……」


 ライモンは納得したようにうなずいた。ライモンだとて、腹痛を起こしてのたうち回ったことがある。何度も厠に駆け込んで、収まったと思ったとたん、再び駆け込んだこともある。そのあとはぐったりと体に力が入らず、寝込んだりもした。


 身体が弱ったものが、そういう目にあったら。


 「うん。これが毒と言われるわけが、分かったような気がする」


 ライモンのつぶやくような声音に、シラフジは笑みを浮かべた。


 「もっとも、これが役に立たないわけではありませんのよ」


 「え?」


 ライモンはシラフジの言葉にきょとんとした表情を向けた。さっき、毒だと言ったばかりではないのか。


 「煎じた濃い薬液を飲めば、腹痛を起こしますが、逆に言えば薄いものを何日も便通がないものに服用させれば、通じさせることができますのよ。まあ、多少の腹痛を伴うこともありますけど」


 なるほど、とライモンはうなずいた。

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