佐木愛
二年S組、佐木愛。
彼女は宮間結斗と同じく中学受験で双見へ入学し、S組在籍歴は5年目となる美少女。
中学入学後、彼女に一目惚れして交際を求む男子生徒が数多くいたが、佐木は即断っている。
このお話は佐木愛を一時物語の主人公としてお送りします。
佐木の自宅から双見までは、最寄駅を利用して二駅。
しかし、佐木はある理由から早めに家を出て、双見へと通学している。
最寄駅のホームへ行くと、「佐木」と彼女の名を呼ぶ声が聞こえた。
振り返るとそこには、彼女と同じクラスの荒矢谷浩太の姿が。
彼は佐木と同じ小学校出身、そして中学受験で双見へ入学した男子生徒である。
「おはよう」
「おはよう。今日も早いわね」
最初に話しておくが、この二人は一緒に通学する約束をしていたわけではない。
彼女がいつも通りの時間帯に家を出て駅のホームへ行くと、なぜか彼がいるのだ。
「今日、小テストあるから。早く行って勉強しようと思って」
「…あ~そうだったわね。今日は小テストやる教科が2個あってしんどいなぁ~」
「佐木なら大丈夫だよ。この間の小テストもなんだかんだでクリアしてたじゃん」
「そんなことないわよっ。私、英語苦手なこと知ってるでしょ?本当にやばかったんだから」
「あははっ」
「もう笑いごとじゃないわよ」
「ごめんごめん」
こうして二人は仲良く一緒に同じ電車に乗り、双見へと通うのが日常。
しかし、佐木は荒矢谷と駅のホームで会う度に『なんでいつもいつもこの時間帯にホームに
いるのかしら?』と思っていた。だが、それは口にしない。
なぜなら……それは…。
彼女達が目的の駅へ降り、双見へ向かっていると、見覚えのある二人の男子生徒を見かけた。
「木崎。今日小テストがあるぞ?忘れてないだろうな?」
「えっ!?マジで?聞いてねぇーぞ!?」
「聞いてないのはお前だよ。しかも喜べ。今日は英語と歴史、1時間目と5時間目だ」
「うげぇ~~~~~なんだよ、その時間帯!授業の最初と飯食った後とかマジ最悪なんですけ
どぉ…」
「仕方ないだろ。この間の授業内容が急遽変更になって、小テストが二つ重なったんだから」
「あ~そう言えばそうだったな……くそぉ~めんどくせぇー小テスト」
「だからと言って手を抜くと、後が怖いぞ」
「ちっ。あーくそっ。結斗、英語と歴史のテスト範囲教えろ」
「やれやれ。一度しか言わないからよく聞けよ。英語のテスト範囲は……」
それは佐木と荒矢谷のクラスメイト、木崎文哉と宮間結斗の二人だった。
会話はあまり聞き取れていなかったが、話の内容は小テストのことと把握出来た。
佐木は彼らが話しているのを見て、「やっぱりあの二人仲良いわね」と思わず呟く。
それに対し、荒矢谷は「そうだね」と冷たい口調で返事を返すのであった。
その後、二教科の小テストの点数結果が6時間目終了後に返ってきた。
佐木は英語75点・歴史80点だった。
「良かった…50以上はとれたわ…」
「英語難しかったよね。僕もぎりぎりだったし」
荒矢谷は佐木に自分のテストを見せると、英語55点・歴史60点と確かにぎりぎりの点数。
その二人に対して、宮間と木崎はと言うと…。
「どうだ、結斗。俺様の実力、思い知ったか?」
「あぁ…お前にはいつも驚かされてばかりだよ」
木崎はまたしても即日勉強にも関わらず、二教科の小テストで満点を出したのだから。
ちなみに宮間は英語でミスをしてしまい、満点を採れなかったこともあってひどく落ち込んで
いた。
その落ち込む彼の姿を見て、佐木は『チャンスっ!』と目をキラキラと輝かせたのだった。
「宮間君」
「…佐木さん。何か用?」
「いや、用事はないんだけど…大丈夫?なんかさっき落ち込んでたみたいだったから、心配で」
「あぁ…そのことか。全然大丈夫だよ」
「そう?その、力になれないかもしれないけど…何か困ったことがあったら相談に乗るから。
無理しないでね」
「…ありがとう。もしそうなった時はすぐ佐木さんに相談するよ」
佐木は宮間からその言葉を聞いて、『よっしゃあー!!!!!!!』と心の中で大喜びした。
これで彼との距離が縮まれば…と、佐木の妄想は膨らんでいく。
「結斗~」
しかし、その妄想は強制終了させられ、佐木は現実の世界へ戻った。
木崎が宮間の名前を呼んだからだ。
「掃除終わったから行こうぜ」
「あぁ。…じゃあ、佐木さん。また明日」
「あっ…うん。また明日ね」
宮間は鞄を持ち、木崎と一緒に教室を出て行った。
佐木は二人の後を追って教室を出てみると、なぜか彼らはA組の教室へ入って行くのを目撃
する。
『A組の教室?…まさか!?』
佐木の女の勘が働く。
怪しまれないようにさりげなくA組教室の中を覗いてみると、木崎と宮間は一人の女子生徒と
親しそうに会話をしていた。
『嘘でしょ…。宮間君が私以外の女子と話している!?しかも、木崎君とも仲良しそう…』
彼女の中では木崎よりも宮間の方が重要。
それもそのはず。佐木愛は宮間結斗に好意を持っているのだから。
『それにしても、二人と喋ってる女の子…誰なんだろう…。気になる…』
その後、宮間達の会話を盗み聞きした結果、二人と仲良く話していた女子生徒の名前が櫻田柳
と判明。佐木は彼女を利用して、宮間との距離を縮める作戦を計画するのであった。




