第12章-25 提案
「それで、縁もゆかりもないこの地方の特産品を作ろうと?」
ライモンの言葉に、フヨウは両手で頬を押さえながら、こくこくとうなずいた。その頬が淡く染まっている。
そんな彼女がなぜかかわいく見えて、ライモンはつい微笑んだ。
「でも、わたくしにできるのは、考えることだけですわ」
なのに、フヨウはすぐに顔を曇らせた。悲しげにすら見える。
「考えるだけで、なにを為せるわけではありません。さきほどのことも、わたくしがどうすることもできないのです」
「そんなことは……」
ライモンは慰めようとして、だが、言葉が出てこなかった。なにをどういえばいいのかわからず、差し伸べようとした手を降ろした。
「アイネズさまに、提案してみてはいかがでしょうか」
ふいに、ライモンの隣から声がした。視線が一斉にそちらに向く。そこに、すました顔のモエギがいた。
「アイネズさまに話してみてはいかがですか。今は代替わりをされたばかりで、領地のことを把握なさるのに大変でしょうが、あの方ならば、少し余裕ができたなら、フヨウさまがおっしゃる特産品を作ることも視野に入れてくださるのでは」
「次代さま……」
フヨウがあっけにとられた表情でモエギを見つめていた。それにモエギは小さく笑ってみせる。
「フヨウさまならば、陛下と当代さまを通じて、アイネズさまに提案できるのではないのですか」
「え、ええ……」
フヨウは押されたようにただこくこくとうなずいた。
「それはよい考えですな」
それまで黙って聞いていたハシドイが同意を示した。皆の視線が彼に注がれる。だが、彼は気にしたふうもない。
「陛下ならば、姫さまのお考えを汲んで、アイネズ殿に提案してくださるでしょう。アイネズ殿がそれに乗るかどうかは別にして。ですが、機を見るに敏と言われる宰相補佐殿です。必ずや興味を持たれましょうな」
「ハシドイ……」
フヨウは少しだけ笑みを見せた。
「そうだなあ」
ややのんびりした調子で、ライモンが言う。フヨウは首を巡らせて彼を見やった。
「俺からもアイネズさまに言ってみましょう。なんか、あの人はいろんなことに興味がありそうですから」
「ライモンさま……」
「私が伝えに参りますよ」
モエギがそう言うと、ライモンはうん、とうなずいた。ふたりの間に、どちらからともなく笑みが浮かぶ。
フヨウはふたりを見て、それからハシドイや騎士たちを見やった。
フヨウは片手を胸に当て、もう片手でスカートのすそをつまんで皆に向かって一礼した。いとも優雅に。




