第12章-48 護衛の意味
「いえいえ」
セイジュは軽く首を振ると、ゆっくりと立ち上がった。
「御身はすでにこの国の次期さまです。その身は守られねばなりません。現に昨夜、なにがあったのか、よもやお忘れですか」
それを言われると、ライモンには否定できない。苦い顔をしていると、セイジュがにっと笑った。
「それゆえ、陛下は私に次期さまの護衛をお命じになりました。昼夜を問わず、次期さまのお守りするように、とのことです」
「いや、陛下が俺なんかのことを心配してくれるのはありがたいんだが……だが、護衛なんかいらないぞ」
ライモンはセイジュに反論する。
「それに俺にはモエギがいるからな。いつもそばにいてくれるし、昨日の夜もモエギとロウ爺が気づいてくれたし。もうあんなことは起こらないだろう」
だが、セイジュは首を振る。
「確かに昨日の首謀者は捕らえられました。五大家のものであれば、次期さまに手を出す愚かさは充分存じていることと思います。俺なんか、と次期さまはおっしゃいますが、御身になにかあれば、次代さまも失われてしまいます。それがどれほどの損失と嘆きになるか」
「損失……?」
ライモンは驚いたように眼を見開いた。セイジュはうなずいた。
「さきほども申し上げたように、次期さまがはかなくなられるということは、次代さまも失われるということ。先の陛下が身罷られ、当時の次期さまであられたアリアケさまが当代さまになられてから、すでに長いときが過ぎております。やっと現れてくださった次代さまが失われれば、次の次代さまが現れるまでにどれほどの時を要するか。すぐに現れるか、それともまた十何年という時を待たねばならぬのか。守護精さまご自身にも分らぬことのようですから、人の子たる我らにわかろうはずがありません。待つ時間が長いほど、争いの種は蒔かれ、育っていくものです」
セイジュはまるで書物を読んでいるかのように語った。ライモンはそれを聞いて黙り込むしかない。
「なんてね」
突然、おどけたようにセイジュが肩をすくめ、軽く手を開いてみせた。さきほどの重々しさが嘘のような軽さだった。思わずライモンは拍子抜けする。
「まあ、建前はそうなんですけどね。そうなら、騎士のひとりをつければいいだけなんです。俺でなくてもいいんですけど。でも、俺が選ばれたのは、多分次期さまと年が近いからなんだと思います」
「年が近い?」
「ええ」
再びセイジュはうなずいた。
「今は行幸の最中なんで、騎士たちも同行していますが、さほど数は多くありません。それに、陛下や姫さま、宰相がたの護衛が主なので、さける人員がいないっていうのもあるんだと思います。それで、俺に白羽の矢が立ったんだと」




