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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第75話 フジャイラの王、因縁を掘り起こす

 マーガレット王女が戻って来て、スコッテイ王女が王都へ戻り、本格的に新しい一年が始まった。

 僕はマーガレット王女が持つ鑑定の能力に興味を持ち、色々質問することができた。質問する傍らにはカミーラ王妃もいた。

 僕は言った。

 「鑑定するとどういう風に見えるのですか?」

 「様々よ。自分が見たいという形で見えるのよ」

 「では、例えば、僕を見たら?」

 「じゃ、鑑定してみるわね」

 マーガレット王女が僕を睨んだ。僕が何かに包まれた様な感覚がした。やがて、その感覚が無くなると、マーガレット王女が話し出した。

 「凄いわね、アルス様。八歳だけど、魔法は火、水、風、土、聖、闇の全属性持ち。体力はないけど、知性がもの凄く高い。スキルには異世界の知識?よく分からないのがある。何、異世界の知識って」

 「えっ、今更ですか?僕に鑑定は初めてですか?」

 「そうよ、興味なかったからな。カミーラ姉様をからかう対象だっただけだ。それに、鑑定は疲れるのだ」

 「そうなんですね。物とかはどうですか?」

 「できる物とできない物がある。なぜだか分からないがな」

 その言葉に僕は考え込んだ。それから、僕は異次元収納から、剣と魔道具を取り出した。

 「では、これとこれで鑑定できる物がありますか?」

 「そうね、その魔道具は分かるわ。えっ、氷を作る魔道具?凄い、品質は優良ね。そっちの剣は分からない」

 「なるほど。そう言う訳か?なんと無く王女の鑑定の力が分かった気がします。その力は、カミーラが街の住人に付与するアイディーの魔法に仕組みとしては似ています。アイディーの魔法は付与した自身の魔力に反応しますが、鑑定は異なる魔力を自身の魔力と同化させ、それで魔力解析を行っているようですね」

 僕は鑑定回路を考えた。魔力の属性を変換する回路はもう既にある。全属性の入力を考えて、反応があった属性を自身が鑑定する属性に使えば、後は、解析だけだ。それから、必要な名前、性別、生まれた年、体力、魔力量、魔力属性は変換ごとに分かるし、最後にスキルの解析ができれば鑑定した事になるのではないかと思われた。

 「マーガレット王女、ありがとうございます。なんと無くですが、それに近いモノが出来るかもしれません」

 僕は満足してそう告げると、マーガレット王女は言葉を返した。

 「アルス様の用事は終わりか?ならば、私の話も聞いて欲しい。

 聞くが、カミーラ様の綺麗な髪と爪はどうしたのだ」

 僕は嫌な感じがして、カミーラ王妃を見た。それを察してカミーラ王妃が話し始めた。

 「王都ではまだやっておらぬから、マーガレットはまだ知らないのも当然だが、これは美容室というところに行けばやって貰えるのだ」

 「美容室?」

 「そうだ、この国にある美容室だ。近々、エルザがレストランの横で王都でも開業すると言ってたなぁ。これから、世の中の淑女は必ず通う様になる」

 カミーラ王妃は、まず装飾されたキラキラ光る爪を見せて、それから、サラサラの髪をかきあげる。同時に、良い匂いが舞い上がった。

 「私も美容室に行きたいぞ。どうすれば良い?」

 「行けば良いでは無いか?」

 カミーラ王妃が当然の様に言うと、

 「やはり、カミーラ姉様はイジワルだ。私はココを離れる事が出来ない」

 「何故だ」

 カミーラ王妃が言うと、すぐマーガレット王女は答えた。

 「決められているのだ」

 「誰が決めた?陛下か?陛下は一言も言っとらんぞ」

 「えっ、良いのか?私はこの国で自由に動いて良いのか?」

 カミーラ王妃が僕を見た。僕に話せという事らしかった。

 「えー、構いませんよ。但し、お供は連れて下さいね。それと、門限がありますからそれを守って下さい」

 「本当に良いのか?アルス。嬉しいぞ」

 マーガレット王女は満面の笑みを浮かべて僕に抱き着こうとするのをカミーラ王妃が睨んで牽制した。動きを止められたマーガレット王女が言った。

 「勿論、お父様もご存じなのだろう?」

 「さあ?話してもおりません」

 「おい、アルス、無責任だろう。お父様に叱られたらどうするのだ」

 急にマーガレット王女の声に怒りが混ざった。

 「それは親子の問題ですので、僕からはなんとも言えません」

 僕が正直に言うと、マーガレット王女はカミーラ王妃に言った。

 「お姉様、私はどうすれば?」

 「そうだなぁ、マーガレットの好きな様にしたら良かろう」

 「そんなぁー」

 マーガレット王女は急に考え込んでしまった。


 短い雪の季節を越え、春が訪れた。僕は、鑑定のスキルを魔法にしようと試行錯誤を繰り返していた。

 マーガレット王女はこの国でお供を連れた自由な生活を楽しみ、二日に一回の美容院と劇場通いが定例となった。聞くと、バレなければ良いということでこの国を満喫することにしたらしい。

