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『俺、ラノベの真似して勉強してるだけなんですけど、なんで東大判定出てるんですか?』  作者: さらん
第二部:二年生

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■第14話 「正解」という名の既製品と、最強のバックアップ

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


 上位クラスのラウンジで、あの男子生徒が再び俺たちを呼び止めた。その手には、タブレット端末が握られている。


「高橋くん、昨日言ってたこと、あれから気になっててね。……君たち、本当に『良い情報の買い方』を知らないだけなんじゃないかと思って」


 彼は、俺たちが何か致命的な勘違いをしているのを正してあげようとする、教師のような慈悲深い顔で画面をこちらに向けた。


「例えば、これを見てよ。前回の模試の二週間前に、僕たちが使っている会員制サイトで配信された予想トピックだ。……ほら、ここ。第5問の物理のグラフ、設定数値以外はほぼ一致しているだろ?」


 画面には、模試の問題をさらに詳しく解説したような、完璧な「ネタバレ」が記載されていた。


「これさえ読んでおけば、あの複雑なグラフも『あ、あのパターンのやつだ』って数秒で理解できる。君たちが何時間もかけて泥臭く解読した苦労を、僕たちはこの数ページを読むだけでショートカットしたんだ。……招待してあげようか? 君たちのそのポテンシャル、もっと効率的な方向に使えばいいのに」


 彼が提示した「情報の的中率」という動かぬ証拠。それは、俺たちが一年間かけて積み上げてきた「自分の頭で考える努力」を、根底から否定するほどの破壊力を持っていた。


「……ありがとう。親と、相談してみる」


 俺の声は、自分でも驚くほど弱々しく震えていた。

 自習室に戻っても、二人のペンは動かなかった。


「……ねえ、陽太。私たち、何のためにこんなに苦労してるのかな」


 涼子が、伏せっていた顔を上げた。その瞳は不安に揺れている。


「あいつらが数分で手に入れる情報を、私たちは何日もかけて必死に追いかけてる。……それって、ただの遠回りだったのかな……」


 答えは出なかった。

 そんな時だった。


「――お前たち、最近、質問に来る頻度がガタ落ちだな」


 不意に、背後から低く、聞き慣れた声が響いた。


 振り返ると、そこにはコーヒーカップを手にした数学の神田先生が立っていた。鋭い眼鏡の奥の瞳が、俺たちの動揺を完全に見透かしている。


「神田、先生……」

「……少し、面を貸せ。その死んだような顔を講師室で見せられるのは、コーヒーがまずくなるんでな」


 ***


 夜の講師室。神田先生は、俺たちがラウンジで言われた一部始終を黙って聞いた。

 そして、ふっと鼻で笑った。


「なるほど。『情報の的中』か。……確かにあいつらの言うことは、短期的には正しい。一回きりのギャンブルで勝つのなら、既製品の情報を買うのが一番手っ取り早いからな」


 先生は、俺たちがボロボロになるまで使い込んできた、過去問のノートを指差した。


「だがな、高橋、水野。お前たちがこの一年半で培ってきたのは、『情報』じゃない。……『知性』そのものだ」

「知性……ですか?」

「そうだ。あいつらが買っているのは、誰かが噛み砕いて流動食にした『答え』だ。それに対し、お前たちは硬い殻を、自分の頭という牙で噛み砕く力を鍛えてきた。……いいか、東大の教授は、毎年『情報の的中』を最も嫌っている連中だ。奴らは、あいつらが買ったような既製品の知識が一切通用しない、本質的な思考力を問う『新傾向』を必ず仕込んでくる」


 神田先生は、俺たちのノートの余白に、荒々しく数式を一つ書いた。


「的中が外れた時、あいつらはその場でフリーズする。道を作る方法を知らないからだ。だが、お前たちは違う。道がなければ、その場で切り拓けばいい。……お前たちが積み上げた泥臭い遠回りは、本番環境で予想外の事態が起きた時、最後に自分を支える最強の『バックアップ』になるんだよ」


 先生の言葉が、冷え切っていた俺の胸に熱い火を灯した。


「先生、ありがとうございました。……俺たち、やっぱり自分の足で走ります」

「……ふん。分かればいい。さっさと自習室に戻れ。お前たちのそのボロボロのノートの続きを、俺は楽しみにしてるんだからな」


 講師室を出た夜の廊下。俺と涼子は、どちらからともなく笑い出した。


「……陽太、今の先生、めっちゃカッコよかったね」

「ああ。……あいつらの招待状、やっぱり破り捨ててやる。俺たちの『自力の読解』、もっと磨き上げて、本番でアイツらの予想を全部ひっくり返してやろうぜ」


 迷いは、もう消えていた。最強の大人の助言というバックアップを得て、俺たちのサクセス・ロジックは、より強固にアップデートされた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、

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それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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