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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第12章

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第12章-18 これからは

 「フヨウさまが言うように、これからはきっと驚くことばかりでしょうね。この狭い場所から出ていけば。でも、そうでなくても、知っていることよりも知らないことのほうが多くて、それは一生をかけても同じことなんだと思います。だから、世界はきっと、驚きに満ちているんでしょうね」


 ライモンの言葉に、今度はフヨウが目を丸くした。それからふふ、と小さく笑う。


 「そうですわね。世界は広くて、わたくしたちが知れることなどたかが知れているのかもしれません。それを少しずつ知っていくのはおそらく、楽しみですわね」


 「まったくです」


 ライモンはまじめな表情でうなずいた。だが、それはすぐにかすかな笑みにとって代わる。


 「それに、俺はこれからいろんな人に会うことになるんだと思います。ついこの前までは、俺にとって知っている人しかいなかった。母さんとロウ爺、普段はほとんどこのふたりだけで、ほかには毎朝、牛乳を取りに来る人くらいでした。市の日や祭りの時には、街にチーズを売りに行くこともあったけど、お客さんとは結局その場限りで……。もちろん、毎回回に来てくれる人もいましたよ」


 ライモンはちょっと不安げな表情でフヨウを見やった。フヨウは軽く目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべる。


 「でも、やっぱり、その人がどんな人かはよく知りません。毎回買いに来てくれるから顔は覚えているし、話もするけど、どこに住んでいるのか、家族はどうなのか、仕事はなにをしてるのか、全然知りません。会話の中で、わかることもあるけど、深入りなんかしたことなかったんです」


 小さなため息がライモンの口から漏れる。


 「でも、これからはそうもいかなんでしょうね。モエギが来てから、俺、今までにあった人よりももっとたくさんの人に会った気がします。ここの街は、この辺では一番大きな街だけど、王都とは比べるまでもなく小さい街でしょうし。これからもっともっと、人に会って、関わっていくしかないんだと思うと……」


 そこで、ライモンは言葉をとぎらせた。フヨウはそっと言葉を重ねる。


 「思うと?」


 ライモンは小さく笑う。


 「そうですね。怖いとか、不安とかはやっぱりあります。そりゃ、そうですよね。知らない場所に行って、知らない人に会うんですから。でも、同時に、わくわくするものもあるんです。これからもっともっと、俺の世界は広がっていくんだと。知らないことを知っていくこともそうです。どんなことが起こるかわからないという不安と、広い世界を知りたいという思いと。いろんな思いがまぜこぜになってますけど、たぶん、ちょっとだけわくわくが勝っているんだと思います」


 そういうライモンに、フヨウは笑みを見せた。それにライモンは一瞬どきりとする。


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