 春の試験が来週に迫ってきたその時に嫌な話、というより嫌な報せを持った人がベルンハルトからやって来た。


 そのベルンハルトから来た村民はべローと言った。アルスブルクの街の入口までたどりつき、大きな声で助けを請うた。

 「私はベルンハルトの住民べローと申します。決して怪しい者ではありません。ベルンハルトの村を、人を助けてください。お願いします。お話を、話を聞いて下さい」


 僕は血まみれの住民べローに会った。彼は話し出した。

 「陛下、助けてください。我が村は魔物に襲われ壊滅状態になりました」

 僕は聞いた。

 「ベルンハルトには、リチャード兄とそれに従う騎士団がいたはずですが、」

 「はい、戦われたのですが、勝てそうにないことが分かると逃げられました」

 「えっ、逃げた」

 「はい、リザードマンの一振りを見て、皆さんで逃げられました」

 「リザードマン?」

 「そうです、片目のリザードマンです。その魔物の剣の一振りで家がなぎ倒され、家に隠れていた多くの住人が死に絶えました。そのリザードマンは近隣の村を襲いながら、何かを探しているようなのです」

 「まさか、奴か?」

 ハッと何かが思い当たり、僕は考え込んだ。そして、時間を置いて、

 「そうですか、では、こちらから援軍を出しますので、時間を下さい。少し、待っていて下さい」

 と、答えると、

 「なにとぞ、早くお願いします。早くいかないと村が破壊されつくしてしまいます」

 「それは分かっています。準備をしないといけませんので、少し時間を下さい。カルロスさん、控えの間にお連れしてください」

 僕はカルロスさんにそう指示した。


 僕は帰って来たカルロスさんにお願いして、カミーラ王妃とアレオス騎士団長、ルドルフ隊長を呼んでもらった。僕が経緯を話すと、アレオス騎士団長が重たい口を開いた。

 「奴ですね。リザードマンの谷にいたリザードマンの騎士です。勝負をつけたいのでしょう。望む所です。奴に引導を渡してあげましょう」

 そう答えた騎士団長の顔には決意が滲んでいた。

 「僕も奴だと思っています。しかし、団長だけには任せられません。僕も行きます」

 僕の答えにカミーラ王妃も言った。

 「わらわも行くぞ」

 「危険です。私だけを行かせてください」

 騎士団長の言葉に、カミーラ王妃が短く遮った。

 「ならん」

 カミーラ王妃は騎士団長を睨みつけると、

 「お前は私の騎士だ。私の前で死ぬことは許さん」

 「しかし、カミーラ、危険です。僕の力でも二人は守るのは難しい。カミーラ、ここに居るべきです」

 僕が言うと、カミーラ王妃は静かに答えた。

 「何で私が傷つくことを前提に話すのだ。なぜ、私を守る者を、私が守って何が悪い。気に食わない」

 カミーラ王妃は視線に力を入れ、僕を見つめた。そして、僕に言った。

 「アルス、一人で良い恰好するな。巻き込んだのは私だ。私は最後まで見届ける必要がある」

 「でも...」

 僕が戸惑いの言葉を出すと、カミーラ王妃はさらに強く言った。

 「アルス、私がそんなに弱い女に見えるのか?私は国を捨てて生きてきた。誰にも言えない気持ちを抑えて来た強い女だ。

 それに、そんなに心配なら、私を守れ、死ぬ気で守ってくれ。

 私には其方も必要な人だが、アレオスもなくせない人なのだ。私を許せ、アルス」

 カミーラ王妃の決意は揺るがなかった。

 アレオス騎士団長は俯き、涙をこらえているようだった。

 僕は決意した。

 「では、三人で行きましょう。ルドルフ隊長、私たちがいない間の街の警備をよろしくお願いします」

 僕たちは一刻も早くベルンハルトへ向かうため、移動の魔道具を起動した。

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