冒険者と戦闘開始
「静まれ!!」
ギルドマスターは開口一番に大声で周りを落ち着かせた。
今の一言でどこか不安からかソワソワしていた冒険者たちも話しを聞く体勢になり始めた。
「ギルドマスターのゴルドーだ! 緊急クエストを発令する! 北側からキングゴブリンと大量のゴブリンがやってくる! Dランク以上の冒険者はこの街を守るためにも全員出撃してくれ!」
どうやらキングゴブリンと大量のゴブリンが攻めてくるようだ。
ゴブリンなんて狩っても経験値的においしく無さそうだしキングゴブリンを討伐したいかな。
「おいどうするんだよ! 今この街にはAランクパーティーはいないんだぞ!」
「漆黒の流星は昨日から依頼で街を出たばっかりだし、他のパーティーもちょうど今はいない!」
「Bランクの奴らも半分は出払っているはずだ!」
どうやら運悪くAランクパーティーが出払っているらしく、Bランクの人間も半分がいないみたいでギルドが騒がしくなっている。
まぁ、此処にいる雑魚どもやギルド職員にとっては痛手かも知れないが、キングゴブリンを独り占めしたい僕にとってはありがたい話しだ。
これで遠目からゆっくり観察した後でも周りに邪魔をされずにキングゴブリンと戦えそうだ。
「このクエストへの参稼報酬は金貨2枚だ! もちろんそれとは別に討伐した数のモンスター分も報酬を出す! 俺たちで生まれ育った街や住人、家族を守るぞ!!」
そうやってギルドマスターが言うと
「そうだ俺たちでこの街を守るんだ!」
「やってやるぞ!」
「ゴブリンなんか俺たちでやってやるぜ!」
その言葉から発せられる熱によって冒険者たちもやる気を見せていた。
そうしてギルドマスターに乗せられた冒険者たちはギルドを飛び出して行った。
「とりあえず僕たちも行こう」
「はい」
「うん」
冒険者ギルドを出たところで今回のスタンピードでどう立ち回るかの作戦会議を始める。
「まずはインビジブルで透明になって現場まで向かう」
「とうめい……インビジブル?」
ダリアには前に使ったことがあるから知ってる認識で話しちゃったけどリンには使ったことが無かった。
ちゃんとリンにも説明しないとな。
「インビジブルはかけた人間を透明に出来る魔法なんだ」
「とうめいになる……楽しみ」
尻尾を嬉しそうに揺らしながら喜んでいる。前回は闇ギルドを潰すために使ったから考えたこと無かったけど、今思えば透明になるってワクワクする様な事だよな。
ぱっと思いつくのが女子風呂を覗くとかそう言う方面のものばかりだけど。
「透明になったら遠目から様子を見て、行けそうなタイミングで突っ込んでゴブリンキングを倒し行こう」
とにかく今はレベル上げをしたいし大将首を狙うのが一番いいだろう。
「分かりました」
「うん……リンがんばる!」
・・・
「ゴブリンどもが来るぞ!!」
戦場に向かうとさっそく冒険者たちが街を攻めてくるゴブリンたちを相手に戦っていた。
パッと見て何体いるのか分からないぐらいにたくさんのゴブリンが進軍している。
「魔法を打て!!」
「ファイヤーボール!」
「ウインドカッター!」
「アクアキャノン!」
指揮官らしい人の合図で冒険者たちが各々で魔法を打ち始める。
様々な魔法がゴブリンたちに向かっていく様子は映画のアクションシーンみたいな迫力があって見ているのが楽しい。
「こういうのって迫力があって良いね」
「確かにスタンピードは頻繁に起こるようなことでは無いですよね」
ダリアはあまり楽しんでいる様子はない。
異世界に来たばかりの僕はこういう光景を見るのは初めてだけど、この世界の住人にとってはモンスターは日常の一部だろうし、そこまで思うこともないのかも知れない。
まぁ、そもそもスタンピードが起こっているこの現状を楽しむというのも不謹慎な気がするし、彼女が普通なんだろうけど。
でも、いざという時に逃げる事が出来る準備は出来ている。
そうなると、心に余裕があるから地球では見ることが出来なかった光景を見るとつい興奮してしまう。
そんなこんなで冒険者たちはゴブリンをどんどん倒していく。
ただゴブリンは倒しても倒しても湧いてくるし、このまま持久戦をやったらどっちが勝つか分からない。
とはいえ、もう少ししたらこの街の騎士たちも出てくるという話もある。
そう考えると人間側だってまだまだ戦う力は残っている。
「そろそろ僕たちも動くか」
「はい!」
「リンも……いっぱい倒す!」
それじゃあ冒険者たちが街を防衛している間にサクッとボスを狩りますか!




