第12章-11 覚悟
一同は、背筋に冷たいものが下りていくような心地がした。
特にハシドイは、フヨウを除くほかのものと違い、王都で常日頃から守護精の話を聞いている。
その中には、主を殺された守護精がどこまでも犯人と、命を下したものを追い、一族郎党もろとも復讐するというものも、含まれている。
目の前の次代はまだ少年のように見えるが、それでもまごうことなく宝剣の守護精なのである。おのれの主を害そうとしたものに、容赦するとは思えなかった。
ハシドイは、ごくりとつばを飲み込んだ。しかし。
「ですが、どのようにして見張っておられたのですか。四人をおひとりで見張るなど無理でしょう」
アオヤギが素朴な疑問を口にした。彼は、目の前の少年が次代だとわかっていても、その姿のままの少年としか見えないのだろう。
その言葉に、モエギはゆっくりと彼を見やる。
「私は、宝剣の守護精です。波動を操るものですよ。彼らがどこで何をしようと、私は手に取るようにわかります。万が一、逃げ出そうとしても、それを阻止することくらい、造作もないことです」
モエギは再び微笑んだ。だが、それはどこかアオヤギを拒絶する笑みにも見える。そんな笑みを、ライモンは見たことがなかった。
「し、失礼いたしました」
アオヤギは口ごもって一礼した。どこか、怯えたようでもある。
「守護精さまは波動師さまでもあられるのですね。存じ上げず、よしないことを申し上げました」
「このあたりには、あまり守護精についての話が伝わっていないのでしょう。気にしておりません」
モエギの言葉にアオヤギはうなずいて、アカガネに向き直る。
「ですが、我らは波動師ではございません。ただの人の子です。罪人に逃亡の恐れがある以上、拘束させていただきます」
「ああ、それが妥当だな」
アオヤギの硬い声に、アカガネはうなずいた。そうして、彼は両手をこぶしに握り、そのままアオヤギに向けて差し出した。覚悟はすでにできている。
覚悟ができていないのは、むしろアオヤギのほうだった。差し出された手を見ながら、どうすることもできずに、わずかに震えているかのようだった。
「アオヤギ、悩むことはない。おまえは私を連行するためにここに来たのだろう」
「……団長……」
アオヤギは一度だけ頭を振った。それから顔を上げて、まっすぐにアカガネを見つめた。
「アカガネさ……、いえ、アカガネ、フウ、ソウ、ゲン、次期さま襲撃の罪で、連行します。おとなしくついてきなさい」
アオヤギがそう言うと、アカガネはうなずいた。
領主館のものだと思われる騎士のひとりがアカガネに近づき、かすかに震える手で彼の手に縄をかける。かすかな声で誤っているようだった。それにアカガネは小さく首を振って応えた。




