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20.間欠泉

 女神さまの慌てふためく姿という、大変珍しいものを見ることができて目の保養になった。現在の彼女はいつもの穏やかな調子を取り戻しており、この世界がどういう環境かを俺にレクチャーしてくれている。



 『ここには目に見えるような生物はまだいないんですね』


 『はい。ですが間欠泉を中心として目に見えない生命が生まれて、その中から酸素を生み出す種が現れました。大海さんの話を参考にして、原初の地球と似たような環境を整えています』


 『参考にしてくれたんですね。ありがとうございます』



 過去には女神さまにせがまれて、地球の創世記みたいな話を何度もしている。彼女にとって非常に興味深い内容だったらしい。



 『大海さんに気に入っていただけたらと思って頑張りました。いかがですか?』



 女神さまはキラキラした純真なまなざしを俺に向けてくる。……女神さまに話した当時は軽い気持ちだったので、そんなに純真な目で見られると緊張してしまう。


 ただ、見渡す限り海ばかりでコメントに困ってしまうところはある。しょうがないので、彼女を悲しませないように当たり障りのない返事をすることにした。



 『こういう環境があることは知識としては知っていたんですが、実際に見るのは初めてです。興味深くて面白いですよ』


 『よかった……』



 女神さまは俺の返事を聞いて"ほっ"、と無い胸をなでおろす。俺も内心彼女をがっかりさせないかとヒヤヒヤしていたので、俺の反応に満足してくれてよかった。


 お互いに相手を楽しませたいと意気込んで空回りしそうになっている今の状況は、客観的に見ると少し面白いと思った。



 『間欠泉ってどんな感じなんだろう。原初の奴だからメチャクチャ勢いが凄いんですかね』


 『多分私たちから見たら大きくて凄いと感じるかもしれません。一緒に見に行ってみますか?』


 『あっ、はい。それじゃあせっかくですのでお願いしてもいいですか?』


 『はい。それでは体を覆っている膜のエネルギー増強をして、と……』



 女神さまは水晶玉を取り出して色々弄っている。



 『はい、これで水の中も大丈夫です。間欠泉のエネルギーは感知しているので案内しますね』


 『ありがとうございます。はぐれないように手を繋いでいきましょうか』


 『そうですね。それでは……』



 女神さまは俺の手をキュッ、と握る。膝枕は何度もしてもらったが、こうして手を繋いで歩くのは初めてかもしれない。


 なんだか妙に緊張してしまう。思わず女神さまの顔を見つめてしまったが、彼女は穏やかな微笑みを向けてくれる。


 途端に緊張が解けて平静に戻ることが出来た。



 『それじゃあ、出発しましょうか』


 『ええ、行きましょう』



 俺は女神さまと手を繋ぎ、水中探索へと繰り出した。

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