第12章-21 手製のお茶
「このお茶自体が持つものですよ。このお茶はこのあたりで自生するカンロノキという樹の新芽を摘んで、やわらかく蒸してから干したもので煎れたものです。この新芽自体にかすかな甘みがあって、蒸すことによってさらに甘みが出るのですよ。それに、マリカという花を干したものを混ぜています」
「まあ……それでかすかに花の香がするのですね……」
フヨウは感心したようにそうつぶやいて、お茶を飲み干した。それに気付いて、アカネがお代わりをすすめ、フヨウはうなずいて素直にもらった。
「とても美味しいですわ。初めてのお味ですのに、どこか懐かしさも感じられて……」
フヨウはすすめられた焼き菓子を手に取り、それもまた口に運ぶ。素朴な味わいの焼き菓子だったが、お茶にはよくあった。フヨウの手が止まらず、ふたつみっつ、続けて包ばっていた。
「このお茶は、どこかで売っているのでしょうか。できれば買い求めたいのですけど」
フヨウの問いに、アカネは首を傾げ、次いでハナナを見やる。だが、ハナナは黙ったまま首を振るばかりだ。要するに、心当たりがないということなのだろう。
「残念ながら、存じませんわ。これはうちで作ったものですので。この近辺の人は自生している樹から自分たちで飲む分を作るのです。売っているという話は、聞いたことがありませんわ」
そうですか、とフヨウは少し悲し気にうなずいた。
「あまりにも美味しいものですから、父にも召し上がっていただきたいと思ったのですが……」
「そうだなあ」
ライモンが考え込むようにしながら言った。皆の視線が集まっていることにも気づかず。
「アジロに聞いてみる、あ、聞いてみますよ。あそこは食品を扱っている商店ですから」
「アジロ?」
「あ……」
不思議そうに小首をかしげたフヨウに、ライモンは戸惑ったように一瞬言葉をとぎらせた。それから思い直したように、先を続ける。
「あ、アジロは俺の幼馴染で、街で食料品を扱っている店の若旦那なんです。俺のところの牛乳もそこに卸しています。あいつなら、もしかしたら売り物になってるカンロノキのお茶を知っているかもしれません。もしあれば、フヨウさまのもとに届けることができるかもしれません」
「まあ」
フヨウは両の手を合わせて微笑んだ。
「素敵ですわ。もしあるようでしたら、ぜひお送りくださいましね」
「は、はい」
ライモンはなぜか照れたように頭をかいた。それに気付かぬように、フヨウとともに馬車に乗ってきた若者が、フヨウに話しかける。
「姫さま、こちらも美味しいですよ。召し上がってみてください」




