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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-5 早朝

 翌日。


 早朝というにもまだ陽も昇っていない、宵闇に包まれたころ。


 ライモンたちは牧場を出発した。


 とはいえ、すでに牧場は朝の仕事のために動き始めていた。ライモンたちが出かけるころにはロウゼンは起きており、手伝いの二人を起こしに行くところだった。アカネとハナナは母屋の扉のところで手を振って、ライモンたちを見送っていた。


 春とはいえ、夜明け前はまだ肌寒い。途中で脱ぎ着できるように、少し厚めの上着をライモンは着ていた。首に布を巻いて保温している。


 シラフジもアカネが着ていた上着と、作業用のゆとりがあるズボンをスカートの下に穿いている。ここしばらくこのあたりを歩き回るときにアカネから借りていて、それが動きやすいとずいぶんとお気に入りのようだった。


 モエギはいつも通りの格好だ。特に厚手の服を着ていることはない。


 そして、もうひとり、セイジュがいた。彼はライモンに借りた厚手の上着と自分のマントを羽織っている。来たの王都に比べれば、このあたりはまだ温暖な気候のはずだが、寒いと肩をすくめながら歩いていた。


 夜はまだ明けていない。


 地理がわかっていて、少しは夜目が効くライモンは案内の為に先に立っていた。ときおり、どのあたりを通ったか、振り返ってはシラフジに確認している。


 そのシラフジもまた、夜目が効くのだろう、迷うことなくライモンの後ろを歩いていた。その周囲がほわんと少し白く浮かび上がっているように見えるのは、気のせいだろうか。


 モエギもまた確かな足取りで一向についていっていた。足元のどこに何があるのか、ちゃんとわかっているようだ。


 ここでもまた、セイジュはひとり後れを取っていた。暗い中で、さほど夜目が効くわけではない、このあたりの地理にも不慣れで、今どんな道を、いや、野原の中を歩いているのかもわからない。草に引っかかったり、石に躓いたり。護衛と言いながら、少しずつライモンの背が遠くなっていく。


 ふいに、モエギが立ち止まった。セイジュはほっとしたように吐息をつき、それから再び草の根に引っかかり、転びかけた。


 「仕方ありませんね」


 そんなセイジュを見やって、モエギは深いため息をついた。セイジュは起き上がって、へへ、と照れ笑いをする。


 再びため息をつくと、両手を胸の前で組んだ。それから少し掌を離すと、かすかな光の玉が現れる。それが徐々に大きくなり、両手の間にはまるくらいの小さな光の球になった。それはあたりに光を放っていたが、それが照らすのはモエギとセイジュの間くらいのものだった。


 だが、それでも足元は見える。それがセイジュに力を与える。


 暗闇の中で動くことに全く慣れていないわけではない。訓練で暗い中での戦闘の模擬戦をしたこともある。だが、今は何もかもが不慣れなことだらけだ。


 そこにモエギの作り出した光が、希望のように思える。再び歩き出す勇気のようなものが沸きあがってきた。


 「ありがとうございます、次代さま。助かります」


 「今回だけですよ」


 そう言うと、モエギはくるりと後ろを向いた。その背に光の球を置いたまま。


 その光はセイジュを導くかのように、ゆっくりと動き始める。セイジュはその光を追った。それはすなわち、モエギとライモンの後を追うことであった。


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