宮間家
「櫻田」
「えっ、あっ…結斗君。移動教室?」
櫻田は宮間が持つ教科書を見て尋ねる。
「あぁ。これから向かうところだ」
「そっか。じゃあまた放課後」
もうすぐ授業が始まるし長く引き留めるのは迷惑だろうと思い、櫻田は自分の教室へと戻ろうと
する。だが宮間はまだ何か用事があるのか「待て」と彼女の腕を掴む。
「なっ、何か?」
「ちょうど良いからお前に渡しておく。うちで飼っている猫の写真だ」
「おぉ~可愛いっ!もらっていいの?」
「そうでなければ、わざわざ写真にして手渡すわけないだろ」
「ありがとうございます!…あぁ~可愛いなぁ~」
会いたいなぁ~と櫻田が言うと宮間はそれを聞いて「…なんなら、家に来るか?」と彼女に
聞く。
「えっ?!」
「勉強ついでに」
「………写真で我慢します」
「おい、そこは『行きます』って言うところだろうが。空気を読め」
と、言うわけで今度の休みの日に宮間家にお邪魔することになった。
「…ここ、だよね?」
大きな家に『宮間』としっかり表札が書かれてあるし、間違いないとは思うが初めて訪問するので
緊張する櫻田。するとガチャンと扉が開かれて「何をしている。さっさと入れ」と宮間が顔を出す。
それを見た櫻田は驚いたが、急いで家の中へと入って行ったのである。
「おっ、お邪魔します」
「ちゃんと靴は揃えておけ」
「…はい」
まるでマナー教室に来たような感覚だった。靴をきちんと揃えると、リビングから彼の母親が現れる。
「いらっしゃい。あなたが櫻田さんね」
「あっ、はい!初めまして…櫻田柳と申しますっ」
「虎二郎に会いに来てくれたんですよ」
「あら、そうなの?私はてっきり結斗君に会いに来たのかと」
「えっ…あの…「お母さん、からかうのはやめてください」
「はーい。櫻田さん、ゆっくりしていってくださいね」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「…俺の部屋は二階だ。虎二郎もそこにいる」
「あっ、うん」
そして宮間の部屋へ着くと「にゃ~にゃ~」と猫の鳴き声が聴こえてくる。
「ここが俺の部屋だ」
ガチャン。
「にゃ~」
扉が開いた途端、足にすり寄ってくる可愛らしい子猫。それを見た櫻田は「…結斗君、抱っこしても
いいですか?」と尋ねる。
「好きにすればいい」と宮間の許可を得たところで櫻田は虎二郎を抱っこする。
「…可愛い。ふわふわっ~あっ、少し大きくなったかな?」
写真で見るよりやっぱり実物の方が可愛い~と自分の世界に入っていると宮間が現実世界に彼女を
引き戻す。
「櫻田、虎二郎に会えて嬉しいのは分かるが…ここに来た本当の目的を忘れてないだろうな?」
「っ!?…もっ、もちろんですとも…宮間君」
「また元に戻ってるぞ。虎二郎となら休憩の際にでも触れられるだろ?」
「そうだね…うん。じゃあそれを励みに頑張るよ」
そして約二時間後。
「…虎二郎、おいでー」
「にゃ~」
「あぁ~可愛い。癒されるぅ~」
「櫻田。段々とお前、キャラが変わってきてるぞ?」
頭は大丈夫か?と宮間が言うと櫻田は少しグサッとくるがそれでもお構いなしに虎二郎を抱っこし
てすりすりとする。すっかり虎二郎の虜となり自然と笑顔になっている彼女を見て、宮間は少し
笑みを浮かべたのであった。




