東間と茅野瀬
櫻田が宮間と話している頃、東間は茅野瀬家に遊びに来ていた。
「なぁ~力~」
「なんですか?今勉強してるんで邪魔しないでもらえます?」
「んな冷たいこと言うなって~」
茅野瀬力は櫻田の妹の真保と同じ中学校に通う三年生。
高校受験のため、休みの日は一人受験勉強をしているのだが…東間が彼の家によく遊びに来るので
あまり集中出来ずに困っていた。
「先輩、遊びたいなら櫻田先輩と一緒にどこか出かけたらどうです?」
「えぇ~だってお前んちすぐ目の前じゃん。櫻田の家よりもすぐじゃんかぁ~」
「…でも俺、受験生だし。去年先輩達が受験だった時、俺邪魔しないようにしてましたよね?」
「そうだったっけ?忘れちゃったよ、もう」
「あっ…そうですか」
聞くんじゃなかった。と茅野瀬は後悔した。
「分かったよ。私が邪魔だって言うなら櫻田んちに行ってやるよ」と東間はケータイを取り出して
櫻田に電話を掛けようとする。
「そうしてくれると助かります」
良かった。これで勉強に集中出来る。と茅野瀬は思っていたのだが…。
「あっ、もしもし櫻田?今、家にいる?」
『あぁ…いるけど?』
「そっかそっか。実は私、力の家にいるんだけどさ~勉強の邪魔だって言われちまって」
それを櫻田は深いため息をついた。まさかと思っていたことを彼女は本当にしていたからだ。
いくら茅野瀬と仲が良いからといって、受験勉強の邪魔をしていたらさすがに嫌われると思わない
のだろうか…ますます心配になってくる櫻田。だがあえて口には出さなかった。
『ふーんー…それで?』
「お前んち今から行っても良い?力も一緒に」
「はぁ!?」
『えっ?力君も連れてくのか?』
「お前、宮間君に勉強教えてもらって頭良いじゃん。だから余裕っしょ?」
『ちょっと待て。何さりげなく僕に家庭教師を押し付けてんだよ、お前はっ!?』
いくら宮間に勉強を教えてもらっているとはいえ、櫻田に勉強を教えるというスキルは全くない。
むしろ皆無に等しかった。それは東間も例外ではない。
『おい。どうしたんだ?櫻田』
「「っ!?」」
するとケータイから男性の声が聞えてきて、東間と茅野瀬は同時に反応した。もちろん、その声が
誰のものなのかも把握して…。
『あっ、いや…東間から電話で。力君と一緒にこれから僕の家に行きたいって…』
『なんだ。そんなことで騒いでいたのか、お前は?』
『いや、だって…「あの~」
『ん?何だよ?』
「ごめん。やっぱいいわっ。その……邪魔してごめんなさいっ!」と東間は櫻田との電話を切ってし
まう。
「はぁ…櫻田が」
「東間先輩?」
「あの櫻田が…とうとうリア充になってしまった」と東間は深く落ち込んだ。
それを見て茅野瀬は…「いや。東間先輩も…ある意味リア充じゃないですか」と聞き取れないぐらい
の小さな声で突っ込みを入れたのであった。




