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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第12章

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第12章-22 もったいない

 彼が勧めたのは、先ほどライモンたちが持ってきたチーズだった。いつの間にか、薄く切られている。ハシドイたちはそれを薄く切ったパンに乗せて食べていた。フヨウはそれに気付いてぱっと顔を輝かせた。


 「あら、先ほどライモンさまと取ってきたチーズですわね。こちらも美味しそう。いただいてもよろしくて」


 フヨウがアカネに許可を取るように訊くと、アカネは微笑んでうなずいた。それを受けて、ハナナが小皿にパンとチーズを取り分け、フヨウに手渡した。フヨウはハナナに気さくにうなずくと、小皿のチーズをのせたパンをゆっくりと口に運ぶ。そのようすをなんとなく固唾を飲みながらライモンやアカネが見ていた。


 静かにゆっくりと咀嚼して、それからフヨウは口元に手を当てた。驚いたように目が丸くなっている。


 「これ、なんて美味しい……」


 フヨウはもう一口、二口と瞬く間に渡されたチーズとパンを食べた。ほうっとため息をつくと、お茶を含む。それから幸せそうにため息をついた。


 「とても美味しいチーズですわね。これかしら、昨日からお父様が美味しいチーズがあるとおっしゃっていたのは。これはここで作られたチーズですか」


 幸せそうな表情のまま、フヨウはライモンに尋ねた。ライモンは少し照れたようにうなずく。


 「ええ、うちで、俺たちが作ったチーズです。お気に召したようで、うれしいです」


 「まあ、そうなのですね。こちらには美味しいものがたくさんあるのですね」


 微笑んでそう言ったフヨウだったが、その表情がふと曇る。急に口を閉ざすと、何か考え込むように押し黙った。


 「……フヨウさま?」


 急に静かになったフヨウをいぶかしむように、ライモンは少し彼女を覗き込むかのようにして問うた。その声に、フヨウははっとしたように顔を上げた。


 「ライモンさま……」


 「どうかしましたか」


 夢から覚めたかのような表情の彼女に、ライモンははばかるように声をかけた。フヨウは二、三度顔を振ってからライモンを見つめた。


 「ああ、申し訳ありません。つい考え事を……」


 「考え事?」


 ライモンはフヨウの言葉を繰り返した。フヨウはこくりとうなずく。


 「ええ。なんというか、もったいないという気がしましたの」


 「もったいない?」


 ライモンはただ彼女の言葉を繰り返すことしかできなかった。フヨウが何を考えていたのか、想像もつかない。


 「ええ。ここにはたくさんの美味しいものがあって。それをこの場だけでおしまいにするのは、あまりにももったいないというか……。うまくすれば、この地方の特産品にできるのではないかと思ったのですわ」


 「特……産品?」


 ライモンは考えたこともなかった。

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