表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/55

第9話 転生者、儲かってしまう

 水の魔道具は売れに売れた。この魔道具は一家に一台と言う訳ではなかったのだ。邸宅を持つ貴族では炊事場だけでなく、部屋ごとに設置したいという要望もあったり、風呂などのその他の水場で使いたいとの需要もあった。だから高くても売れたのである。

 日中作ったものはすぐに売れ、翌日に売る物がなくなるため、その度に作業員を増員し、夜中の作業を増やしながら販売するといった日々が続き、人員を増やしても、工房を拡張しても品不足は改善されなかった。

 セバスからの相談により、工房の改善と拡張の相談を受けて、効率化を前提に王都の外れに大きな工房を作り、転写作業場とテスト作業場を分けて、各処理を専業化して作業効率を上げた。

 それでも、作れば作るほど、王都から地方都市、村、それから他国へと販売先が広がって行った。商会は魔道具販売だけでなく、併せて、水属性の魔石の販売も行い、大いに潤った。

 しかし、魔道具販売台数が増えると水属性の魔石不足という弊害が発生し、魔石自体が高価になって、一時期、魔道具販売も落ち込んだ。

 これを予想していた僕と博士は、この対策のために、博士が発見したエレメントコアを魔法陣の中心核部に追加した。そして、効率が落ちる注意書きをつけて、あらゆる魔石が使うことができる仕様で魔法陣の大型バージョンアップを行った。

 これにより、さらに水の魔道具の販売は伸び続けた。

 この販売利益は相当のものとなった。


 その評判を聞いて、なんとか手に入れたいと考えた貴族達は、製造にブルームバーグ公爵家が係っているのが分かると、父、母、長男、次男にまで近づき、優先購入の依頼をしてくるようになった。

 それを父と母は自分達の派閥の為の駆け引きの道具として使い、長兄は自分の出世の為の上司への貢ぎ物とし、次兄は成績を上げるための教師への贈り物とした。

 しかし、幼い僕はいつも蚊帳の外で待遇が変わることもなかった。最初の約束通り、利益は全て公爵家のものだったのだ。


 そんな中、僕は次の水の魔道具開発をアーネスト博士に提案した。販売している水の魔道具は直径50cmとやや大きく、持ち運ぶこともできるが、大人数で使うための物である。これを10cm程度に小さくして、個人用の水の魔道具を作ったらどうかという提案である。

 それから、アーネスト博士と魔法陣の微小化に取り組み、テストを繰り返しながら、納得ができるものが作れた時には、従来の水の魔道具の販売は落ち着いてきた状況だった。

 このタイミングでこの個人用の魔道具を販売した。価格も従来品の半分の5Gとしためか、落ち着いていた魔道具の販売がまた品不足を呼び、プレミアム価格で販売されることもあったらしかった。

 いずれにしても儲かった。


 この莫大な予想外の利益は人の行動を変えた。まず、アーネスト博士が学院の研究室に来なくなった。王都に屋敷を買って、そこから出てこなくなったようだ。博士が屋敷に引きこもって連絡が取れないため、どうしているか分からないとのことだった。そのため、博士の研究室は僕の部屋になっている。

 また、公爵家も皆、贅沢をするようになった。服だったり、宝石だったり、剣だったり、武具だったり、色んなものが購入された。さらに、パーティが頻繁に開かれ、定例の夕食会がなくなり、家族がバラバラになった。寂しい気もするが、僕は比較的楽に生きていけるようになった。


 僕は今日もアーネスト博士の研究室で飽きずに新しい魔道具を作ろうとしている。

 構想は簡単で、アーネスト博士が作った魔法陣の水の魔力を出す星の記述をそれぞれの属性の星とし、それぞれの属性の呪文を書くのだ。

 まず、火属性から順に、星の記述を風、土、闇、聖に変えてみた。

 その度に、中心核から僕の魔力を注入して実験を行うと、魔法は上手く発動した。火の場合は周りから火が出て、風の場合は風が吹き、土の場合は土が出る、闇の場合は効果が分からず、聖の場合は周りが綺麗に浄化された。

 この構成でもう少し検討すると、使えそうになるのは火の魔法陣と聖の魔法陣くらいに思えた。それ以外は、魔法の結果をどう使うかを明確にしないと使えそうにない。

 ただ、興味が湧いたのは、闇属性である。最初は効果が分からないと思ったが、よく見ると、魔法陣が書かれた板の横に黒い穴があったのだ。僕は怖いもの知らずでこの黒い穴に、空いている手を入れようとすると弾かれた。次に、机に置いてあった水差しを入れてみるとその穴に入る。さらに、スプーン、ナイフを入れると、入った。その穴を通ってどこかに出てきている様子もない。もう一度、穴を探るつもりで手を入れてみても、手は弾かれる。

