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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第12章

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第12章-12 約束

 手首に巻かれた縄から伸びた縄を持ち、騎士が先に立って歩きはじめる。


 「ご同行願います」


 アカガネはうなずくと、その後ろに従った。そして、アオヤギのそばを通り過ぎるとき、そっと、彼だけに聞こえるように、ささやく。


 「あとは、騎士団は任せたぞ」


 その言葉に、アオヤギの身体が一瞬、硬直したようだった。


 アカガネはふと足を止めた。アカガネと騎士をつないでいる縄がぴんと張ったが、騎士もまた咎めることもなく、足を止めた。アカガネは何事もなかったかのように、ライモンのほうに向きなおると、丁重に一礼した。


 呆気にとられたライモンは、反射的にそれにうなずき返す。


 と、その時。


 「ライモン」


 彼の名を呼ぶものがいた。誰しもがその声の主を見やる。アカネが静かに向かってくるところだった。不安げに、ライモンのまわりにいるものたちを見やりながら。その後ろに、当然のようにシラフジがいる。


 アカガネと彼のひもをつかんでいる騎士も足を止め、アカネを見やる。


 「ライモン、ずいぶんと大勢の人がいらっしゃるけど、お客さまなの?」


 アカネはゆっくりと、いぶかしむように周囲を見渡しながらライモンに近づいた。


 「母さん」


 ライモンもまた、戸惑ったように声をかける。アカネがどこまで知っているのか。ライモンはわかっていなかった。


 「こちらの方々は?」


 アカネはライモンに寄り添うようにして尋ねた。ゆっくりと見まわした先にアカガネを見つけ、知った顔にほっとしたように微笑みかけた。


 だが、その笑みが途中で凍り付く。彼の手首に縄が待かけているのに気づいたからだ。


 それを察して、だが、アカガネはそれを隠そうとはしなかった。アカネに向き直ると、そのまま丁重に一礼する。


 「お騒がせいたします、奥様。迎えが参りました。お世話になりましたこと、心より御礼申し上げます」


 アカネは驚いたようだったが、すぐにいつもの笑みが浮かべた。


 「いいえ、ライモンたちを手伝ってくださり、こちらこそ感謝いたします。ロウゼンが久々に知り合いに会い、話ができて嬉しそうでしたわ。またおいでください」


 手首の縄が枷だとわかっていただろうが、アカネは朝食の時と変わらない態度でアカガネに接した。

 また。


 それは再会の約束。


 もしかすると、アカガネには果たせぬ約束かもしれない。そうでなくとも、接点がほとんどない者同士が再び会えないことも少なくない。また、というのは儀礼的な物言いなのかもしれない。


 だが、その約束は、アカガネにとって一筋の光のように思えた。


 『また』が意味することろは未来だ。アカガネは、ややもすると、明日の命すら危うい立場だ。しかし、その言葉がもたらす希望はどれほどのものだったか。


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