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14.白と緑

 女神さまの太ももの感触を頭に感じながら彼女の手が頭を撫でてくるのを堪能していた。物理的な刺激で思考が溶かされつつ、澄んだ声が耳から入りさらに思考を溶かしていく。



 『私、大海さんのことは結構早い段階から"あっ、いい人だな"って思ってたんです』


 『そうなんですか?早い段階っていうとどの辺りだろう』


 『大海さんがここの水に初めて寝ころんだ時ですね』


 『かなり早い段階ですね!?』



 出会って早々のことだ。その段階でいい人という評価をくだすのはやや早計な気もするが、女神さまは惚れっぽいのだろうか。一人だけで過ごしていたから人物評価が甘いのかもしれない。



 『私はあの時水に溶けて色々考えながら水の上の大海さんを眺めてたんですけど、あなたったら早々に水に寝転がっちゃうんですもの。それを見てたらなんだかおかしくなっちゃって、天気も私の心も晴れになったんです』



 懐かしい。あの時俺は俺で女神さまの心に思いを馳せていたのだが、女神さまから見たら面白い光景だったという訳か。まあ彼女に楽しんでもらえたのなら幸いだ。



 『あの時は女神さまと同じように寝っ転がって同じ気持ちになろうとしてたんですけど、楽しんでもらえたのならよかったです』


 『そうだったんですね。その後もいろいろお話を聞かせて貰って、最初は子供みたいに思ってたのが段々ドキドキするようになりました』



 女神さまと俺は価値観に差異はあれど、話をしてみておおまかなところは似ていると感じていた。俺がこの世界に来たのも"波長が合った"という奴かもしれない。



 『俺も女神さまとは波長が合うって感じてましたね。女神さまと話をする度に癒されてました』


 『嬉しいです。……そうこうしてるうちに私の中に……ええと……私とあなたの新しい世界が宿っていることに気が付いたんです……』



 女神さまは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに世界が出来た時のことを話してくれた。……なんだろう。彼女の反応を見ていると変な気持ちになる。


 初めに思った通り、やっぱり男女の営みを遠回しに言ったみたいなあれだろうか。そして直接的な表現をしないぶん逆にいやらしく感じるのは俺だけだろうか。



 『あの、人は男女がペアになって生活してると子供が出来るんです。女神さまにとって世界が出来るっていうのはそういう……?』


 『はっ、はい……』



 俺の問いかけに女神さまは真っ赤になってコクコクと頷いた。この話をしていてそう無垢な反応をされると尚更変な気分になってくる。


 そうこうしていると空を何かが飛んでくるのがわかった。白いのと緑のが飛来してくる。……白い方は鳥だろうか?白い中にも黒が混ざっていて、以前図鑑で見た"コウノトリ"のように見える。


 緑の方は丸いフォルムに鳥っぽい羽が生えているが……どう見てもその姿は"キャベツ"であった。



 『あの、女神さま。空を何かが飛んでるんですが……俺の世界では白い方がコウノトリで、緑の方をキャベツと呼んでるんですが……』


 『あっ、はい。大海さんの居た世界ではそういう名前なんですね。きっと新しい世界ができて、その上で私の気分が盛り上がったから飛んできたんだと思います。神の間ではそういう伝承があるんですよ。私は大海さんが初めての人なので、見るのは初めてでしたが……』


 『ええ……そうなんですか……?』



 新しい世界が出来たのを祝福するように空を征くコウノトリとキャベツ。あまりにもカオスな光景に困惑して気が抜けた返事になってしまう。


 俺は困惑しながらも、嬉しそうな照れ顔を見せる女神さまをとても愛らしいと思い見つめていた――。

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