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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第71話 フジャイラの王、繁栄を楽しむ

 あれから、リチャード兄からの接触もなく、平和な日々が続いていた。しかし、村は人が増え、村から町へと変貌を遂げた。旅の一座ウン族の定住もあったが、大きかったのは、リチャード兄から解雇された騎士団の移住である。

 リチャード兄からの解雇を、ブルームバーグ公爵家からの解雇と受け止めた貴族家もいて、王都でなく、いっそのこと新しい土地での功績を立て、新しい国での貴族となることを夢見たからだ。

 特に、ルドルフという騎士の家系はエーベルシュタイン子爵であり、その一族郎党が移住してきた。それだけでも数百名という単位である。そのため、新たに森を切り開き、そこを彼らの地とした。


 引っ越して来たエーベルシュタイン子爵と息子ルドルフが挨拶に来た。僕とカミーラ王妃、マーガレット王女で出迎えた。

 「王よ、この度のご配慮痛み入ります。お初にお目にかかりますが、エーベルシュタイン子爵家を司るレオポルドと申します。以後、お見知りおきください。

 王の父上となりますチャールズ様とは親しくさせておりましたが、息子ルドルフの縁でこの地で再起することを考えました」

 「兄リチャードの我儘にお家を巻き込んでしまい、申し訳ありません。この地はまだ未開で何もありませんが、王都にも負けない街を作って行きますので、一助願います」

 僕がそう答えると、子爵は話し始めた。

 「未開?不思議な事を言われます。家では水を汲みに行く必要もなく、寒い日なのに薪も燃やさなくても温かい。それに、温かい風呂にもいつでも入れる。食事は見たこともない美味しい料理が出てくる。極めつけはトイレで、全く匂わない。それに、お尻が気持ちが良い。こんな生活があるとは思いもしませんでした」

 子爵はそこで、何かを思い出すようにふーっと息を吐いた。

 「最初は夢でないか、間違いではないかと思いました。次に、なんで、ブルームバーグ公爵家はこの息子を跡取りにしなかったのかと考え、そして、思いつきました。

 王になるべく者が公爵家にいれば、その国が割れる。そうであれば、外に出すしかなく、公爵家は長男がいれば安泰であると公爵は判断された。そう考えれば納得がいくのです。

 ルドルフの失態で移り住むことを決断し、追われるように王都を出ました。王都では嘲笑を受けているかもしれません。しかし、それを試練と考え、この地は、我らが復活の地となるやもしれないと思っているところです」

 その様子を見ていたマーガレット王女が言った。

 「そう、”アルスが王都にいたら、国が割れる”そう言う見方もあったのね。お父様はそれを考えたのかしら」

 その声で、王女を見つめ直す子爵が声を出す。

 「おう、マーガレット様、ここにおられたのですか?なるほど、マギビスタ王はそこまで準備されているのですか、感服いたしました。ますます、この国の将来にかけて見たいと思います」

 「いや、レオポルド子爵。実はこのフジャイラの国には爵位という制度がありません。それで、考えていたのですが、子爵を区長というその住民の責任者としますので、これから始める議会の委員になって下さい。

 また、フェルプス商会と作っている銀行というお金を集める事業に出資しませんか?この国では、マギビスタのお金が使えません。それを交換するために銀行という両替え機能を業務とする商会を作ります。また、そこでは、その集めた資金を別の事業、例えば、新しい魔道具工房の事業のために使います。そして、出資者はその事業の利益を出資比率に応じて受け取ることができます。いかがですか?」

 「おう、それは願ってもいないことです。実は、連れてきました家人の報酬をどうしたら良いか考えあぐねていたところでした」

 子爵はそう反応した。

 「そうですね、ちょっとお待ちください」

 僕は小切手帳を取り出し、子爵に渡した。

 「これは特殊な魔法がかかっている手帳です。王国金貨を銀行にあらかじめ預けておいてもらえれば、ここに書かれた王国金貨を1Gを1000PTの比率で報酬としてお支払いすることができます」

