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I'm not a hero.  作者: 星野紗奈
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やばい話

どうも、しゃーなこと星野紗奈です。

今回は「やばい話」です。文字通り、やばい話です(笑)

やばさに驚いていただけたら幸いです!


それでは、どうぞ↓

 昔はヒーローなんていなかったんだよって、お母さんは言ってた。ちょうど私が生まれた年に、「ヒーロー」という存在が現れ始めたらしい。それは今も職業とは認められていないが、ヒーローは年々増えている、と今朝もニュースでやっていた。世間が指す「ヒーロー」は、いわゆるボランティアのようなものだ。だから、目からビームを出したり、身体能力が上がったりすることはない。私から見たら「ヒーロー」なんて、変な服を着たおじさんでしかないけれど。

 私のお母さんの口癖は、「人にやさしくしなさい」だ。小さいころから、それが我が家のルールだった。

「どんな理由があっても、人を傷つけるのは良くないことよ。だから、お互いに納得できる方法を探しなさい」

 お母さんのその教えは、私の人生においてとても大切なことだ。その教えがあったから、今もこうやって良い人間関係を築けているのだと思う。

 そんなことを思い出していたら、テレビが7時42分を告げた。どうしてこんなに微妙な時間なのかはいつも疑問に思っているが、この時間に家を出るとちょうどいい時間に学校に着くのだ。なんてすばらしい偶然だ。だからそのままでもいいかな、いやそのままであってほしいなと思う。


 今日も、普段とさして変わらない一日だなぁ、と思いながら道路の白い線の上を歩く。ぼーっとしている間に、学校が終わってしまった。無駄な時間の使い方をしてしまったな、と少し後悔している。

 しばらく歩いていたら、子供たちの賑やかな声が聞こえてきた。放課後は特に予定もなかったから、公園に寄り道してみることにした。いざ公園に入ってみると、ちょっと気の弱そうな男の子がちょっと気が強そうな男の子数人に囲まれていた。どうやら、まだ「いじめ」と言うほどひどくはないらしい。見たところ彼らは中学生くらいだし、そういう経験も少しはあったほうがいいだろうと思い、少し様子をうかがうことにした。もちろん、ひどくなったら間に入って無理にでも止めるが。

 しばらく見ていたが、軽く叩いたり、言葉で詰め寄るばかりだった。こんなこと言ったら悪いが、見ていてそう面白いものでもなかった。しかし、囲まれているという条件が男の子を怖がらせているのかもしれない。反抗する様子がなさそうなので、そろそろ止めてあげよう、と思い座っていたベンチから腰を上げた。

 しかし、私が彼らの間に止めに入ることはなかった。なぜなら、そこに「ヒーロー」と呼ばれるものが現れたからだ。

「はははっ、君たちはいったい何をしているんだい?」

「ちっ、だれだよおじさん」

「私は通りすがりのヒーローさ」

 彼のこの表情こそ「どや顔」と呼ぶべきであろう。予想以上にうさんくさい、変なおじさん。第一印象はそれだった。私がヒーローにあったのはこれが初めてだが、事情を知らないと不審者にしか見えない。だって、コスプレみたいな服を着てるし、「私はヒーローだ、ははっ」とか言ってるし。

「君たちはこの子をいじめていたのかい?」

「違う、そういうわけじゃ……」

「君、大丈夫かい?」

 ヒーローはそう言って囲まれていた男の子に手を差し伸べた。男の子の顔が少し明るくなった。味方が増えた喜び、だろうか。しかし、その顔は数秒後に青ざめることになる。

「全く、そんな悪い奴は私がこらしめてあげよう!」

 ははっ、と特徴的な笑い方をした。その直後、なんとヒーローはちょっと気の強そうな男の子の一人を殴ったのだ。それも、あとが残るくらい思いっきり。

「何すんだよ」

「君たちもこの子にそういうことをしていたのだろう?当然の報いじゃないか」

「俺たちはそこまでや」

 そこまでしゃべった男の子も、さっきの子と同じように殴られた。言葉の続きは聞けなかった。

 こんなの、おかしい。笑顔で人を殴るなんて、どうかしてる。この人は「ヒーロー」なんかじゃない。もしかしたら人間でもないかもしれない。そう思えるほど、狂っていた。囲まれていた男の子も、同じようなことを考えているようだ。なんだか顔色が悪い。きっと、自分のせいで、とか考えているんだろうな。いやいや、今はそんなことを考えている暇はない。このままだと、男の子たちがボロボロになってしまう。どうにかして止めたが、あいにく私にはすごい体術も強い勇気もない。

「全く、最近はなんでこういうやつばっか……」

 どうしたらよいのか困っていたとき、誰かの声が聞こえた。すると突然、ヒーローと名乗っていたおじさんが倒れた。そしてその背後からオッドアイの女の子が現れた。

「お前がやっていることも、いじめと変わりないのだぞ!力で子供をねじ伏せるなんて、間違っているとは思わないのか!?」

 そんなことを言ったら、あなたも暴力的に解決しようとしているではないか。おじさんが倒れているのが動かぬ証拠。それを口にすると、「ひざかっくんなるものをしただけで倒れるほどこいつが弱いのが悪い」と言ってきた。確かに、ひざかっくんをされただけでバランスを崩して倒れるとは、どれだけ貧弱なのか。さっき男の子を殴っていたおじさんと同一人物とは思えないな。そもそもヒーローがそんなに弱くて大丈夫なのか。

