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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第58話 転生者、裁定する

 僕は王女と共に、僕たちの家の広間にトーリさんから言われたフジャイラの民とガレオンからの住人の間での礼儀の問題での口論に関して、双方の話を聞くことにした。

 きっかけは大したことではない。食堂でガレオンからの住人が並ぶ列を守らなかったという。それを窘めたのがフジャイラの民であったという事だ。

 結論から言うと並ぶという規律を守れなかったガレオンの民が悪い。しかし、ガレオンの民は特殊技能者達で、一人で仕事をし、問題を解決してきた人達であり、また、それができなくなった棄民状態でこの村にきた。

 諭す言い方が難しいとフジャイラの民である青年とガレオンからの老人を見て思った。

 カミーラ王女は食堂を分けるべきだと言った。カルロスさんは、自分がその老人に注意すると言った。だが、どちらも違う気がした。

 僕は老人に話しかけた。彼は鍛冶の能力が秀でた男である。その男に僕は話しかけた。

 「貴方が作る鋤や鍬は見事なもので、この村で農業する人に本当に役立っています。ありがとうございます」

 「ふん、それがどうした。当たり前のことをしているだけだ」

 「そうです。貴方にとっては当たり前のことでも、それが感謝につながることもあるのです」

 「ふん、それが王の言い分か?儂にも食に関して感謝しろというのか?列に並ぶというくだらない時間の使い方を儂に強いるのだな。つまらん」

 「はい、列に並ぶというのは規則ですから守って頂こうと思いますが、その前に、貴方に口論になったことで罰を与えようと思います」

 「ほう、良いぞ。村から追放するのか?鞭打ちか?絶食か?なんだ?」

 老人は敵意をむき出しにして、鋭い目を僕に向けた。

 「もっとひどい罰かもしれません。学校で鍛冶を教えてやってください」

 老人は想定外だったのか、呆気にとられた顔をした。同時に、

 「えー」

 と、いう声がトーリさん、カルロスさんから上がった。その後、何か、言おうとする老人を押しとどめて、僕は続けた。

 「罰として、週に2回、鍛冶を子供達に教えて下さい。時間はカミーラから指定します。いかがですか?」

 「拒否はできるのか?」

 「できますが、さらに重い罰になります。毎日、学校で鍛冶を教えることになります」

 「それでは儂の仕事ができないではないか?」

 「ですので、重たい罰と言ったはずです」

 「ふん、馬鹿な王だ。分かった。罰を受けよう。でも、儂は変わらんぞ、何も変えん」

 「はい、でも、この村の教育の力になってもらえます。それで十分です」

 僕は言った。そして、老人を咎めたフジャイラの男に言った。

 「規則を守らない人に勇気を出して注意した貴方には罰でなく褒美を与えます。これから貴方は食堂の警備として、規則を守らない人に注意するとともに食堂で困った人がいたら助けることを仕事にしてください。王女、彼に5PTの褒美を与えてください。

 これで、今回の裁定を終わります」

 周りの人達が呆気に取られてしまっていた。王女だけが笑い出した。

 「陛下、良い裁きじゃ、ガレオンから来た者、名を何と申す。そうか、そうガーリか、そなたは明日、明後日の午後に2時間上げよう。

 ガーリ、学校に来るのじゃ、鍛冶の授業を教えろ。

 何もなければ教えられないというのなら、必要な物を言え。

 ここに居る王が作る。お主を任命した責任は王が全て負うのだ。好きに授業をしろ。はははっ」

 王女の言葉で今回の小さな諍いの裁きは終わりを告げた。


 ファビオさんがまたやって来た。

 カミーラ王女はエルザさんが来ると思い、僕の傍にいた。しかし、今回連れて来た人はエルザさんでなかった。ファビオさんが連れてきた人は酒を造る職人だった。

 「アルス様、こちらが王都でも有名な酒蔵にいたバローさんです。この村でワイン、エールを製造してもらえるようにスカウトしてきました」

 「バローさん、遠路はるばる、こんな辺鄙な村へ来ていただきありがとうございます。村の様子はどうでしょうか?」

 「陛下、お目にかかり、光栄でございます。この素晴らしい村を作られた王がお若くてびっくりしています」

 「はぁ、正直ですね。

 村民の登録はされましたか?お住まいとかはどうでしょうか?

