帰って来た長男・岬
噂が完全に沈静化され、生徒の話題にも出なくなってから数日後。
櫻田家の長男・岬が家に帰ってくると連絡が入ったため、柳と真保は学校が終わってすぐに家へ
戻り、兄を迎える準備を整えた。
二人が帰宅してから約一時間後、岬が意気揚々と我が家へ帰って来た。
「柳、真保~お兄ちゃん帰って来たぞぉ~!」
「「おかえりなさい。岬お兄ちゃん」」
「ただいまっ。あ~いつ見ても俺の妹達は可愛いなぁ~…って、あれ?勇は?」
自分の天使(妹二人)に気を取られていた岬だったが、弟がいないことに気がついて我に返る。
「勇お兄ちゃんなら部屋で寝てるよ」
岬にそう教えたのは真保だった。
勇は本来なら兄と同じ大学生になる予定だったが、残念な結果に終わり今は浪人生。
二人が家へ帰った時、勇はまだ起きていた。
だが、『まだ戻ってこないだろう』と勇は自分の部屋に戻ってベッドで横になり、そのまま
寝てしまったらしい。
「ふーんー…そうか。あとで説教だな」
二人から話を聞いて、岬は勇に鉄槌をくだすことにした。
妹には優しいが、弟には全く容赦がない。
「それよりお兄ちゃん、なんで家に戻って来たんだ?」
二人はなぜ岬が帰省したのかを聞かされていない。
お盆ならまだしもまだ先の話で、帰ってくる理由が思い当らなかった。
そのため、真保が「もしかして、大学辞めちゃったの?」と勝手な想像を口に出してしまう。
「いやいや、大学は辞めてないから。久し振りに可愛い二人の妹との時間が欲しいなぁ~って
思って。忙しくなる前に」
岬は今年で大学三年生。
バイトもそうだが、そろそろ自分の将来のことを考えて行動する時期なのである。
「あぁ…そういうことか。大学生ってめんどうだな」
「その程度で面倒だって言ってると、いちいち切りがないぞ。それに柳はK大目指してるんじゃ
なかったっけ?」
「うっ…」
「確かに面倒な部分はあるけど、それでも自分で決めたんだ。これから先のことを考えて」
「岬お兄ちゃん、頭良いもんね。きっとお兄ちゃんならなれるよ」
「ありがとう、真保。お兄ちゃん、頑張るからっ」
「うん、頑張れ。お兄ちゃん」
真保は笑顔で答えるが、柳だけは無言だった。
「さぁ~て。二人のために、今日は俺がご飯作るぞ!二人が好きな物じゃんじゃん作るぞ」
話題を切り替えようと岬は自信満々で一人台所へと向かう。
それを真保が「えっ、いいよ」と止めるが、「遠慮するなlと岬は振り向きもせず前へ進んで
行く。
結局この日の晩御飯は、岬が作ることになった。
しかし、なぜか勇のご飯だけはスペシャルメニューとなり、彼の嫌いな物がご飯の上へ山盛りに
乗せられていたのだった。