 考えあぐねて、魔道具に目を向けると、盤面に水差し×1、スプーン×1、ナイフ×1と表示されている。そして、表示されているスプーンに触れると、それが黒い穴の中に浮かんでいた。それを取り出すと、魔法陣のスプーンの表示が消えた。同じように、水差し、ナイフも取り出す。

 これは異次元収納か?凄い発見だ。僕はさらにテストをする。スプーンを穴に入れる。魔法陣にスプーン×1と表示される。ここで、中心核から手を離し、魔力の出力を止める。魔法陣からスプーン×1の表示が消えた。それから、再度、中心核に手を伸ばし、魔力を注入する。すると、もう一度、魔法陣にスプーン×1が表示され、その表示に触ると、スプーンが出てきた。それを掴んで取り出すと、スプーン×1の表示が消える。

 さらに、もう一度、スプーンを穴に入れた状態で、魔力を停止し、今度は、魔道具自体を置くの部屋まで運ぶ。そこで、魔力を注入すると、スプーン×1の表示が出て、取り出すことができた。

 凄いぞ、これは異次元収納だ。

 ただ、まだ、黒い穴の大きさ小さい。そのため、小物しかこの穴に入れられない。この穴を大きくするにはと考えて、魔法陣の大容量魔力を選択すると、直径数メートルの大きな穴が開く。これだったら、かなり大きな物が入るかもしれない。

 さらに、異次元収納状態で持ち運ぶとその魔道具の重さがどうなるか?確認してみると、どんなものを入れても魔道具の重さしか感じなかった。よく考えると、実際の収納した物は異次元に格納された状態である。その格納された状態の物に対して、アクセスする穴しか魔道具が提供していないことから、当然のように思えた。そして、僕は時間が経つのも忘れ、様々なテストをしていった


 公爵家に戻ると、セバスから久しぶりに夕食を皆で食べるということが伝えられた。いつもは居ない長兄、次兄も今日は席についており、次兄が僕を見てニヤリと笑った。嫌な予感が頭をよぎった。

 父が言う。

 「今日は大事な相談がある。良いか?」

 皆が頷く。

 「本日、私は今回の水の魔道具の件で陛下に呼ばれた。陛下もこの水の魔道具をいたく気に入っておられ、他国の評判も良いと話されていた。そして、この魔道具作りをこの国の事業としたいと打診されたのだ」

 父は言いながら、誇らしげに僕等を見回す。

 「この事業は我が公爵家に大きな利益をもたらした。今度は、その利益だけでなく、国から栄誉を頂くことになる。そのため、私は陛下の打診を受け入れる決断をした」

 父は続ける。

 「陛下は誰がこの事業を考えたのだと聞かれた。私は”我が息子でございます”と言った。陛下はさらに、どの息子かと聞かれたのだ。その先には王女の伴侶の話もあると私はにらんでいる」

 ここで父は言い淀んだ。

 「私は魔法の使用を禁じられている7歳のアルスとは答えられなかった。禁止されている魔法を幼子が使ったと咎められることを恐れたのだ。アルス、許してくれ。ジョージとリチャードが開発したと言ってしまったのだ。

 陛下はジョージとリチャードの上司や先生からの評判も聞いていたようで、我が家の優秀な二人にこれからの水魔道具の国家事業を任せると仰せになった」

 「えっ」

 僕は驚愕する。横で次兄のにやにやがとまらない。

 父の言葉は続く。

 「ジョージ、リチャード、やってくれるな。何も心配はいらない、段取りと運営はセバスが把握している。セバスに事業の立ち上げを任せ、その間に仕事を覚えればよい。そして、国家事業を遂行する公爵家はこれから王家からの監視が入ることになる。窮屈だが、それを乗り越えれば、我が家は永久に安泰なのだ。

 しかし、アルス、お前がこの家にいては、いつ本当のことが露見するとも限らない。母であるエルザとも相談したが、この事業が軌道に乗るまで、済まないが、我が領の辺境の村であるベルンハルトに身を隠してくれ。数年後には必ず呼び戻す。我が家を助けると思って、我慢してくれ」

 「えっ」

 再度、僕は固まり、救いを求めるように母を見つめると静かに首を横に振った。何と言う展開だ。信じていた親兄弟に、こうもあっさり見放されるとは思わなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