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僕のキャラが崩壊します!!  作者: さくら
Ⅱ・学力テスト+宮間家訪問
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雨と子猫

 それは、とある雨の日のことだった。

 「ふぁ~あ。今日も学校か…眠い」

 いつものように、稲井は眠そうに学校へ向かっていると…。

 

 ニャ~。

 「ん?」

 ニャ~…ニャ~…。

 猫の鳴き声が聞こえてきたので、気になって声がする方へと歩いてみる。

 そこは細い道だったが、段々鳴き声が先程よりも良く聞こえてきて見てみるとそこには…段ボールに

 小さな子猫達が。

 

 

 雨の日は大抵の人間が嫌いであろう。櫻田もその中の一人。だが学校に行かないわけにも行かないの

 で仕方なく傘を差し、こうして登校して来たのだが…。

 「櫻田さん、おはよう」

 「あぁ、おは…えっ!?」

 櫻田は稲井を見て、思わず立ち上がった。なぜなら彼は身体全体がびっしゃびしゃに濡れていたから

 である。


 「どどどっ、どうしたの稲井君?ひょっとしてこの雨の中、傘を差さずに来たの?」

 「あぁ…うん。途中から」

 「とっ、とりあえずこれで髪を拭いて!」

 「ありがとう」


 とは言うものの櫻田は運動部に所属しているわけでもないので、持っていた自分のハンカチを応急

 処置として彼に渡す。周りは「ハンカチって…」と思うが、稲井はその気持ちだけでも有り難かった。


 「でも、制服はどうにもならないなぁ…」

 「大丈夫だよ。すぐ乾くと思うから」

 「今日は体育の授業ないしなぁ…」

 「櫻田さん、俺は大丈夫だからそこまでしなくてもいいって」

 「はぁ…役立たずでごめんなさい」

 「いや櫻田さん、落ち込まないで。ねっ?」

 

 だが、そんな二人の会話を聞いていたクラスの男子が、隣のクラスからわざわざ体操着を借りてきて

 稲井に渡してくれたのだ。


 「えっ、いいの?」

 「隣のクラスからだけどな。乾くまでそれ着とけよ」

 「あっ…ありがとう」

 「じゃあな」とすぐに二人から離れて行った。


 「…解決?」

 「そうだね。解決したね」

 と、そういうわけで制服が乾くまで稲井は体操着を着て授業を受けたのである。


 そして放課後…。

 「すみません。すぐ戻ってくるので先に勉強会をやっててください」

 「はぁ?なんで?」

 「実はですね。稲井君が…クラスメイトの男の子が子猫を見つけたということでそれを見に行こう

  と思いまして…」

 「猫?」

 「で。お前の後ろにいるのが稲井君ってわけか?」

 

 「はい。同じクラスの稲井秀太郎君です」

 「どっ…どうも初めまして」

 「あれ、しゅうちゃん?どうしたの?」

 「あっ…こんにちは。道久君」

 

 「道久、彼を知ってるのか?」

 「知ってるよ。この間、30cm定規貸してくれたんだ」

 「今日は数学のワークだったけどね」と櫻田が付け足す。すると…


 「そうか…1年S組の宮間結斗です。初めまして」

 「あっ、どうも」

 宮間は稲井に握手を求めた。断る理由もないので稲井は彼の手を握り握手を交わす。

 会社の取引が成立したかのような光景である。

 「道久が大変お世話になっているようで、どうかこれからも彼と仲良くしてあげてください」

 「あぁ…はい」

 

 「これはいったい…」

 どういうことなのかと疑問に思っていた櫻田に木崎が答える。

 「道久はよく忘れ物をすると、いつも決まって結斗の所に来て教科書を貸りに来てたんだ。だけど

  稲井が道久に貸すことで、結斗はあいつに貸すことはなくなった」

 「あぁ…だからあんなに」


 今まで見たことがない笑顔で稲井に話しかけているのはそのせい。よほど苦労したに違いない。

 

 「櫻田」

 「はっ、はい!」 

 「でかしたぞ。良い人材を連れてきてくれた」と耳元で小さな声でささやかれた。

 別にあなたのために連れて来たわけではないのだが、宮間がある意味助かったことは事実なので

 櫻田はただ「はい」と答えるしかなかった。


 

 「それで、子猫を見つけたと聞いたが…」

 「今日の朝登校する時に見つけたんだ。雨が降ってるし、このままだと風邪引くかなって思って…

  自分が持って傘を置いて行ったんだ」

 「稲井君、君が風邪引いちゃうよ?」

 「でもほっとけなくて…」


 「なるほど。じゃあ全員で行ってみるか」

 「「えっ?」」

 「ゆーと君どうしたの?珍しいね?」

 「道久がお世話になってるんだ。これぐらいは当然だろ?」


 あっ…そういうこと。


 「こんにっちは~ってあれ?今日は稲井君もいるんだね?」

 「東間。ちょうど良かった。これから皆で子猫見に行くんだが、お前も行くか?」

 「えっ?子猫?…なんかよく分かんないけど行く!」

 「よし。じゃあ行きましょう」


 

 「「可愛い~」」←東間・畑本

 「こんなにかわいいのに、いったい誰がすてちゃったの?」

 「まだ生まれたばっかりだよ。この可愛さ」

 「傘を差してたとはいえ、とりあえず動物病院に連れてった方が…。この辺りにあるのかな?」

 「今、結斗が調べて…「あったぞ」

 「って、早いなっ!で、どこにあるんだ?遠いのか?」

 「少し歩くことになるな。とりあえず木崎、その猫達を持て」

 「えっ?俺が持つの?」

 「まだ生まれて間もない子猫だ。噛みつきやしない」

 「いや、そんな問題じゃ…「とにかくお前が持て。早くしないと日が暮れる」

 「あっ…はい」


 だが少しどころではなくかなり遠い道のりだった。それでもなんとか無事に動物病院に辿り着き、

 獣医の先生に子猫達を診察してもらった。

 

 「少し弱ってるけど大丈夫そうだね」と子猫達を一匹一匹見ながら先生は言う。

 まだ自分で体温調整が出来ないらしく、稲井が持っていた傘を置いて行ったことで子猫の命は助かっ

 たようだ。そして肝心の診察代をどうしようかと悩んでいた五人だったが、「俺が払う」と宮間が支

 払ってくれたのでほっと一安心する。

 

 「それでお前達、子猫を病院に連れてったのは良いが…どうするつもりなんだ?」

 「あっ…」

 

 そこまで櫻田達は考えていなかった。


 「やれやれ。仕方ない奴らだ…」

 

 結局、子猫達は宮間が家に連れて帰った。それからどうやってかは分からないが子猫達の里親を募集

 して引き取られ、残った一匹を彼の家で飼うことになった。


 「とらちゃんにしましょう」

 「なぜ、とらなのですか?もっと他に良い名前があるでしょう?」

 「良いじゃない。可愛いし」

 「まぁこの猫はオスですし…お母さんが良いなら「とら」にしましょう」

 「あっ、待って。うーん…あっ、「虎二郎」っていうのはどう?」

 「とらじろう?なぜ虎二郎に?」

 「こっちの方がかっこいいからよ」

 「あっ…そうですか。では、虎二郎にしましょう」

 

 母との会話は疲れる。


 にゃ~。


 

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