第12章-15 フヨウとアカネ
「ライモン?」
その声に、三人は一斉に声のほうを振り返った。アカネが困ったようにフヨウとハシドイを見やっている。その後ろで、シラフジが妙な笑みを浮かべていた。
「こちらの皆さまはどなた?」
「あ、母さん……」
ライモンは母がいることをすっかり忘れていた。ちらりとフヨウを見やると、再び母のほうを向いた。
「えっと、こちらは姫……フヨウさまといって、その、なんだ、陛下のお嬢さんだ」
ライモンの紹介に応じて、フヨウはすっとアカネに向かって膝を折った。どこまでも優雅な仕草だった。
フヨウは顔を上げると、まっすぐにアカネを見つめた。
「はじめてお目にかかります、わたくし、フヨウ、現国王トキワの娘にございます。ライモンさまの母君にお会いでき、うれしゅうございます」
アカネはフヨウの礼儀正しい挨拶に、戸惑ったように笑みを返した。
「アカネと申します。姫さまにお会いできて、光栄です。ようこそ、このような牧場においでくださいました」
昔取った杵柄、だろうか。アカネはたどたどしいものの、ゆっくりとフヨウに膝を折る。それに対して、フヨウは軽く礼を返した。
「騎士たちは、私の護衛です。お気を使われませんように。あまり長くは滞在できません。行幸の一行に追いつかなくてはなりませんので」
「それは残念ですわ。あまりおもてなしもできませんが、ごゆっくりなさってくださいね」
「ありがとうございます」
ふたりは互いに微笑みあった。それから、フヨウはアカネの後ろにいる女性に声をかける。
「シラフジさま、こちらにいらしたのですね」
「フヨウさま、ごきげんよう」
シラフジは優雅に胸に手を当てて、優雅に一礼してみせた。それを見て、フヨウはふふ、と花が咲くように笑う。
「お見かけしないと思ったら。楽しんでいらっしゃるようですね」
「あら、そんな」
シラフジもまた、ふふふ、と笑う。
「お仕事ですよ、お仕事。私はちゃんと治療師として呼ばれておりましてよ」
「治療師?」
その言葉にハッとしたように、フヨウはライモンを見つめた。彼女と目があった瞬間、ライモンは彼女の想いに気づいて、慌てて首を振る。
「違う、違います。シラフジさまは母の治療に来てくださったんであって、俺の治療じゃないです」
フヨウはあからさまにほっとしたようだったが、すぐにアカネに向き直ると、心配そうに近寄り、その手を取った。
「アカネさま、どこかお悪いのですか? 外に出ても大事ないのですか?」
アカネは一瞬、驚いたような表情を浮かべたが、すぐにそれは笑みに代わる。取られた手に自分の手を重ねた。




