男子達の出会い(過去編)
語り手:宮間結斗
小学校低学年の頃、俺は周りの奴等と馴染めずいつも勉強ばかりしていた。
そのせいか他の男子から勉強の邪魔されたり、ぞうきんを投げられたりして遊ばれていた。
そして四年生のクラス替えで、あいつと同じクラスになった。
「お前、何いつも勉強ばっかしてんだよ。それより俺と一緒に遊ぼうぜ」
そう声を掛けてきたのが、木崎文哉だった。
何度も俺が『遊ばない』と言っても、奴はしつこく誘ってきては俺を引っ張って運動場へと連れて
行き、ボール投げ・鉄棒・サッカー・野球・ドロケー・キックベース・バスケと、さんざん振り回さ
れ、俺はくたくただった。
それで俺は言ったんだ。
「俺と遊ぶより、他の奴と遊んだ方がいいんじゃないか」と。
正直、勉強ばっかしている俺と遊んで楽しいはずがないと、昔の俺はそう思った。
「何言ってんだよ。俺はお前と遊びたいから、毎日誘ってたんだぞ?」
『変な奴だな』と、あいつはにこにこと笑って俺にそう言った。
俺はその時、奴に『変なのはお前だよ。バカ』と言ってやりたかった。
結局、俺は木崎と知り合ってからも勉強をやめることはなかったが、奴とは親しい仲にはなってい
た。
「ゆうと、あそぼーぜ」
「一人で遊んで来い。俺は勉強…「んなの授業始まってからでもやれるだろ。運動場行こうぜ!」
木崎は俺の意思を無視して袖を引っ張って来た。
「あぁ…分かった、分かったから、袖を引っ張るな!破れるだろっ!?」
俺がこんなんでも、俺を誘ってくれる。
仲良くしてくれることが何よりも嬉しかったくせに、未だに俺はこいつにずっと助けられてばかり
だった。
それなのに、俺は木崎に何もしてやれなかった。
あいつにあんなことが起きても…。
小学校卒業後、俺は中学受験に合格して私立校へと入学した。
そこで同じクラスになったのが…。
「宮間君っていうんだね。僕、畑本道久。よろしくね」
「…よろしく」
木崎とは真逆でほんわかとした少年。いや、女装をすれば恐らく本当に少女だと勘違いしそうな顔
立ちをしていた。だが、俺はこの男とは思えないほんわかした雰囲気を漂わせた彼に違和感を覚えた。
「ゆーと君って呼んでもいいかな?」
それは突然言われた。
「畑本君、まだ俺達初対面なんだよ?いくらクラスメイトでもそこは…「えっ、ダメなの?」
彼は俺に対してまるでうるうると涙が今にも出そうな悲しい顔をして俺の方を見ていた。
周りにじっと見られ、まるで俺が彼を泣かしたかのような目でこちらを注目されるとさすがの俺も
心が痛んだ。
「…分かった。呼んでいい」
「ほんと?やったー!??」
先程の涙が嘘のように、こいつは笑顔になった。
めんどくさい。
こいつとはかかわらないほうがよさそうだ。
「ねぇ、ゆーと君」
「なんだい、畑本…「僕の事は道久って呼んでね」
「いやっ、それはちょっと「だめなの?」
でたっ、と思いつつもまたあの作戦で…。
「…分かったよ。道久」
「わーい。やったー!」
はぁ、世話が焼ける。
まるで子供のお守をしている間隔に思えてしまう自分がいた。
それから俺は木崎のことを道久に紹介し、彼を巻き込ませた。
「こいつは畑本道久。俺のクラスメイトだ」
「よろしく」
「んで。こいつは木崎文哉。俺の小学時代の友人」
「おぅ」
「僕のことは道久って呼んでね。きー君」
「っ!?」
それは俺とは全く違うものだった。
俺の友人だと聞いて許してもらえるとでも思ったのだろう。
彼は木崎と初対面であるにも関わらず、「きー君」とあだ名で呼んだのだ。
「きーくん?やめろよその呼び方、気持ち悪い」
「えぇ、なんで可愛いじゃん。きー君」
「可愛くねぇし、むしろ恥ずかしいからマジやめろ」
木崎はもうぶちぎれる寸前だった。
だが、俺はそのことを道久に言わず、黙って見ていた。
「えぇーなんでなんでなんでなの?いいじゃんかー」
もはやこいつを止められない。
そして木崎はとうとう限界を超えたらしく「うるせぇ!くそチビ、きー君言うなっ!!」と、彼に
怒鳴った。それを聞いた彼は、「うぇええん!!きー君に怒られたー!!」と、俺に抱きついてきた。
俺は本気で『めんどくさい』と思った。
こいつの扱いは本気で大変で、しかも悲しませるとはるかに精神的ダメージをくらう。
なんとしてでもこれは阻止しなければならない。
こんなことは二度と起きてはならないと。
この時から、俺は道久を悲しませたりしないように心がけるようになった。
そんなこんなで中学の三年間を過ごし、俺は今年の四月に高等部へと進学した。
中高一貫だったため、エスカレーターでいけたのだ。
「おはよ、ゆーと君」
「おはよう」
「あれ、きー君は?」
「おいて行った」
木崎は高校受験をして、今年の四月から同じ学校に通うことになった。
一緒に行く約束をしていたが、待っていられず一人先に学校へと向かったのだ。
「えぇーひどーい。待ってあげたらよかったのに」
「そのうち走ってくるだろ」
「そーだね」
道久とそう話をしていると、あいつが全力ダッシュで俺達の元へやって来た。
「待て、結斗!!俺を置いて先にいくんじゃねぇよ―――!!」
「おっ、噂をすればなんとやらだな」
「きー君、おはよ「きー君いうなっ、つってんだろ!このくそチビが!」
「ひっどい、くそチビだなんてー」
「木崎、道久を悲しませるな。あとで面倒になる」
「俺のせいかよ!?」
高校からは木崎も加わって、新学期がどんなものかと少しだけ楽しみだった。
それをこいつらに話すことは、恐らくないが。
これから始まる出来事を予測するのは今の人類には難しいことだろう。
でもそれだから、今ここにあるものがあるのだと俺は思う。
今の俺に何が出来るかってことも分かるはず。
もしこれから、この先、俺の親しくしてくれる人に何か遭ったら…俺は何が出来るんだろうか。
今の俺にはまだ、その答えが見つかっていない。
あの時と同じように。
「結斗、なにぼけっとしてるんだよ。置いてくぞっ」
「ゆーと君、大丈夫?」
「…あぁ、悪い。なんでもない」
「なんだよそれ。変な奴だなぁ」
木崎が笑顔で俺にそう言った。
それを見て、『こいつが笑顔でいるうちは、まだそんなこと考えなくてもいいんじゃないか』と、
俺は本気でそう思ったんだ。




