ありえない話
どうも、星野紗奈です。更新が遅れてしまい、すみませんでしたm(__)m
今回は『ありえない話』です。たまには違う書き方に挑戦してみたいと思い、いつもよりくだけた文にしてみました。
どんな書き方がいいかなど、コメントを頂けるとうれしいです!
それでは、どうぞ↓
そうだ、そんな話あり得ないんだ。俺の弟がヒーローだなんて。
今日も俺は、のんびりと休日を過ごしている。ポテトチップスを片手に、笑い声が流れてくるテレビをぼうっと眺めているだけ。客観的に見れば、とてつもなくつまらない絵面だろうが、俺にとっては結構気に入っている時間のもてあまし方だ。
俺の弟がヒーローかもしれない、と言う根拠は週刊誌だった。そう、根も葉もない噂を飽きずに流し続け、すごくまれにとんでもない事実を織り込んでくる、あれだ。たまたま手に取った週刊誌に、最近話題の最強と称されるヒーロー「メットマン」の素顔がちらりと見えた写真が掲載されていた。それがなんとなく、弟に似ていたのだ。
ポテトチップスを食べるのをいったん止める。俺の脳内新聞の一面に大きく載るであろう話題を、ポテトチップスの砕ける音で台無しにされたら困るからだ。
「なあ、弟よ」
「なんだい、兄さん」
「お前はあの有名なメットマンなのか?」
俺の弟は、呆れた顔で、
「そんなわけないだろう。僕はごく普通の一般人だよ」
と返した。
まあ、それが普通の反応なのだ。そんなこと、あるはずがないのだ。俺の弟がヒーローをやっているなんて。
「なあ、兄さん」
「なんだい、弟よ」
「ちょっとトイレ行ってくる」
それを確認することが当たり前だというかのように、弟は俺をじっと見つめている。これは、返事を待っているのだろうか。
「そういうのは何も言わずに行くもんだろう」
俺がそう言えば、弟はすたこらと居間から出て行った。
弟が居間から去って5分ほどたっただろうか。ずっと流れっぱなしのバラエティ番組にもそろそろ飽きてきて、まあまあ知名度が高いであろうと思われる地元のニュース番組にチャンネルを切り替えた。
すると、そこにはメットマンが怪人と戦っている様子が映されていた。風のうわさで耳にしたことはあったが、実際に戦う様子を見たことはないから、ちょうどいい機会だ。少し見てみよう。
『今、○○公園に怪人アグラーが現れ、メットマンが私たちのために戦っています!』
少し興奮気味の、若い女性アナウンサーがそう言う。おいおい、いつ誰がお前らのためにメットマンが戦っていると言った?ああ、あれか、自意識過剰ってやつか。
『周りの子供たちも一生懸命メットマンを応援しています』
最強と言われるくらいだから、まあ、そんな簡単にくたばったりはしないだろう。そうでなけりゃ、周りでのうのうと応援なんてしていられるものか。というか、近くで実況をしている暇があるのなら、周りの観客を万が一のために避難させておくべきじゃないのか、アナウンサーさんよ。
それにしても、これはメットマンの圧勝じゃないか?毎度毎度、怪人もよく倒されに来るもんだ。
そんなことを考えていると、メットマンが一発食らったようだ。明らかにさっきと動きが変わったから、わざとだ。頬にかすり傷がついているのがテレビ越しでもわかった。たかがかすり傷、されどかすり傷。
『メットマンがんばれー!!』
『負けるなー!!』
全く、ヒーローってのも楽じゃないな。一発くらい敵の攻撃を受けてやらないと、こうやって周りが盛り上がらないのをちゃんとわかっているから、こんなことをしたのだろう。一時の場の雰囲気のために体を張るなんて、俺にはそんなたいそうなことできやしない。
と、またあれこれ考えているうちに、メットマンが勝利したようだ。苦戦しているように見せかけているが、大人から見たら圧勝なのがすぐにわかるだろう。なんせ、ここまで5分しかかかっていないのだから。
『メットマンはこの街を、守り抜いて見せる!』
というどや顔ともとれるきめ顔ときめ台詞をいただいたところで、メットマン退場。そこからは大して面白いニュースが流れる気配もなく、またバラエティー番組にチャンネルを切り替えた。もちろん、ただぼうっと眺めているだけなのだが。
しばらくして、弟は居間に戻ってきた。今度は何も言わず、すとんとソファに腰を下ろした。ここで、疑問が一つ。
「なあ、弟よ」
「なんだい、兄さん」
「ずいぶんと長いお手洗いだったな」
「いろいろとデリケートなお年頃なんだよ」
「そうか」
それ以上踏み込むのはなんだか申し訳ない気がした。そうだよな、弟にだってそんなデリケートな時期があるよな。一人脳内でうなずいていると、また一つ疑問が浮かんできた。
「なあ、弟よ」
「なんだい、兄さん」
「その頬のかすり傷、どうした?」
「さっき、みゃーこにひっかかれたんだよ」
ごく自然な返答に流されそうになったが、ふと覚えた違和感を口に出してみる。
「なあ、弟よ」
「なんだい、兄さん」
「うちの家に動物はいたか?」
「いない」
こんな風に少し抜けているところがあるが、かわいいかわいい自慢の弟だ。俺の弟がヒーローだなんて、やっぱりあり得ないんだ。
そう結論付けて、またポテトチップスを片手にテレビから流れてくる笑い声をぼんやりと聞いていた。
最後までお読みいただきありがとうございました!




