虎二郎
「ねぇねぇ、いいでしょ?見に行っても」
「あぁ。そのうちにな」
「えぇ~なんでなんで?」
宮間の家で飼っている子猫を見に行きたいと、何度も彼に頼む畑本。だが全然「良い」とは言わない。
その理由を聞いても「とにかく、そのうちな」としか返事が返ってこなかった。
「良いじゃねぇか。こんなにうるさく頼んでんだから一回ぐらい」
「木崎。お前…あの事件のこと忘れたのか?」
「いや。忘れてねぇけど…でも「それなら、俺の気持ち…分かるよな?」
「二人共、何のお話してるの?」
「勉強会のことだ。気にしなくていい」と宮間は彼に嘘を付いて誤魔化す。
「ふーんーそっか」
「それか写真を撮って送ったらどう?家に行けないならさ~」と話を聞いていた東間が言う。
「最近ペットの写真を何枚も撮ってブログに乗せたりしてる人多いって聞くしな」と隣にいた櫻田
も参加する。
「それだと、余計にこいつは家に行きたいと言い出す。却下だ」
「厳しいねぇ~宮間君」
「こいつは昔からそうだからな~」
「へぇ~そうなんだ」
「その話は良いだろ。ほら、さっさと始めるぞ」
「へいへい~」
ここからは櫻田達の知らない話。いつものように勉強会を終えて宮間が帰宅すると、母親が急いで
バタバタとやって来た。
「おかえりなさい」
「ただいま戻りました」
にゃ~。と二階から猫の鳴き声が聞こえて、二人は声の主に注目する。
「ずっとあなたを探してたのよ。もうすっかり懐いてるわね」
「そうですね」と話している間に虎二郎が宮間の近くまでやって来たので、彼は鞄を母親に託し
虎二郎を優しくそっと抱っこする。
「ただいま、虎二郎」
良い子にしてたか?と宮間が聞くと、それに答えるかのように「にゃ~」と鳴いたので、彼は
自然に笑みがこぼれる。
これは彼の母以外は誰も知らない。虎二郎にしか見せない宮間結斗の姿である。
にゃぁ~。




