第12章-23 特産品に
カンロノキのお茶もチーズも基本的には自分のところで消費するだけだ。確かにチーズはそれよりも多く作って街に売りに出ることもあるが、それほど多くは作れない。牛の数から得られる牛乳の量も決まってくるし、ライモンとロウゼンだけでは、作りたくともどうしても作業に割ける時間も限られる。
それがこの地方の特産品になるとは、思いもしなかった。
「この地方のチーズは、みなこのようなチーズの作り方をしているのですか?」
ライモンのもの想いを破るかのようなフヨウの問いに、ライモンははっとしたように彼女を見やった。
「いえ、似たような作り方はしていると思いますが、基本的にはそれぞれの牧場ごとに違うと思います。牧場ごとに味が違いますから」
「つまり、このチーズを作れるのはライモンさまだけ、ということですか?」
「いや、ロウ爺、あちらのロウゼンも作れます」
「ほかの方は作れない、ということでございますね」
ライモンの答えに、フヨウは口元に指を当てて、少し考えるように押し黙った。
「それは、もったいないことでございますね」
小さくため息をつきながら、フヨウは言った。ライモンはよくわからず、ただ首を傾げた。
「フヨウさま」
「だって」
かすかに笑みを含んだ声で、フヨウは言った。
「ライモンさまは近い将来、ここをお出になるのでしょう。ロウゼンさん、とおっしゃったかしら、そちらの方がおひとりでチーズを作るのは大変でしょう。製法を誰かに伝えない限り、このチーズがなくなるのだと思うと、もったいないというか、残念というか」
「そう思っていただけるのは、ありがたいと思いますが……なくならないかもしれません」
「まあ、本当に?」
ぱあっと、フヨウの表情が明るくなる。ライモンは押されたようにこくこくとうなずいた。
「まだ決まってはいないのですけど……。アジロに、あ、さっき言った幼馴染に相談しています、この牧場を継いでくれるものがいないか。彼にはあてがあるようで、打診してみてくれると言っています。もし決まるようでしたら、彼らにここのチーズの作り方を教えたいと思っています」
「まあ、それは素敵」
フヨウは両掌を合わせると、にっこりと微笑んだ。だが、それはすぐに陰る。
「でも、そうするとやはりあまり数は作れませんわね。これをこちらの地方の品にす特産品にするならば……」
そう言って、フヨウはぱっと顔を上げた。
「こちらの地方には、チーズを作る人はいないのでしょうか」
「チーズを作る?」
ライモンは質問の意図がわからず、フヨウの言葉を繰り返す。フヨウは少し焦れたようだった。




