表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第12章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

553/614

第12章-24 癖なのです

 ライモンは質問の意図がわからず、フヨウの言葉を繰り返す。フヨウは少し焦れたようだった。


 「ええ、チーズを専門に作る、そうですわね、職人と言っていいかもしれません。そんな方たちはいらっしゃらないのですか」


 その問いに、ライモンは少し考え込んだ。それから、ゆっくりと首を横に振る。


 「あまり聞いたことはないです。ここのチーズは牧場を営むものが自分のところで食べる分を作るくらいで、そりゃまあ、余れば俺みたいに街に持っていって売りますけど、チーズだけを作る人はたぶんいないです」


 「そうですか」


 今度はフヨウが考え込む。ライモンはそんな彼女の顔をこっそりと覗き込んだ。


 フヨウはぶつぶつとなにかつぶやいているようだった。考えをまとめるのに、そうしているみたいだ。


 「あの、フヨウさま……」


 ライモンが戸惑ったように呼び掛けると、フヨウははっとしたように顔を上げた。焦点の合わない瞳がゆっくりとライモンを映し出す。


 「ライモン……さま……?」


 「大丈夫ですか。ずっとなにかつぶやいてましたけど」


 「え、あら、まあ……」


 フヨウはようやく現実に戻ってきたかのように、口元に手を当てて、慌てて立ち上がり、スカートのすそをつまんで一礼した。


 「申し訳ありません。わたくしの悪い癖ですわ。考え事を始めると、他のことが耳に入らなくなってしまうのです。よく注意されるのですけど……」


 「あ、いや、ちょっとびっくりしただけです。なにを考えていらっしゃったんですか」


 「あ、ええ。このチーズやお茶などをどうやったらこの地方の特産品にできるかと、つい考えてしまいまして。私が考えても、仕方のないことですのに」


 ライモンはその言葉に少し驚いたように眼を見開いた。


 「そんなことを考えてらしたのですか」


 「ええ、つい……」


 ライモンにはよくわからなかった。フヨウはここには数日前に来たばかりで、何のかかわりもないはずだ。それなのに、どうして特産品のことなど考えているのだろう。


 ライモンはたまらず、直接それを聞いてみた。


 「フヨウさまは、どうしてそんなことを考えくださるのですか。フヨウさまは、こことは何の関係もないですよね」


 「そうですわね」


 フヨウは恐縮したように体を縮こまらせた。ライモンは困ったように頭をかいた。そんな表情を指せようと思って聞いたわけではない。


 「あの、責めているわけではないんです。なぜ、フヨウさまがここまでしてくださるのか、それが不思議なだけで」


 「申し訳ありません。癖なのです。こう、なにか良くなると思うとどうすればよいか、つい考えてしまうのです。ですが。わたくしに何ができるわけではなく、本当にただ考えるだけなのですが……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