 僕たちはぶどう畑は作りましたが、まだ、見様見真似の状態です。専門家として何かありましたら、こちらにいるカルロスさんに言ってください。すぐ対応します」

 ファビオさんが答えた。

 「アルス様、立て続けに質問されても答える時間がありませんよ。村に関しての説明を受け、村民の登録は昨日終わり、家族とともに昨日から村で過ごされています。どうですか?バローさん、村の印象は?」

 「夢の様な村ですね。食事は無料でできますし、子供は学校というところで学ぶことができる。共同浴場も使いましたが、気持ちが良いものですね。そこで飲んだ炭酸入りのぶどうジュースには感激しました。私もこの村で何か、新しいもの作りたいと思いました」

 バローさんの目にも希望が宿っているように見えた。バローさんが言った。

 「早速、ブドウ畑を見に行きたいので、案内してもらえませんか?」

 「分かりました。じゃ、僕が」

 と、言おうとしたら、カミーラ王女から声がかかった。

 「陛下、そういう時こそ、カルロスを使え、カルロスも覚える事もあろう」

 カルロスさんがすかさず言った。

 「陛下、ここは私が」

 「そうですか?でも」

 と僕が判断しかねていると、カミーラ王女が言った。

 「任す所は任して、何かあればその時対処すれば良いではないか?それともブドウ畑の自慢がしたいのか?」

 カミーラ王女の言葉が僕の本心をついた。

 「いえ、そんなことは?」

 僕の表情が変わったのを面白そうにカミーラ王女は見て言った。

 「なら、カルロスで良いではないか?」

 「そうですね、カルロスさんに対応いただけるのであれば、昨日のガラス窓の魔道具の販売に関してお打合せをお願いします」

 ファビオさんが言い出すと、カミーラ王女が続けた。

 「そうだろう、ファビオもそう言っている。ファビオの話はアルスしか対応できないが、バローの用事はカルロスで十分じゃ。アルス?」

 カミーラ王女はエルザさんの件の仕返しでもするようだった。

 「分かりました」

 と、僕は答え、僕はファビオさんとガラスの魔道具の製造販売の打ち合わせ、カルロスさんはバローさんを連れて、ブドウ畑の説明ということになった。

 僕の顔を見ながら、カミーラ王女だけがにやにや笑っていた。


 ファビオさんとガラス窓の魔道具を販売するにあたって、デモンストレーションしようということになり、それをエルザさんの新しい食堂でやろうという話になった。その時からカミーラ王女の綺麗な顔のこめかみがぴくぴくと動き始めたのを見て、話を変えようとしたが、カミーラ王女が言った。

 「面白そうで良い話じゃないか?アルス、私たちも本当にエルザの店が、あの女の言う通り、大評判なのか、見に行こう。王都へはファビオの護衛で冒険者として行けば良いではないか?」

 「王女みずからですか?もし、よろしければ、我が商会の商売内容もご紹介できればと思いますが、いかがでしょうか?」

 「それも良いな。エルザに商売は取り繕うなと言っておけ。私がこの目で見届けるとな」

 カミーラ王女が言い出した。王女は何故かエルザさんに拘っていた。僕は、ファビオさんにお願いした。

 「その時でもいいのですが、演劇か楽隊の人に合わせて頂きたいのです。そして、魔道具の利益の賄える範囲で、会場を貸し切り、演目を見させて頂きたいのです」

 「ほう、それはどういう目的でしょうか?」

 僕は魔道具を取り出した。そして、それに魔石を乗せた。すると、その魔道具からカミーラ王女の二胡の音色と美しい歌声が聞こえて来た。

 「アルス、私は歌って居らんぞ」

 カミーラ王女が僕に言ってきた。

 「以前、皆に聞かせた王女の歌声を何度も聞きたくて、録音と再生の魔道具に残したのです。いつ聞いてもカミーラの素晴らしい伴奏と歌声です。

 この魔道具で、王都で聞く、演劇と音楽をこの村の人でも楽しめるように、録音してこようかと思っているのです」

 「なるほどな、ダンスの音楽とかも記録できれば、この村でもいつでも楽しめるな」

 「そうです。村の娯楽が少ないので、少しでも役に立てばと考えました」

 「おう、良いな。良い考えじゃ、それも、早速やろう。ファビオ、手配を頼んだぞ」

 いつの間にか、ファビオさんの反応が無くなっていた。カミーラ王女が気づいた。

 「ファビオ、ファビオ、これも売らせてやるぞ」

 カミーラ王女が言うと、その言葉に我に返ったのか?ファビオさんが反応した。

 「えっ、あっ、そうですか?ありがとうございます。一生懸命、販売させてもらいます」


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