⑦白の王子と黒の騎士
読んでいただき、ありがとうございます。ドレイクの友人登場回です。
マイケルの浮気が発覚した翌日、ドレイクは友人の家にいた。
一応先ぶれはだしたものの、今は朝食が終わるかどうかという時間帯。
そんなに早く行ってもお相手が困るのでは、とセバスチャンには止められたが、どうせ腹が立って寝ていられないのだから仕方がない。
通された応接室には顔見知りのメイドがいて、ドレイクを見るなり、軽食を出してくれた。
父親同士の仲が良く、昔から交流があるこの邸は、ドレイクにとっても居心地がいい。
この家の友人は、幼いころはクタクタになるまで遊んで、一緒に眠ることもあった竹馬の友である。
古参の使用人からはいまだに「ドレイク坊ちゃん」と呼ばれている。いい歳なので、ちょっと恥ずかしい。
けれど、好意的な態度を向けられていることが分かるので、甘んじて受けるドレイクである。
(シンプルだけれど丁寧につくられたサンドイッチはやはり美味しいな)
供されたシェフ特製のタマゴサンドとハンバーグサンドを味わいながら友人を待っていると、軽い足音が近づいてきた。
「あ、お邪魔しているぞ」
待ち人来る。
扉が開くと同時に友人と目が合う。知的な蒼の瞳は、サンドイッチを遠慮なくパクつく幼なじみを確認して優しく緩んだ。
「久しぶりだな、ドレイク。朝早くから何事かと驚いたが……なんだ、思ったより元気そうじゃないか」
「うん。ペギーにお茶を淹れてもらってゆったりしていた」
「お前の訪問は、いつも急だな」
苦笑するこの男は、セドリック・グレンダリス。
頭脳明晰、容姿端麗、剣の腕も名高く人望もある。天からいくつもの才能を与えられたハイスペック優男で、グレンダリス公爵家嫡男である。
学生時代、ドレイクは「騎士科」でセドリックは「領主科」とコースこそ違ったが、お互い飛び級して空き時間もあったため、一緒に行動することは多かった。
護衛のアルバイトを一緒にしたり町の食堂に大食いチャレンジに出かけたり。
貴族男子の看板を隠して無茶なチャレンジも結構した。
要するに「悪友」ってやつだ。
二人の隠れファンは多く、ひそかに「白の王子と黒の騎士」と呼ばれていたらしい。
セドリックは白金髪の蒼眼、ドレイクは黒髪黒目。あだ名の由来は、まあ、そういうことだ。
「それで、頼みたいこととは何だ」
「セドリック! お前は話が早くて好きだ!」
瞳を輝かせ暑苦しい友情を示してくる友人を適当にいなし、セドリックは話の先を促す。
「家庭教師という名目で、信頼できるお目付け役を紹介して欲しいんだ」
「詳しい事情を聞いても?」
「トルライド伯爵様から、俺の友人であれば事情を話しても構わないと言われてはいるが、他言無用に願えるか?」
「承知した」
ドレイクはグレイスが、実母からしつけと称した虐待を受けていた可能性があること、使用人の中にそれに加担する者や不正に関与した疑いのある者がいること、自分が専属として仕えているグレイスがマイケルの浮気をきっかけに婚約解消の意志があることなどを、順を追って話していった。
「ご令嬢と婚約者のとりもちをしたのが当主夫人だということだが……あそこの奥方は元侯爵令嬢だったよな? 一人息子の現伯爵に一目ぼれして嫁いだわりには、夫婦仲は冷え切っていて、夫人は夜な夜な遊び歩いているという噂を耳にするぞ」
「あー、それな。俺も夜番のときに酔ってくだを巻いているところをみたことあるんだ。やっぱりそうか」
「しかも、夫人はマイケルを連れているようだぞ」
「はあ⁉ どういうことだ」
まあ、落ち着けといなされて、思わず立ち上がったドレイクはしぶしぶ座りなおす。
「あの奥方は『娘は病弱なうえに恥ずかしがりでまともにしゃべれない』と周囲にもらしていたらしい。だから自分が代わりに将来の婿殿を連れて夜会に出席しているんだそうだ」
「まったくの事実無根だ!」
苛立たし気にテーブルを拳で叩く友に、セドリックはうなずく。
「お前の怒り様を見れば嘘だと分かる。ただ、俺はてっきりそのことが原因で婚約解消だか破棄だかの話になっているのかと思っていたが、別の理由があるのだな?」
大きくうなずいたドレイクは、昨日のマイケル裸事件について怒涛の勢いで話し始めたのだった。
別作品で同日に短編をアップする予定です。そちらは結婚してできた義理の娘が・・・的な話。そちらもぜひ!