 子爵はそれを見ながらつぶやいた。

 「なるほど、この小切手の右下に我が家の印があれば、当家で振り出されたと分かる訳ですか?分かりました。凄いですね。陛下がブルームバーグ家では手に余るのもよく分かりました」

 妙にひっかかる事を言いながら安心した子爵の表情を見て、共にいたルドルフさんに声をかけた。

 「ルドルフさん、この度の重大な決断ありがとうございます。この国の防衛のために、騎士団長アレオスさんとともに新しい防衛隊を作ってもらいたいと思っています。よろしいでしょうか?」

 「えっ、私にそんな大役を!」

 僕の言葉が思いがけなかったのだろう。ルドルフさんが思わず、涙ぐんだ。

 「はい、ルドルフさんが適役だと思います。明日からでも、人員を集めてください。また、この町で募集しても問題ありません。よろしくお願いします」

 「はい、分かりました。陛下の御名に恥ずかしくないような部隊を作ります」

 ルドルフさんの硬直した言い方に、僕はそれを解く様に、

 「お願いします。でも焦らないでください。僕が納得してもダメです。ルドルフさんが納得いく部隊をお願いします」

 「はい、分かりました」

 そして、僕達は意気揚々とした彼らの後ろ姿を見送ることになった。それを見ていたカミーラ王妃が僕に言った。

 「陛下よ、其方は良い事をしたな」

 「そうでしょうか?」

 「そうだ。公爵家と主従関係がなくなった貴族は棄民だ。それを其方は救い、希望を与えた。良い事をした」

 「でも、助けられるのは僕達かもしれません。裏切り、捨てられる為政者もいれば、身を捨てて守られる者もいます。僕達は慕われる者にならなければなりません」

 僕が言うと、マーガレット王女が言った。

 「アルス、私もお前を慕っているぞ。忘れるな」

 そう言って、僕の片方の腕を抱きしめた。

 「マーガレット、何をする。陛下は私の物だ。その腕を離せ」

 と、言いながら、王妃は僕の別の腕を取った。

 「カミーラ様、先ほどのレオポルドも言ったように、アルスは父上から認められた私の婚約者なのですよ」

 「馬鹿な事を言うではない。陛下と私は運命の糸でつながっており、離れられない関係なのだ」

 僕の腕の両側からの会話の応酬があった。僕の両腕にかかる重みと温かさを感じながら、以前もあった光景を思い出し、確実に何かが変わっていっているのを実感していた。


 それから、エーベルシュタイン家の評判を聞き、王都から多くの騎士の家がこの町にやってきて、数百という人口はいつの間にか、数千を数えることになった。それに伴い、閑散としていた村も人が賑やかに歩くようになった。僕は区という区切りを作り、区長を任命していった。


 頃合いだと判断し、僕の家の近くに作った会議場に区長たち主要メンバーを集め、初めての人民会議を開くことにした。

 議場に集められた人達は真新しい机に自分の名札を見つけ、大きく開けられた窓から入る光に照らされ、初々しく見えた。ざわめきが収まらない会議場の前席に対峙するように僕達は座った。国王、王妃、その横に顧問であるマーガレット王女。そしてトーリさん、カルロスさん、騎士団長アレオスさんとルドルフ隊長である。


 「皆さん、静粛に!これから初めての議会を開きます」

 カルロスさんの開会宣言に議場が静まり返った。

 「最初にフジャイラの王に議場挨拶をお願いします」

 その声に促され、僕はゆっくりと議場の答弁席に向かった。

 答弁席で、見つめる議員を見回しながら、僕は言葉を発した。

 「皆様、お忙しい中、お集まりありがとうございます。

 この国はまだ、僕のように若く小さな国で、限りなく広がっていく無限の可能性を秘めております。

 この国を拡大することも対外的には大事なことですが、今は、次の飛躍のために国内の力を貯める時だと考えています。

 そして、それを実現するために、僕は、初めて国内での競争を促します」

 僕は力強く宣言した。

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