2学期期末考査と蔵橋誠一の相談事
2学期最後の期末考査がいよいよせまってきた。
期末考査が終われば冬休みに入るわけだが、赤点を取ってしまえばクリスマスはお預けの補習行き
が決定されてしまうため、皆一生懸命テスト勉強に励んでいた。
「櫻田、ここの問題が分からん」
「どれ?…あぁ、これは…」
「宮間君、ここ教えてほしいんだけど」
「どこだ?」
「ここなんだけどね」
東間・稲井も参加してテスト勉強。家に帰った後も、櫻田は夕食の準備をして全ての用事を済ませ
るとすぐ部屋に戻ってテスト勉強を自分が納得するまで続けたのだった。
期末考査当日となり、櫻田は不安と戦いながらも必死に頑張った。
一日目は、英語・数学・家庭科。二日目は社会・自習・国語。三日目は音楽・保健体育・理科。
四日目は、美術・自習・技術と進み、長かった期末考査は無事に終了した。
「櫻田ぁ~」
「東間ぁ~」
「終わった。戦いは終わった」
「あぁ。終わったな」
四日目のHR終了後、櫻田と東間は熱いハグを交わした。
それを見ていた稲井と東間と一緒に来ていた畑本は、温かい目で二人を見ていたのだった。
それから数日後には全ての教科テストが返ってきて、放課後の少人数教室で櫻田と木崎が宮間に
チェックさせられる。
「…苦手な英語と数学がダメだな。他の教科と比べてかなり差がある」
「すっ、すみません…」
櫻田のテスト結果は、全教科70点以上の点数を取っていたが、英語と数学の点数を指摘されて
こっぴどく叱られてしまった。
そして、木崎の結果は全教科100点を取り、宮間にドヤ顔をしていたのだが…「この調子で3
学期の中間・期末も満点を取れそうだな」と、宮間に笑顔で言われてスルーされた。
稲井・畑本・東間のテスト結果は全員赤点なしで補習行きは回避されたことに、ほっとしていた。
だが、東間と畑本は赤点ギリギリの点数教科が多く、櫻田とはかなりの点数差。稲井は平均点クリア
でこの二人よりはよほど良い点数で「結構出来たな」と喜んでいたのだった。
櫻田が家に帰宅すると、蔵橋が玄関の前で仁王立ちして待っていた。
「なっ、なんだよ?」
「帰りが遅かったな。どこへ行っていた」
「勉強会だよ。次の…3学期の中間期末とかのテスト対策で学校に残ってた」
「お前が勉強…」
「それより今日の担当は金原だろ?なんで蔵橋がいるんだよ」
「金原はお前の妹の勉強を見てる。俺はお前に用があって来た…それだけだ」
「用って?」
櫻田は何のことかさっぱり分からなかった。
「言っただろ。あることで相談に乗れと」
「…あぁ、そんなこと言ってたな。今思い出したわ」
用があるだけでは分からなかったが、『相談』と聞いて思い出す櫻田。
玄関で靴を脱いだ後、二人は台所へと向かい、そこで話をすることにした。
「それで、相談って何だ?」
「その前にお前、12月24日が何の日か知ってるか?」
「…クリスマスだろ。そのぐらい知ってるよ」
「違う。12月24日はクリスマス・イヴ。お前が言うクリスマスは12月25日だ」
「あっ、そう」
櫻田にとってクリスマス・イヴもクリスマスもそんなに変わらないだろうと思っている。
蔵橋に24日と25日の違いを教えられても、全然興味が湧かなかった。
「で、そのクリスマス・イヴがどうしたんだよ?」
「…」
なぜかそこで蔵橋は黙り込んだ。
「もしかして、クリスマス・イヴに誰か誘うのか?」
「…あぁ」
蔵橋らしからぬ小さな返事だった。
恥ずかしいからか櫻田から目を逸らしており、頬も少し赤く染まっている。
それを見ていると櫻田も恥ずかしくなってきたが、それを言うと負けた気がするので本人には黙
っておくことにした。
「どこに行くか決まってるのか?」
「…決まっていない」
「遊園地とかどうだ?ほら、最近新しく出来た遊園地とか…「そこには夏に行った」
「はっ?」
櫻田は『蔵橋誠一が夏に遊園地に行った』という事実に驚いた。
はっきり言ってしまえば、信じられなかったのだ。
「なんだ、その反応は」
「いや、すまん」
櫻田は素直に謝罪した。
「そうか、遊園地に行ったとなるとダメだな。それだったら動物園とかどうだ?」
「却下」
「相手が女子で動物好きなら好感度上がると思うぞ。僕も動物は好きだし…なんだったら水族館
とかでも良いんじゃないか?イルカとかペンギンとか可愛いぞ」
「…」
「白鷺沢の水族館が一番近い。確かそこの近くにショッピングモールがあって、
中には映画館があったはずだから、お昼はそこで昼食とって映画を見て帰るっていうのも良いんじ
ゃないか?」
「…」
その後、蔵橋は「参考になった」と言って櫻田家を出た。
だがこれは蔵橋にとって精一杯の感謝の気持ちを表しており、素直に「ありがとう」と言えなか
った結果である。
それを知らない櫻田は蔵橋を見送った後、「何なんだよ、あいつ」とますます蔵橋のことが嫌い
になったのだった。