「な、お前誰だよ!?」

「もしかして、ヒーロー?」

 突然現れた正体不明の女の子。彼女はふっ、と笑って彼に言った。

「私はライト星の使いであり、ヒーローではない。この星にヒーローを名乗る魔物がうじゃうじゃいると聞いてな、地球人を守るためにここへやってきたのだ」

 きっと彼女のこの顔も「どや顔」と呼ぶべきなのだろう。どう考えても、不審者だ。しかし、実を言うと彼女、私の妹なのだ。ちなみに、オッドアイなのは片目だけカラーコンタクトをしているからというなんとも単純なトリック。いや、これではトリックとも呼べないな。

「ねえ、何してんの」

「ひやあっ!?あ、姉じゃ、か。びっくりした……。ここで何をしておるっ!?」

 素が出ているぞ、妹よ。今更言うまでもないかもしれないが、念のため言っておこう。私の妹はやばいやつだ。

「姉じゃって呼ぶのやめてね。ただの寄り道だけど」

「そ、そうか……ところでお前たち!」

 ビシッという効果音が付きそうなくらい勢いよく指をさした。人を指さすのは、良くないと思う。殴られてちょっと元気がない男の子たちの背筋が糸でつられたようにピーンと伸びる。

「複数で一人を囲むなど、卑怯だぞ?戦うなら、己の力を信じて、正々堂々一対一で戦え」

「まあ、そうだな……」

「悪かったよ」

「いや、そんな……」

「それとお前も!」

 そう言って今度は囲まれていた方の男の子を、これまた効果音が付きそうなくらい勢いよく指さした。

「お前も、黙っていないで反抗のひとつやふたつしたらどうなのだ」

「え、えと……」

 男の子は私の妹に詰め寄られてうつむいてしまった。これこそいじめに見えるのではないか、と少し心配になったが、言わないでおこう。

「黙っていては道は開けぬぞ。勇気を出せ!」

「う、うん」

「大きくはっきり返事をせいっ!」

「は、はい!」

 気迫に圧倒されたのか、彼は敬語で返事をした。いつの間にか、男の子もしゃきっと背を伸ばしていた。妹の言っていることは所々おかしいが、正しいと思う。妹も母の教えを律儀に守っているのだな、と思ったら、なんだかうれしくなった。

「ほれ、若者はサッカーというものでもやって、仲直りして来い!」

「若者って、あんた俺らと大して変わんないだろ?」

「ち、違う」

「じゃあ何歳なの?」

「485歳だ」

 みんながみんな、黙り込む。妹とはいえ、もうフォローできない。フォローのしようがない。

「…やばいやつか」

 ある男の子が言った。それに対して妹は「嘘じゃないからな!?」と反抗して、彼らと言い争った。でもそれは見苦しい喧嘩ではなくて、立派なかわいらしいふざけあいだった。でも、姉より年上ってどういうことだ。さっき私のことを「姉じゃ」と呼んでいたではないか。

「むむっ、右手がうずいている……。どうやら、また魔物が現れたようだ」

「あれは魔物じゃなくて、狂ったおじさんだったけど」

「うるさい!あ、あれは、人間に化けているだけなのだ!」

「へいへい、わかりましたよー」

「じゃあ私は行くぞ。元気でな」

「おう。ありがとな」

「また会えるのを楽しみにしているぞ」

 そう言い残して妹はすばやく走り去っていった。

「あの人、妹なの?」

 ちょっと気が弱そうな男の子が私に話しかけてきた。

「えっ、ま、まあ……」

「あの人にありがとうって伝えておいてほしいんだ」

 男の子は照れくさそうに言った。自分にあんなことを言ってくれた人は初めてで、叱られているはずなのに、少しうれしかったそうだ。前半の文を聞かないと、きっと彼はどMだと勘違いされてしまうだろう。

「わかった。ちゃんと伝えておくよ」

「うん、お願い」

「おーい、サッカーしようぜ!」

「うん、今行く!じゃあね、お姉さん」

「うん、がんばってね」

 そう声をかけると、彼は振り返って最高の笑顔を見せてくれた。

「私も帰ろうっと」

 もう日が傾き始めている。ずいぶんと長い時間たっていたようだ。それにしても今日は濃い一日だったな、と振り返ってみて思う。

 それにしても、妹のやばさは全く変わっていなかったな。というか、悪化していたような気もする。

でも、私だったら、あんな風に止めに入ることはできなかった。今思えば、私ができないことは、妹が支えてくれていた。ああ、感謝しなければ。家に帰ったら「ありがとう」とちゃんと言ってみよう。男の子の言葉を借りるのではなく、自分の言葉で伝えよう。姉妹という関係は、互いに足りない部分を助け合えることがすばらしいな、と感じた。

 私の妹は、やばいやつだ。でも、私はそんな妹のことを誇りに思う。

最後までお読みいただき、ありがとうございました( *´艸`)

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