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『俺、ラノベの真似して勉強してるだけなんですけど、なんで東大判定出てるんですか?』  作者: さらん
第三部:三年生

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■第20話 「講義」という名の羅針盤

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


 神田先生から授けられた「出題者との対話」という視点。しかし、それは決して、自分たちの思い込みで勝手な物語を想像することではない。独りよがりの解釈に陥らないための確かな「指標」が必要だった。


 その羅針盤となったのは、これまで当たり前のように受けていた、予備校の講義だった。


「……ねえ、陽太。今まで私、講義って『解き方』を教えてもらう場所だと思ってた」


 蒸し暑い初夏の放課後、涼子が講義ノートを広げながら、何かに打たれたような顔で言った。


「でも、今日の現代文の講義を受けて、考えが変わったわ。先生がホワイトボードに書いたあの複雑な矢印の図……。あれって、ただの整理じゃなくて、出題者が文章を組み立てる時の『設計図』そのものだったんだね」


 俺は彼女の言葉に、強く頷いた。

 これまでの俺たちは、自分の「読解力」という一本の武器だけで突破することにこだわりすぎていたのかもしれない。だが、予備校の第一線で戦う講師たちが、何十年分もの過去問を分析して作り上げた講義には、出題者が仕掛ける「罠」や、逆に「救いの手」として差し出されるヒントの法則性が、恐ろしいほどの純度で凝縮されていた。


「俺もだよ。今日の物理の講義、あんなに難しい微分積分が出てくるなんて思わなかったけど……。先生の解説を聞いていたら、出題者が『なぜこの一文を問題の冒頭に置いたのか』という理由が、物理の法則と繋がって、パズルのピースが埋まるみたいに分かったんだ」


 予備校が提供する高度なテクニックや体系的な知識。それは決して「無駄な講義」などではなかった。むしろ、俺たちが自力で辿り着こうとしていた「出題者との対話」を、より正確に、より深く、そして圧倒的なスピードで行うための最強のブースターだったのだ。


 俺たちは、講義の受け方を根本から変えた。

 ただ黒板を写すのをやめた。講師が何気なく漏らす「ここは受験生がよく読み飛ばすところだ」という言葉を、出題者が仕掛ける「ふるい」の正体として、必死にメモに書き留めた。


「陽太、見て。昨日習った『設問間の関連性』の読み方を意識して昨日の模試を解き直してみたら、あんなに迷っていた選択肢の絞り込みが、ものの数分で終わっちゃった……」


 涼子の瞳には、焦りではなく、新しい力を手に入れた高揚感が宿っていた。


 自分たちの「地道な解読」という土台に、プロが洗練させた「視点」という骨組みが組み合わさる。それは、霧の中で闇雲に走っていた俺たちの手に、最新鋭のサーチライトが握られたような感覚だった。


 そんな俺たちの様子を、ラウンジのソファに座るあのブルジョワ層たちが、少しだけ怪訝そうに眺めていた。


 彼らは今も、会員制のサイトから流れてくる「最新の的中予想」をタブレットで確認し合っている。だが、今の俺は、もう彼らの持つ情報を「ズルい」とは思わなかった。


(あいつらは、完成された『地図』を買っている。でも俺たちは、この講義という名の『測量術』を学んで、自分たちの足で最強の地図を描き上げているんだ)

 自分の頭で考えることを絶対に諦めず、同時に先人の知恵を誰よりも貪欲に吸収する。


 プライドを捨てて学び、学んだことを即座に自分の武器に変換する。その凄まじいまでの「学習効率」こそが、今の俺たちが辿り着いた、逆転のための唯一の方法だった。


「涼子、明日の数学の講義、一番前の席を取るぞ。先生がボソッと言う『作問者のこだわり』を、一言も漏らさず拾い上げるんだ」

「了解っ! 私も、経済の視点から出題者の意図をぶち抜く技術、もっともっと自分のものにしてみせるわ」


 三年生の夏。

 自習室の空気は、熱気と、そしてこれまでにない研ぎ澄まされた静寂に包まれていた。


 俺たちのペンは、講義で得た確かな確信を糧に、未来という名の難問を、より速く、より正確に、一文字ずつ解き明かし始めていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、

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それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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