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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-3 治療師と治療士

 「よくこれを見つけられましたね。間違いなくヒャクヤクです。似たような植物も多いのに」


 「私をなめてもらっては困りますわ、次代さま」


 シラフジは胸を張って言う。


 「これでも治療師の端くれでしてよ。薬草の同定は治療師の塔で学ぶ最初の一歩ですわ。この程度のことができなくて、治療師なぞ名乗れません」


 「そうですね。お見事です、シラフジ」


 モエギはちょっと困ったような笑みを浮かべてシラフジに応えた。彼女はふふん、と自慢げだ。


 へえ、とライモンは卓に近づくと、薬草のひとつをつまみ上げ、指でくるくると回しながら見やった。


 「治療師の塔、というのがあるのですか。それは知りませんでした。俺、治療師というのは、その家に生まれたからなるものだと思ってました」


 「そうですわね」


 シラフジはライモンの手からそっと薬草を取り上げると、元の位置に戻した。あまりにも自然な動きだった故、ライモンはいつのまにとられたのかもわからなかった。


 「親が治療師であれば、その子も多少なりとも波動を扱う術を受け継いでいるでしょうからね。親から薬草の知識なども教えられているでしょうし、そのようなものはわざわざ王都まで上がって、治療師の塔で学ぼうとは思わないでしょう。特に王都から遠く離れた地ではなおさらでしょう」


 「まあ、そうでしょうね。王都まで行くには、路銀や道中のことなどありますから」


 「まったくです」


 ふうっと、シラフジは吐息をついてみせた。そして、苦笑とも見える笑みを浮かべる。


 「治療師、と一言で言いますが、本来は治療師の塔で修業を受けたものを治療師、そうでないものは治療士と区別されます。まあ、どちらにしても治療を行うものですから、治療士が軽んじられているわけではありません。ああ、貶めているわけでもありませんわ。治療士でも独学で学ぶものはおりますからね。時には、治療師たちが舌を巻くほどの知識を持ったものもおります」


 「そうなんですね。あまりお世話になったことがないので、知りませんでした」


 ほほ、とシラフジは笑った。


 「ライモンさまはお元気そうですものね。あまり、このことは知られてはいないのですよ。人は本来、誰しも癒しの力を持っているものですし」


 「人が癒しの力を? 俺も、ですか」


 ライモンは不思議そうに言って、思わず両手を見た。その手になにかの力があるようには見えなかった。


 「ええ。手当、という言葉がありますでしょう。具合の悪そうな人に手をかざしたりしませんか」


 ある、とライモンはうなずいた。自分の幼いころ、熱を出したときにアカネが額に手を当ててくれたことがある。ひんやりとした手が触れる、ただそれだけで安心して、次第に楽になっていったことがあった。他にも足を打った時なども手を当てると痛みが引いていくことがあった。


 動物たちに対してもそうだった。具合の悪そうなところを見かけて、どこが悪い、ここが痛いのか、と手を当てていると、ふいに元気になって離れていくことが何度もあった。


 「それが、癒しの力?」


 「ええ。病気や不調とは、体の中の波動の乱れが起こすものです。そこに手を当てることで、乱れをゆっくりと元に戻して直していくのです。これは誰にでもできることですの。よく守護精さまを波動の生き物と申しますが」

 シラフジはちらりとモエギに目をやった。モエギはわかったようにうなずく。

 「人の子もまた、波動の影響を受ける波動の生き物なのです」


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